・モンゴル滞在の著名な中国人反体制作家、”海外警察”が逮捕、中国に連行(BW) *写真はボルギジン氏と彼が中国で有罪とされた著作「中国文化革命」(南モンゴル人権情報センター提供) (2023.5.15 Bitter Winter Editor Massimo Introvigne) 2023年5月3日、中国警察の車両2台が民家に到着し、反体制派作家を逮捕した- 中国ではこうしたことは日常茶飯事だ。だが、今回の事件は中国国境内で起きたものではない。 ラムジャブ・ボルジギン氏は独立主権国家であるモンゴルの首都ウランバートルで逮捕され、すぐに中国に連行されたのだ。 モンゴル国内で南モンゴル人の反体制派が中国警察から誘拐される5件目の事件となる。 そのうちの1人は、ウランバートルのUNHCR事務所ビル前で逮捕されている。 ボルジギン氏は、中国政府・共産党が「内モンゴル」と呼び、モンゴル人としてのアイデンティティを抑圧して「中国化」しようとしている南モンゴルでよく知られた作家。 2019年、ボルジギン氏は、血なまぐさい時代の南モンゴル生存者の口頭証言を含む文化大革命に関する本を出版したとして、中国の裁判所で懲役2年の判決を受けた。刑期を終えた彼は、自宅軟禁の一種である無期限の「居住監視」下に置かれたが、ボルジギン氏は今年年 3 月 6 日、モンゴルに入国し、そこで南モンゴルにおける中国共産党によるモンゴル人アイデンティティの抑圧の歴史を 3 巻からなる本の出版を発表していた。 モンゴルで逮捕され、中国に連行される1週間前、ボルジギン氏はニューヨークに本拠を置く南モンゴル人権情報センター(SMHRIC)に電話を入れ、「中国警察が娘を連れてウランバートルに来た。私を逮捕し、中国に連れ戻す、と脅している」と助けを求めた。 SMHRICは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に通報したが、明らかにモンゴル当局の共謀、あるいは少なくとも暗黙の了解のもとで3日に起きたボルジギン氏の逮捕、中国への連行を防ぐことはできなかった。 中国警察はボルジギン氏の”問題”の著作の原稿の回収に”成功”していない。原稿はモンゴル人の友人たちの手で安全に保管されており、彼らは出版を続けるつもりだが、モンゴル政府が北京への”従順”な姿勢を強めている今、それすら確実ではない。 3月3日、ダライ・ラマ師は、モンゴル・チベット仏教の指導者であり、ダライ・ラマ自身とパンチェン・ラマ師に次ぐ第3位の権威であるジェブツダンバ・フトゥグトゥ師が「米国生まれのモンゴル人の少年として生まれ変わった」と発表した。 しかし、モンゴル政府は中国から、「ジェブツダンバ・フトゥグトゥ師を認めるべきではなく、モンゴルへの渡航も許可すべきではない」と警告を受けている。 ダライ・ラマ師が認定したジェブツンダンバ・フトゥグトゥ10世はモンゴル仏教聖職者によって正式に即位されるべきだが、これはモンゴル政府の許可がある場合にのみ可能となる。 今のところ、モンゴルが中国の独裁者に抵抗する意思を示す兆候はない。 *ダライ・ラマに供物を捧げるジェブツンダンバ・クトゥグトゥ10世( ダライ・ラマ法王事務所提供) (翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二) *Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け、 中国の現状や宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。 ツイート