・教皇、教会の刑罰制度改定の使徒憲章発出・「重大な悪」を防ぎ「傷を和らげる」狙い

教会における制裁を扱う、教会法典「第6集」(写真:1983年版)教会法典「第6集」

 教皇フランシスコが、教会における犯罪処罰制度を定めた「教会法典・第6集」を改める使徒憲章「パシテ・グレジェム・デイ」に5月23日に署名、6月1日にその内容が発表された。今年12月8日発効する。

*新たな形の犯罪への処罰を明確化

 改定作業は、前教皇ベネディクト16世により始められた。制度改定でいくつかの新しい形の犯罪に対する処罰が導入され、「より重大な悪を防ぎ、人間の弱さによって引き起こされた傷を和らげる」ための、いっそう有効な道具となる、とバチカン広報局は説明している。

 「あなたがたに委ねられている、神の羊の群れを牧しなさい。強制されてではなく、神に従って、自ら進んで世話をしなさい」(ペトロの手紙1・5章2節)。使徒ペトロのこの言葉とともに使徒憲章「パシテ・グレジェム・デイ」は始まる。

 教皇は同憲章で、「世において教会が必要とするものにふさわしく応えるために、聖ヨハネ・パウロ2世が1983年1月25日に公布された教会法典中の刑罰法規をも見直す必要が明らかになり、司牧者たちに、より重大な悪を防ぎ、人間の弱さによって引き起こされた傷を和らげるための道具として、それを用いることを可能とする変更が必要となりました」と説明。

*「刑罰制度に訴えようとしない司牧者」の怠慢を批判

 そして、ベネディクト16世が2007年に着手し、世界中の教会法専門家、司教協議会、修道会責任者、教皇庁諸機関が「共に参加・協力する精神」のもとに取り組んできた改定作業の経緯を思い起こされた。

 この深い内容を持つ複雑な作業の結果は、2020年2月、教皇フランシスコの手に託されていた。 教皇は、世紀にわたり教会が行いに対する規則を定め、「司教をその順守に関する責任者とし、神の民を一つにまとめてきた」歴史を振り返り、「愛と慈しみは、しばしば曲がってしまったものを、父がまっすぐ正すことを求めます」と指摘。このことは、教会やキリスト教共同体、被害者とされる人に対してだけでなく、犯罪に手を染めたことで、「教会の側からの処罰」という憐みの時を必要とする者に対しても、慈愛によって求められる「不可欠で具体的な完成すべき課題」であり、「特に多くのケースにおいて、『信者の間に、つまずきと混乱を生む』という考え方が、更生をより困難なものにしていた」と説明された。

*司牧者が考慮すべき三つの目的

 そして、「刑罰制度に訴えようとしない司牧者の怠慢は、『司牧者がまっすぐ誠実に自身の任務を果たしていない』ことを表しています」と現状を批判。「慈愛は、司牧者に対し、必要な時はいつでも刑罰制度に訴えることを求めています。その際、司牧者は教会共同体のために三つの目的を考慮に入れる必要があります。それは、『正義が求めるものの回復』『犯罪者の更生』『不正に対する償い』です」と記している。

 改定版は、現行法に様々な変更を導入し、いくつかの新しい形の犯罪を制裁する規定を定め、弁護人依頼権、公訴時効、刑罰を従来よりも正確に定義するなど、刑法の基本に関わる専門的観点からも改善が図られ、「具体的なケースにおいて適用すべき最もふさわしい刑罰を判断する際の客観的基準」を示すとともに、「特に共同体の中で、より大きい被害とつまづきをもたらす犯罪」に対して適用される刑罰の内容について、当局の自由裁量を制限し、「教会的一致」を重視するものとなっている。

(編集「カトリック・あい」)

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2021年6月3日