・教皇の健康状態は改善、数日内に退院も

(2023.3.30   バチカン放送)

  呼吸器感染症のためローマ市内の病院に入院中の教皇フランシスコの体調は回復の方向にある。バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長は30日正午、記者団に対し、「教皇は前夜よくお休みになった。体調は回復に向かっており、計画に従って治療が継続されている」と説明した。View of Rome's Gemelli Hospital

 教皇は最近数日、呼吸器に関するいくらかの困難を訴えたため、29日午後、ローマ市内ののアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院で検査を受け、「呼吸器感染症のため、数日間の入院治療が必要」と診断された。広報局長にると、30日朝、教皇は朝食をとられた後、何紙かの新聞を読まれ、病室で仕事を再開された。昼食前には、ご自身の病室に付属する礼拝堂で、祈りの時を持ち、聖体を受けられたという。

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 30日夜、ブルーニ広報局長はこの日二度目の説明を行い、「教皇は同日午後、休息と祈り、またいくつかの急を要する仕事をなさったが、治療によって、体調が明らかに改善している」と述べた。

 また担当医師団による情報として、「検診の結果、感染症をベースとする気管支炎が確認され、抗生物質による治療を続けた結果、教皇の健康状態は明らかな改善している。順調に回復すれば、教皇は数日のうちに退院が可能だろう」と説明した。

(編集「カトリック・あい」)

 

2023年3月31日

・教皇、呼吸器感染症でローマ市内の病院に入院、数日間の治療必要

(2023.3.29 バチカン放送)

 バチカンのブルーニ広報局長が29日声明を出し、教皇フランシスコは呼吸器感染症のため、数日間の入院治療が必要となったことを明らかにした。

 教皇はここ数日、呼吸器に関するいくらかの困難を訴えたため、29日午後、ローマ市内のアゴスティーノ・ジェメッリ総合病院に検査入院された。声明では、検査の結果、呼吸器感染症(新型コロナウイルス感染症ではない)が明らかになり、数日間の入院治療が必要としている。

 教皇は、受け取った多くのメッセージに感動し、人々の寄り添いと祈りに感謝された。

(編集「カトリック・あい」)

2023年3月30日

・「同性カップルの祝福をドイツの教会が勝手に進めることはできない」とバチカン国務長官(Crux)

 同性婚に対する祝福は、カトリック教会として公式に禁じられているが、ドイツの教会の多くではすでになされている。バチカン教理省は2021年に声明を出し、神が 「罪を祝福することはできない… 司祭が同性カップルに正当性を与えることは違法」と言明していた。

 だが、ドイツの教会は、先週末の”シノドス”の最終会議で、司教、司祭、一般信徒合わせて200人以上が参加して、同性カップルに司祭が祝福を与えることについて賛否を問うた結果、決定に必要な67人の司教の3分の2以上の賛成を含め、圧倒的多数、176人が賛成した。実施は、2026年3月以降としている。この会議ではまた、離婚して再婚した夫婦に例外なしに聖体拝領を認めることも可決、さらに、司祭の独身制についても見直すよう、教皇に求めることも決めている。

 パロリン国務長官は記者団に対して、2021年の教理省の声明をもとに同性カップルの祝福に関するバチカンの立場を確認し、「ドイツの司教団の判断は、今年と来年の10月に開く世界代表司教会議での判断にゆだねられねばならない。このような判断は、世界全体の教会の”シノドスの道”の歩みの中に収めるべきもの。その見地から、ドイツの教会が同性カップルの祝福を2026年まで延ばしたのは結構なことだ」と述べた。

 バチカン当局とドイツの司教団は、これまで”シノドスの道”に関して議論を続けており、教皇フランシスコは昨年夏、ドイツの教会に、「司祭の独身制、女性の司祭叙階、同性カップルに対する祝福などの問題をめぐって分裂を助長しないように」との警告の書簡を送っている。さらに昨年秋のドイツ司教団のバチカン定期訪問の際、バチカンのいくつかの部門のトップが、ドイツ流の”シノドスの道”の歩みを止めるよう試みたが、ドイツ側は受け入れなかった。

 今年に入っても、1月に、パロリン国務長官を含むバチカンの高官数人が、教皇の承認を得て、ドイツの司教団に、「司教と信徒で構成するドイツの新しい教会統治の形は受け入れられない」旨の書簡を送ったが、ドイツの司教団は、その形を具体化する“Synodal Council(共同評議会)”の設立準備を進めた。

 教皇は、ドイツ教会のこうしたやり方を「非常にイデオロギー的」であり「エリートによって作成されている」として、ドイツ式”シノドスの道”を認めないことを示唆している。

 パロリン国務長官は「教会にはこれまでも常に緊張と立場の相違が存在した」として、今回のドイツの教会の動きを”反乱”と呼ぶことは避けたものの、ドイツ流”シノドスの道”が「現在のカトリック教会の教義と正確に一致しない決定を下している。彼らが、この歩みはすべて教会法の中でなされている、と主張しても、私たちは会って、このような主張を再検討しなければならない」と強調している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

 

 

 

 

 

2023年3月17日

・教皇、”枢機卿顧問団”を刷新ーオロリッシュ枢機卿など新メンバーに

Pope Francis appoints new members of the Council of CardinalsPope Francis appoints new members of the Council of Cardinals 

 メンバー9人のうち新たにメンバーに加えられたのは5人で、欧州連合司教評議会委員長で世界代表司教会議の総括担当者でもあるクロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルク大司教)、バチカン市国の教皇庁委員会委員長で行政長官のフェルナンド・ベルジェス・アルザガ枢機卿、スペイン司教協議会会長のフアン・ホセ・オメラ枢機卿(バルセロナ大司教)、ジェラルド・ラクロワ枢機卿(カナダ・ケベック大司教)、ブラジル司教協議会元会長のセルジオ・ダ・ロシャ枢機卿。

 留任は、パロリン国務長官の他、バチカンの未成年者保護委員会の委員長を長年務めてきたショーン・オマリー枢機卿(米ボストン大司教)、アジア司教協議会連盟前会長の オズワルド・グラシアス枢機卿(インド・ボンベイ大司教)、フリドリン・アンボンゴ・ベスング枢機卿(コンゴ民主共和国・キンシャサ大司教)の4人は留任する。オマリー、グラシアス両枢機卿は、会議発足以来、10年を超えてメンバーを続けることになる。

 オロリッシュ枢機卿は1985年に来日以来、途中五年間のドイツ留学をはさんで2011年にルクセンブルク大司教となるまで、上智大学で教鞭をとり、ドイツ語学科長、カトリックセンター長、ヨーロッパ研究所所長、副学長などを務めている。”日本関係者”がこの会議のメンバーとなるのは初めてだ。

 

2023年3月9日

・教皇、 トルコとシリアの地震被災地の人々に支援実施

地震の被害が深刻なトルコ南部ハタイ県で 2023年2月12日地震の被害が深刻なトルコ南部ハタイ県で 2023年2月12日  (AFP or licensors)

(2023.2.15 バチカン放送)

 「トルコとシリアでの大地震で苦しんでいる人のことを忘れないように」ー教皇フランシスコは15日、地震により膨大な被害を受けたトルコとシリアに対する連帯のアピールをツィートを通じて新たにされるとともに、教皇庁支援援助省を通して、両国の被災地に物資的・経済的な支援をおくられた。

 15日にナポリ港からトルコ・シリアに向けて出発した連絡船には、イタリアの政府と様々な団体からの救援物資と共に、バチカンからの支援として防寒下着1万枚が積み込まれた。

 前日にナポリで教皇庁支援援助省長官コンラート・クライェフスキ枢機卿から贈られた防寒下着は、シリアのアレッポに近い、トルコのキリス難民キャンプに届けられ、同地域で長い活動経験を持つフランチェスカ・ラヴァ基金が配給を受け持つ。

 この難民キャンプは、シリア内戦で増え続ける難民を収容、現在は約6万人に達しており、キャンプに入りきれない多くの人々が周辺で避難生活を余儀なくされている。加えて今回の大地震で住むところを無くした人々が、大量に流入しているため危機的な状況になっている。

 教皇は、特に支援が手薄になっているシリアの被災地のために、支援援助省を通してシリア駐在のバチカン大使館に経済的支援を実施され、大使館が具体的な支援を行うことにしている。

(編集「カトリック・あい」)

2023年2月17日

・トルコ・シリア大地震ー米国の教皇庁宣教協会が被災者支援の基金を設置

Devastating earthquake wreaks havoc in Syria and TurkeyDevastating earthquake wreaks havoc in Syria and Turkey  (AFP or licensors)

 創設を発表した米国PMSのハリントン事務局長は「トルコの現地担当者はすでにNGOと協力して、基金に集められた援助金を直接、被災者たちに届くような体制を作っており、すぐにも実施可能だ」とし、両国の被災地の教区司教を通じ、被災者たちの緊急の必要に応える方針を示した。

 現地ではなお、何百人の人ががれきの下に閉じ込められていると見られ、世界の国々から集まった救助隊が救出に努めているが、死者はさらに増える可能性が高い。

 ハリントン事務局長は「私たちの希望は、米国のカトリック教徒が積極的に支援に参加し、人々の苦しみを軽減するために今、必要な資源を提供することです」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年2月8日

・教皇、トルコとシリアの大地震の犠牲者たちに深い悲しみを表明

地震で倒壊した建物跡 2023年2月6日 トルコ中南部アダナ地震で倒壊した建物跡 2023年2月6日 トルコ中南部アダナ  (AFP or licensors)

 教皇フランシスコは6日、トルコ南東部、シリア国境付近で同日発生した地震の犠牲者を悼まれ、トルコ駐在バチカン大使、マレク・ソルチュィンスキー大司教に宛て、バチカン国務長官、ピエトロ・パロリン枢機卿を通し送られた電報で、地震により非常に多くの人命が失われたことに深い悲しみを表明された。

 教皇は地震の犠牲者の冥福を祈ると共に、遺族らに寄り添い、すべての被災者に精神的連帯を示され、教皇は救援にあたる人々が神からの勇気と忍耐の賜物に支えられるよう祈られた。

 また、教皇は同じ悲しみを、シリア駐在バチカン大使、マリオ・ゼナーリ大司教に、国務長官を通した電報の中で表され、犠牲者らの魂を神に託されると同時に、新たな連帯精神のしるしとして救援活動を行う人々のために祈られた。そして、長い苦しみの中にあるシリアの人々に、神の力と平和を祈り求められた。

(編集「カトリック・あい」)

2023年2月8日

・機上会見に英国国教会、スコットランド国教会の代表も参加

(2023.2.6 バチカン放送)

 5日、南スーダンの首都ジュバからローマに向かう特別機の機内で、教皇フランシスコが随行記者団と会見され、教皇と南スーダンへの「平和のエキュメニカル巡礼」を共にした英国国教会のウェルビー・カンタベリー大主教と、スコットランド国教会の総会議長イグリーンシェルズ牧師も参加。それぞれが記者の問いに対しコメントした。

 会見の初めに、教皇は今回の訪問が「エキュメニカルな旅」であったことを強調。それゆえ、この会見にウェルビー大主教とグリーンシェルズ牧師が同席することを望んだ、と話した。そして、特にカンタベリー大主教の長年にわたる南スーダンの和解のための取り組みに言及した。

 ウェルビー大主教は、南スーダンの平和をめぐる、これまでの自身の取り組みを説明。2014年に夫妻で南スーダンを訪問した際、紛争地帯のボルに赴いたが、そこには当時5千人もの埋葬されていない遺体があり、カテドラルのすべての司祭も殺害されていた。この非常に恐ろしい事態を目にしたことが、南スーダンの人々を支えるために何ができるかという深い召命を得るきっかけとなったと語った。その後、現地での対話や、教皇の協力を得て、2019年バチカンで行われた同国のリーダーたちの黙想会を実現した、その経緯を振り返った。

 一方、グリーンシェルズ牧師は、南スーダン訪問は、自身にとって初めてであったが、南スーダンに行った前任者は、その非常にデリケートな状況に接していた、と語った。

 ウェルビー大主教は、コンゴ民主共和国では、企業による無責任な鉱石の採掘や、子どもの兵士としての利用、誘拐や、女性への暴力などによって、豊かであるはずの国が搾取されている、と述べた。アフリカにおいてコンゴ民主共和国は世界に供給できるほどの資源を持っているが、世界がエコロジー的な変革を行い、地球を気候変動から救いたいのならば、手を血で染めることなく、自分たちの繁栄よりも、コンゴ民主共和国の平和を追求すべき、と語った。

 グリーンシェルズ牧師は、自身の経験から、開発途上国における発展の道は、女性の権利、特に若い女性の権利を尊重することにあると思う、と意見した。また、識字率の低さも問題の一つであり、人々は自分自身や、自分の置かれた状況を理解し、より良い情報を得た上での選択をすることができない、と話した。また、対話の重要性の一例として、スコットランドにおける、スコットランド国教会とカトリック教会の和解プロセスのケースを挙げた。

 ウェルビー大主教は、教会がもたらすものは、収賄などに影響されないネットワークを提供し、支援物資が届くように助けることだけではない、対立者同士を分け隔てているものを超えられるように助けること、と話した。心を変えるということ、これが今回の訪問の重要な点だった、と大主教は強調。たとえば南スーダンでヌエル族とディンカ族は常に対立していたが、変化を与えたのは政府ではなく、人々がキリストにおける信仰を受け取った時、人々は別の生き方ができるようになった、と語った。同大主教は、この南スーダン訪問後、多くの活動が生まれるだけでなく、神の霊が新たな和解の精神と癒しを人々にもたらすだろう、と話した。

(編集「カトリック・あい」)

2023年2月7日

・教皇、”性的被害問題”抱えるクエレット司教省長官の辞表受理、後任にペルーのチクラヨ教区長のプレボスト司教を指名(Crux)

(2023.1.31 Crux  National Correspondent   John Lavenburg)

 ニューヨーク発 – 教皇フランシスコは1月30日、マルク・ウエレット枢機卿のバチカン司教省長官の辞表を受理され、後任にペルーのチクラヨ教区を率いる米シカゴ出身のロバート・フランシス・プレボスト司教(67)を指名された。バチカンの発表によると、教皇は、ウエレット枢機卿が78歳で、役職定年の75歳を超えていることから辞任を認めたとしているが、枢機卿は現在、成人女性からの性的被害の訴えを2件受けている。本人はいずれの件についても否定しているが、この問題が今回の辞任につながった可能性があるとの見方もある。

 司教省は、世界中の司教の任命について教皇に助言する役割を持ち、伝統的にバチカンで最も強力な部門の 1 つと見なされてきた。 プレボスト司教の長官就任は4月12日で、その時点で大司教に昇格する。新長官の任命は、教皇が出されたバチカン改革のための使徒憲章「Praedicate Evangelium」が発効して以来、文化教育省長官にホセ・トレンティーノ・デ・メンドンサ枢機卿を任命したのに次ぐ、二人目の要職人事となる。日本の教会では、東京大司教区の補佐司教が長期にわたって任命されないままになっており、高松教区の司教不在の状態が続いている。新長官の対応が注目される。

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 プレボスト司教は67 歳。聖アウグスチノ修道会の会員で、1982 年に司祭叙階後、ペルーで宣教師として長年過ごした。米ペンシルバニア州の同修道会運営のビラノバ大学を卒業後、ローマの聖トマス・アクィナス大学で教会法の博士号を取得。2015 年からチクラヨ教区長を務めている。また、2020年から、司教省の理事になっている。

 プレボスト司教は、また、ラテンアメリカのための教皇庁委員会の委員長であるウエレット枢機卿の後任となる。この委員会は、世界のカトリック教徒の 40% 近くが住むラテンアメリカの教会を研究するため、教皇ピオ12 世によって 1958 年に設立された。

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 ウエレット枢機卿は、2010年6月にベネディクト16世から同省長官に任命されて以来、 12 年間にわたって長官を務め、世界のカトリックの現在の指導体制を形成するうえで、最も影響力のある人物の 1 人だった。

 2013年に教皇職に就いたフランシスコのもとで、ウエレット枢機卿は、聖職者の虐待を報告および調査するための世界基準の実施を含む複数の主要な改革を通じて司教省の指揮を執ってきた。 だが、ここ数か月、論争の中心に置かれた。昨年8月にケベック大司教区で、聖職者に性的虐待を受けた被害者101人の集団訴訟が起こされ、数十年前の性的虐待と暴行で、カナダ出身のウエレット枢機卿をはじめ88人の高位聖職者が告発されたのだ。

 枢機卿は、自身に対する訴えを否定し、昨年暮れに、「評判、名誉、尊厳が侵害された」として、原告女性に対して10万ドルの損害賠償を求める裁判を起こし、勝訴した場合、賠償金は、カトリック教会が関与したカナダの先住民族に対する虐待の被害者たちのために寄付する、と約束している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年1月31日

・バチカンの”世紀の裁判”で、教皇の”参謀”‐国務長官代理が弁護側の重要証人に(Crux)

(2023.1.28 Crux  Editor  John L. Allen Jr.)

 ローマ – バチカン最高裁判所長官は26日、バチカンの4億ドルに上るロンドンの不動産取引をめぐる「世紀の裁判」にとって、決定的な舞台転換の可能性のある判断を下した。弁護側証人として、バチカンの国務長官代理で事実上の”教皇首席補佐官”、エドガル・ ペーニャ・ パラ大司教を喚問することに決めたのだ。

 同裁判所はまた、バチカン銀行(正式名称「宗教事業協会」)のジャン=バプティスト・ド・フランス総裁も喚問する方針を決めたが、ピエトロ・パロリン国務長官にも証言させるように、との弁護団の求めに対しては、ペーニャ・パラ大司教の証言の結果を見て判断するとして、判断を留保した。ペーニャ・パラ大司教とド・フランス総裁はいずれも、裁判の核心である、バチカンがロンドンに保有していた4億ドルに上る不動産の処分の問題に関して証言することが予定されている。

 26日に行われた審問は、2021年7月に公判が始まって以来45回目となったが、元国務長官代理のアンジェロ・ベッチュウ枢機卿を含む10人の被告が出廷した。

 今後の公判でのペーニャ・パラ大司教の証言が注目されるのは、検察側の重要証人となっているアルベルト・ペルラスカ師の証言の信頼性を崩す可能性があるからだ。ペルラスカ師は、2009 年から 2019 年までの 10 年間、バチカン国務省の行政事務責任者であり、事実上、財務を担当していた。

 バチカンの検察当局が、バチカンのロンドンにおける不動産取引に関して、バチカンが最終的に約1億4000万ドルの損失を計上したことについて捜査を開始した際、ペルラスカをその主要関係者としていた。2021年半ばになって、ペルラスカはこの事件の内部告発者となることを“志願”し、ベッチュウ枢機卿はじめバチカン国務省の財務関係の元の上司や同僚たちに不利な証言を始めた。

 具体的には、昨年11月の公判で、自分は、イタリアの悪徳金融業者とベッチュウ枢機卿が結託して起こした不正取引の犠牲者だ、とし、「ベッチュウは、裁判で自分に容疑がかかっていることを私にさせた。私は、共犯者でも協力者でも、支持者でもない」と証言している。

 これに対して、イタリアのマスコミは、2021年8月に、バチカンの捜査当局のために、ベッチュウの後任の国務長官代理ペーニャ・パラが準備した秘密の覚書をすっぱ抜いた。バチカンは、その覚書の信憑性について肯定も否定もしていないが、その中で、ペーニャ・パラは、ペルラスカを国務省の組織上の主要ポストの人物であり、財務問題について上位の者に決定を急ぐよう圧力をかけ、また決定した案件の遂行を強要することをしていた、とし、具体的に、ロンドンの不動産取引について「早急に売買契約に署名しないと、大金を失う恐れがある」「それ以外の選択肢はない」「心配しなくていい。うまくいく」、そして「これは形式的な手続きに過ぎない」と圧力をかけた、としている。

 さらに”決定的”なのは、この覚書でペーニャ・パラは、ペルラスカ自身が「この問題が、国務長官あるいは教皇の注意を惹く前」に取引を認める2つの重要書類に署名した、としていることだ。

 バチカン内部の機密漏洩の罪で有罪となっているPRコンサルタントから、ペルラスカが間接的な“指導”を受けていたことが先に発覚したことで、ペルラスカの証言の信頼性はすでに揺らいでいるが、 ペーニャ・パラが公判でこの覚書の内容を確認した場合、その信頼性はさらに大きう揺らぐ可能性がある。

 バチカン経済委員会の元メンバーであるフランチェスカ・チャウキについては、裁判所は26日、再証言の必要はない、とした。彼女は1月13日の公判に、ペルラスカの長年の友人で、イタリア情報部の分析官であるジェノベッファ・チフェリと共に出廷し、二人がペルラスカに検察側に提供した録音の準備についてアドバイスしたと証言している。 だが、この二人の証言は、ほぼすべての点で互いに矛盾しており、どこまで真実を語っているのが判断は不可能だった。裁判官は、二人の証言をこれ以上聴いても役に立つことはない、と判断した。

 また、ベッチュウ枢機卿は、自分の弟が運営するオジェリ教区の慈善団体にバチカンの資金を不法に注ぎ込んだ罪で起訴され、公判が始まっているが、裁判所は、その証人として、サルデーニャ・オジェリ教区の現教区長とその前任者を喚問することを決めている。

 26日の審問では、2020 年 12 月に亡くなったオジェリの元司教、セルジオ ・ピントが残した私的文書で、ベッチュウと他のバチカン当局者がオジェリ教区に「深刻な干渉」をしていると非難する言葉を残していたことが取り上げられ、ベッチュウに発言が求められた。ベッチュウは、「そのような圧力をかけたことはない」と抗弁。「ある個人的な事件が心変わりをさせるまで、ピント司教は不満をいったい持っていなかった」と述べた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年1月30日