・「不妊手術、妊娠中絶の強制、さらに新生児殺害も」”新疆ウイグル民間法廷”で元看護師証言ー中国共産党は直ちに否定

Shemsinur Abdighafur
(”ロンドンの民間法廷”で証言するシェムシヌール・アブディガフルさん=右写真)

 中国の新疆ウイグル自治区では、ウイグル人イスラム教徒に対する政府の”家族計画”で、人道的な倫理基準は完全に無視され、女性への不妊手術、堕胎の強制はもちろん、致死的な薬液注射による新生児の殺害まで行われている…

 中国政府・共産党が新疆ウイグル自治区などでウイグル人イスラム教徒に対して行っているとされる人道的犯罪の実態を解明する法律専門家などによる「ウイグル法廷」がこのほどロンドンで開かれたが、同自治区の複数の病院の手術室で看護師として勤務していた女性が、インターネットを通じて証言した。

 女性は、シェムシヌール・アブディガフルさんで、新疆ウイグル自治区で伝統医学を修めた後、いくつかの病院で手術室の看護師として働いていた時、強制中絶と不妊手術、そして致死量の注射による新生児の殺害を目撃した、と語った。

 2010年にトルコに脱出したシェムシヌールさんは、「自分が見たこと、看護師として強制されたことが、私を何年にもわたって悩ませてきました。中国政府・共産党の私の家族に対する脅迫、私自身に加えられるに違いない精神的な迫害の危険を冒してでも、体験した事実を今、話すしかないのだと感じている」と証言を決断した動機を語った。

*勤務した病院で毎日20件の強制中絶と不妊手術

 証言によると、最初に勤務した郊外の小規模な病院では、1日に3〜5回の妊娠強制中絶と不妊手術が行われていた。自身が最初の子を出産した後、より大きな地区の病院の婦人科への転勤を命じられ、毎日20件の強制中絶と不妊手術に関わった。

 その苦痛から逃れるために、彼女は自分のクリニックの開設を計画したが、経験を積むために自治区のいくつかの病院で勤務した際、中絶や不妊手術に関わらされただけでなく、生まれて間もない赤ちゃんに致死的な薬液を注射して殺害していることも知ることになった。「私がある病院で働いていた時、何人かの赤ちゃんが生まれ、泣き声を聴きました。でも、すべての赤ちゃんに”注射”が行われることを知らされていたので、”我が家”に着く前に、彼らが死ぬことを知っていました」と語った。

 「妊娠中の女性に対して加えられる容赦ない追求は、”余分な出産”の厳格な取り締まりの顕著な特徴」と述べ、当局の家族計画規制を無視している疑いのある人々を追跡するために、多くの手段が使われ、”秘密の出産”を根絶するために、内部告発も奨励されている、とした。

*ウイグル人医師と協力して胎児を守る努力をするも当局に知られた

 「ある時、自宅に妊娠中の友人を隠し、赤ちゃんを出産させようとしましたが、見つかって、病院に連れて行かれました。ウイグル人医師などの協力で便法を使って、何とか無事出産できるように努力を重ねましたが、生まれた赤ちゃんは4時間後に亡くなりました」と悲しい経験をしたシェムシヌールは、その後も、自宅に妊婦を保護したり、支援者を見つけたり努力を重ね、自分の病院で胎児を守った。

 だが当局の検査が頻繁に行われ、自分の行為を続けることが困難を極める一方で、ウイグル人たちからは、病院で働いていることで「当局の犬」と非難され、「妊婦を陰で守ろうとしていた私たちは軽蔑され、信用されませんでした。彼らは私たちの本当の気持ちを知らず、関係は良くありませんでした」と語った。

 そうした中で、非常に多くのウイグル人医師と一部の民間病院が、赤ちゃんを救うために介入することで政府の政策を「覆そう」としたことから、当局は、中国人医師が実権を握るようにした。「中絶薬のリバノールの投与を少くすることで、赤ちゃんが生きて生まれる可能性がありました。ですが、そうやって多くの赤ちゃんの命を救っているのが、当局に知られ、そのような投薬の”操作”をできないようにされてしまった。当局は私たちを信頼しなくなったのです」。

 彼女は、他の部門に移され、実体を知ることが困難になったが、当局の家族計画担当者が実権を掌握するまで、協力者の助けを借りて手術部門にアクセスして状況をつかみ、その結果、1日に少なくとも3〜5回の強制中絶または不妊手術が行われたことを確認した。 「この薬液を注射された妊婦は出産前に赤ちゃんを亡くしました。注射器の針は非常に長く、子宮に直接注入されます。針を刺すと、液体が”正しい所”に注入しているか確認します。私は措置室に勤務していた時に、注射が行われるのを実際に見ています。毎日行われました」と証言した。

*義理の姉も”違法出産”が見つかり、母子ともに死亡

 また彼女は、義理の姉の悲劇的な死について語った。

 「義理の姉は、自分が知られていないウイグル人の大きな町、カラカシュに行けば匿名で出産できる、と単純に考えていました。彼女の”違法”な妊娠は3回目で双子の出産を予定していたのですが、当局に見つかり、カラカシュ到着時に病院に連れて行かれ、薬が投与され、その数分以内に、赤ちゃんだけでなく母親である義姉も亡くなったのです。義理の姉はとても健康で、病気もしたことが無かったのに、亡くなりました。私の夫は義姉の夫である兄弟と一緒に手術室の前で待っていましたが、30分足らずで遺体となった彼女がが出てきました。病院側は『心臓病があった』と説明しましたが、義理の姉は30歳と若く、病歴もなかったのです。なすすべもなく、家族は遺体を取り、葬式をし、埋葬しました」。

 さらに、2008年のこと、彼女は、新疆ウイグル自治区の病院で、ウイグル人女性の子宮摘出に「割り当てシステム」が適用されていることを知って、ショックを受けた、と証言した。

*「自分も『癌だ』と言われて子宮を切除された」

 2005年に父親を亡くしたのが原因で、身体に変調が起き、その診断の過程で、自分の子宮に前癌性腫瘍が見つかった。「子宮を切除しないと、癌が体全体に広がるだろう」と医師に言われ、言われるままに切除手術を受けたが、術後の病理検査で切除された子宮に癌は発見されず、手術は必要なかったことに気づいた。だが、その医師が釈明する中で、年間2000件の子宮切除手術を義務づけられていること告白したことで、罪を追求することを諦めた、という。

 まだ第三者による検証がされていないが、新疆ウイグル自治区周辺のさまざまな病院で働いた彼女の個人的な経験をもとにした推定によると、自治区南西部のホータンに限っても、ウイグル人女性の70%が子宮を切除されている。

 「当局は、女性の子宮を検査して、何か”異常”を見つけた場合、切除する理由に使いました… 首都ウルムチでも事情は変わらないと思います」と述べ、彼女自身が診療した女性も、そう証言したという。「ホータンの母子育児病院で勤務していた際、そこにいた女性の4人に3人が『私には子宮がない』と言っていました。 病院の避妊部門の負担が大きいこともあって、そちらも手伝ったのですが、その経験から、多くのウイグル人女性の子宮が無いことを知ったのです」と語った。

*病院に医療倫理基準があっても、”家族計画”を優先

 また、新生児を殺害する倫理上の問題を、聴聞者から聞かれて、「医療倫理基準は中国の病院にありましたが、政府当局の命令がそれと矛盾しても、従わざるを得なかったのです」と彼女は答え、また、”家族計画”に関しては、「完全に政府当局が実施権限を持っており、私たち病院関係者は、それに手を付けることはできません。避妊手術の強制について言えば、医療倫理は単なる紙の上の約束事でしかありません」と指摘した。

*避難先のトルコに会いに来た兄は逮捕、懲役10年の刑に

 シェムシヌール氏の兄は、2016年に母親と共にトルコに彼女を訪ね、2週間後に新疆に戻ったが、当局から「懲役10年」の刑を宣告された。

 それ以後、新疆にいる家族から連絡が絶えていたが、今回のロンドンでの民間法廷で証言した後、中国共産党関係者が主催した緊急記者会見で彼女を攻撃、彼女の妹マルハバも中国のテレビに出演して批判し、親類縁者も全国テレビで、彼女の家族を非難するように仕向けられた。

*妹が、姉を「嘘つき」と罵倒する情宣ビデオも作成された

 マルハバは、姉が2人の子を出産した後に子宮The rapidly convened CCP press conference answering Shemsinur’s and others’ charges.を摘出された、というようなことは「見たことも聞いたこともない」と述べ、「自分の母は8人の子を産み、子宮摘出術を強制されたこともない。私も子を持ち、幹部であり、誰からもそのようなことを強制したことはない」「私の姉が言っていることはすべて嘘。私たちの国と新疆ウイグル自治区を誹謗中傷しています。大嫌いです」と叫んだ。そして、自治区政府と共産党の情宣ビデオでこう語ったー「私たちはとても元気に暮らしています。とても幸せです」。

(中国共産党は、”民間法廷での証言に反論する緊急記者会見を開いた=写真右)

The rapidly convened CCP press conference answering Shemsinur’s and others’ charges.
Marhaba was forced to publicly denounce her sister.(姉を公けに批判するの妹のマルハバさん)

(翻訳・編集「カトリック・あい」)

 

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2021年6月18日