バチカンが1億7500万ユーロの損失を出して売却したロンドン、スローン・アベニューの不動産 (Photo by REUTERS/John Sibley)
(2022.2.1 La Croix Loup Besmond de Senneville | Vatican City)
バチカンが、イタリアの有力枢機卿が関与した金融スキャンダルのもととなったロンドンの不動産を売却、1億7500万ユーロ(約230億円)以上の損失を出した。
ロンドンの高級街、スローン・アベニューにバチカンが所有していた不動産の売却については、昨年11月に英経済紙Financial Timesが報じていたが、1月28日にバチカンが正式に確認した。
売却額については、バチカンは明らかにしていないが、1億6500万ユーロを超える額と言われ、6月末までに売却を完了する予定という。
この不動産ー土地と建物ーをバチカンの関係者は”高級マンション”に改装して収入源としようとしていたといわれているが、結局は、買値よりも大幅に安く売却することで巨額の損失を発生されるという、悲惨な結果となった。
売却の作業はバチカンの財務事務局が、ニューヨークに本部を置く国際的な法律事務所「White & Case」に委託する形で行われ、LaCroixの取材では、欧米の16社が購入を希望、候補を4社に絞ったうえで、最終的に米国の大手投資ファンド「Bain Capital」に売却することになった。
この不動産は、昨年7月に始まったバチカンにおける歴史的な裁判の核心。十数人の被告の中には、バチカン国務副長官だった時期の行動に疑惑がもたれているアンジェロ・ベッチウ枢機卿がいる。
バチカンの検察当局の起訴状によると、購入時に実勢価格が1億2900万ポンド(1億5100万ユーロ)だった問題の不動産を3億5000万ポンド(4億900万ユーロ)で購入。年間の賃料は、800万ポンドを見込んでいたが、実際にはその半額の400万ポンドに留まったが、バチカンがこの物件を購入した際、仲介業者たちが、250万ユーロを”ポケット”に入れた。
2018年に、バチカンの財務当局がこの問題の重大さに気付いた際、売却する際の損失を少なくするために不動産価値を上げようと、当時はまだ部分的だった所有権を全部手に入れようとしたが、その作業を依頼した仲介業者、ジャンルイジ・トルジに手数料として1500万ユーロを取られるはめになった。不動産の所有権全部を取得するための資金も含めて、バチカン国務省が、バチカン銀行(正式名称は宗教事業協会)に1億5000万ユーロの融資をするように要求したのは、こうした経緯からだった。
だが、バチカン銀行はこの要求を拒否し、これが、問題が明るみに出るきっかけとなり、バチカンの検察当局による捜査、起訴、裁判となった。
バチカンが多額の損失を出すのは、単にロンドン不動産取引にとどまらない。LaCroixが得た情報によると、バチカンは、過去数年間で、リスクの高い金融、不動産取引により8億ユーロから10億ユーロを喪失した可能性がある。
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