・バチカン「ロンドン巨額不動産不正取り引き裁判」で、国務省が被告に1億7700万ユーロ(約270億円)の損害賠償を請求

The trial concerning management of the Holy See's fundsThe trial concerning management of the Holy See’s funds  (VATICAN MEDIA Divisione Foto)

(2023.9.29 Vatican News  Salvatore Cernuzio – Vatican City)

 バチカン裁判所で続いている元枢機卿らによるロンドン高級住宅地の巨額不動産不正取り引き事件の裁判で、バチカン国務省が、この不正行為によってバチカンが精神的、風評的な重大な損額を被った、として総額1億7700万ユーロ(約270億円)の賠償をアンジェロ・ベッチウ枢機卿を含む10人に求めていることが明らかになった。

 国務省の法定代理人パオラ・セベリーノ氏が26日、Vatican Newsに語ったもので、この賠償請求額は、「教皇庁の主要機関の一つ」を襲ったスキャンダルで引き起こされた被害を定量化したもの、と説明。そして、バチカン国務省は、(イエスが聖なる場所を商売の場にしてはならない、と糾弾された)”神殿商人”の悪行と欺瞞の被害者であり、彼らによって深く傷つけられた名誉を回復する取り組みを余儀なくされている、と指摘。

 「この事件は、ローマの個人銀行の頭取、ロベルト・カルビの死につながったバチカン銀行をめぐる史上最悪の金融汚職事件に匹敵するもの、とも言われている。ここまで私が申し上げるのは、国務省が受けた被害がいかに大きいかを理解してもらうためだ」と述べた。

 今回の事件は、2014年、当時国務省副長官だったベッチウ枢機卿が旧知の起業家に、アンゴラの油田開発への投資を誘われたことから始まった。この投資自体は実現に至らなかったものの、これを機に、リスクの大きい投資に手を染めるようになった。

   セベリーノ氏は「シェイクスピアの言葉を借りれば『過去はプロローグ』であり、(犯罪の)物語の再構成から始めることは、”アンゴラ勧誘”が、その後に作戦で、どのようにミンチョーネとトルジという二人の被告の犯罪を赦した『トロイの木馬』になったのか、を解明するのに役立つ。それは、国務省のバチカンが保有する資産についての長期、かつ無条件の管理運用権を事実上手に入れること。本来なら資産を安全に守り、運用すべき国務省関係者の『積極的貢献』によって、それは行われた。管理局の職員、ティラバッシらは、恐らくロンドンでの巨額資産不正取り引きで主導的役割を果たす機会をえたのだ」と実名を挙げた。そして、「真実を明らかにすることが、この裁判の目的。復讐したり、個人的な利益を得るのが目的ではない。教会が裁判を望んでいることは、人間の誤謬に直面した際の教会の強さを象徴している」と強調した。

 この裁判の主題となっているロンドンの巨額不動産不正取り引きは、市内の高級住宅街にある不動産を実勢よりも大幅に高額で売却し、金融機関に多額の損害を与えたのをはじめ、被告らが所有する投資ファンドを通じた不動産株式の購入など、自分たちの利益を目的とした投資を行うなど、「利益相反が絶え間なく続く中でなされた」という。「被告らは、バチカン国務省が管理する資産を、繰り返しもてあそんだ。2013年、2014年、そして2018年も…」とセベリーノ氏は指摘している。

 氏は、被告らが行った「様々な汚職、詐欺、資産の横領、その他の重大な犯罪」についてVatican Newsに語ったが、そうした一連の金融犯罪の中で、最大のものは”ロンドン事件”で、世界130か国のメディアで取り上げられ、バチカン国務省に名誉棄損を含む重大な損害を与えた、とし、信頼回復への取り組み必要な賠償額として、1億7781万8000ユーロを算出した、と説明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=法定代理人などが説明した犯罪行為などの詳細は省きました)

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2023年9月29日