・教皇、バチカン諸機関の公共契約の「透明性・集中管理・競争確保」へ自発教令

 

バチカン市国行政庁バチカン市国行政庁 

(2020.6.2 カトリック・あい)

 教皇フランシスコが1日付けで、教皇庁およびバチカン市国による公共契約について「透明性、集中管理、腐敗防止のための競争の確保」を目的とした自発教令を出された。7月1日から適用される。

 バチカンの財務管理については、しばしば国際基準から見て透明性に欠けていること、不正行為に対する対応の甘さが指摘されており、教皇の新自発教令は、かねて進めているバチカン改革の一環として、そうした指摘に応え、財政運営の健全化、財政改革推進の一助とする狙いがあるとみられる。

(2020.6.1 Vatican News)

 自発教令のタイトルは「聖座とバチカン市国の公共契約の手続きにおける透明性、管理、競争について」で、86の条項と訴訟の場合の司法保護に関する付則から成る。

 また、「腐敗の防止に関する国際連合条約」に準拠して内容となっており、これまで聖座財産管理局(APSA)とバチカン市国行政庁で個別に適用されてきた規制に取って代わり、契約や公共事業を管理する独自の規則を持っていなかった、聖座のすべての機関も対象となる。

 *家庭の良い父の勤勉さ
自発教令の冒頭で、教皇フランシスコは、資産の効果的で倫理的な管理を望む「家庭の良き父親の勤勉さ」をイメージしつつ、バチカンの諸機関で公共契約が締結される際の透明性・監査・平等な競争が保証され、推進されることを願われ、公共財の適切な管理には「忠実で正直な管理」が必要であると強調。

 一方で、「経済のグローバル化と相互依​​存の高まりによって、商品やサービスに複数の供給者が参入することで大幅なコスト削減の可能性が高まっている」と、公正競争の有用性についても指摘した。

 自発教令は「聖座とバチカン市国が関係する公共契約の手続きにおける透明性、管理、競争の促進」を目的とし、商品、サービス、公共事業を提供する企業や団体に「平等な扱いと特別登録による参加の可能性」、そのための特別な手続きを保証する、としている。

*腐敗防止のために

 バチカン市国裁判所のジュゼッペ・ピニャトーネ裁判長は、この新しい教令は、国際的に認められた最良の慣行が組み込まれており、「(注:バチカンの物品やサービス購入、公共事業などの)大幅なコスト削減、効率的な資産管理、および腐敗防止への新たな取り組みを実現するもの」と評価。教皇庁立ラテラノ大学の学長で、国際法が専門のヴィンセンゾ・ブオノモ教授は「自発教令で示された新規則は、資産のより良い管理・運用がいかに重要であり、緊急に対処せねばならないか、を関係者に再認識させるための警告」と指摘している。

 *新教令の目的

 自発教令は第一項で、その目的を、内部資金の持続可能な利用、落札手続きの透明性、「特に違法な談合や腐敗を無くす措置を通して、入札者の平等で差別のない扱い」を確保すること、としている。

 *基本原則

 また第5項では、「カトリック教会の社会教説に基礎をおいて、経済的選択と契約当事者を方向づける倫理性」に基づく原則ー行政の自律性、組織の管理の選択における補完性、独立体とバチカン市国行政庁のさまざまな部門の間の誠実な協力、などを列挙。

 最終的な目標は、「支出の計画と合理化」による「コスト削減、効率性、高い効果」を達成すること。特に「透明性、客観性、公平性が必要な」入札手続きにおいて、不必要な行為を避けること。

*利益相反対策など

 また、利益相反、違法な談合、汚職などの対策も示され、「競争のゆがみを回避し、すべての経済活動に当たる人々に平等な扱いを保証する」のに役立てる、としている。

*入札から排除されるのは

 入札に当たって、排除される者も定めており、具体的には「犯罪組織への参加、汚職、詐欺、テロ行為」、「犯罪行為で得た収益の洗浄」、および「児童労働による搾取」で捜査、防止措置、または有罪判決の対象となった業者は、登録、入札への参加から除外する、とし、「国の法律で定めた納税、または社会保障拠出金の支払い義務」を果たしていない者、特別優遇税制の恩恵を受けて居住している者も、同じ扱いとする、としている。

*権限の一元化

 例外とされる特定の場合を除いて、「すべての物品とサービスは、関係の契約を無効とする罰則の下で、一元化したやり方で、諸機関によって取得できる」とし、バチカンの諸機関に関する案件については、聖座財産管理局を含めた聖座と関係する諸組織の権限は、バチカン市国行政庁の権限とともに、「一元化される」と規定。一元化の例外もあるが、それは正当化される理由がなければならない、と条件を付けている。

 また、バチカンの財務事務局は、聖座財産管理局と半年ごとに協議し、「商品およびサービスについての価格、手数料の参照表」を登録された専門家の人件費と合わせて更新、公表する。更新に当たっては、バチカンの諸機関が調達している物品、サービスの、その時点での市場価格、手数料を考慮する。バチカン諸機関には毎年の調達を、毎年10月31日までに行うよう計画することが求められる。

*選定委員会の公正確保

この自発教令は、バチカン財務事務局について、職員と、計画立案の担当者であり選定委員会の委員としての権限を与えられた非常勤の専門員の氏名のリストを定める。また選定委員会委員は抽選とする、とし、各種委員会の中で交替していくが、常にその特定の専門的な資格によって行う、と定めている。また、「互換性のない特性」の詳細なリストが示され、その中には、入札者が「四親等まで」の親族関係、または「二親等まで」の姻戚関係があること、過去5年の間に入札に参加した業者の一員であったこと、などが列挙されている。

*国際ルール

 この自発教令は、教会法の基本原則と目的、およびバチカン市国の特別の性格を考慮し、多くの国で行われている効果的な規則と「最良の慣行」の”宝庫”、としている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年6月2日