♰「価値ある家庭の絆を守ることを誓おう」‐教皇が「愛の喜び・家庭年」開始を宣言

Pope Francis meets with a family during the World Meeting of Families in Dublin, Ireland 2018Pope Francis meets with a family during the World Meeting of Families in Dublin, Ireland 2018  (Vatican Media)

(2021.3.19  Vatican News staff writer )

  教皇フランシスコが19日、「愛の喜び・家庭年」の開始にあたって行われたバチカン主催のオンライン・イベントにメッセージを送られ、この特別年の開始を告げられた。

 「Our Daily Love(私たちの日々の愛)」をテーマとするこのイベントは、バチカンの信徒・家庭・命の部署、ローマ司教区、ヨハネ・パウロ二世神学研究所の共同主催によるもの。

 教皇はメッセージで、「夫婦と家族の愛の素晴らしさとと喜びについての世界代表司教会議を受けて5年前に出された使徒的勧告「Amoris laetitia」の出版について思い起こされ、来年6月26日に第10回世界家庭大会が開かれるまでの一年を、「勧告に改めて目を通し、そのテーマを深く味わう期間とするように」と、世界の全ての信徒に呼びかけられた。

*2022年6月に第10回世界家庭大会

 信徒・家庭・命の部署によると、「家族の国際年」は国連が1994年に宣言して始まったが、当時の教皇ヨハネパウロ2世の意向で、この年の10月にカトリック教会としての第1回世界家族会議(WMF)が開かれ、以来、3年ごとに、世界中のさまざまな場所で、世界家族会議が国際司牧・神学会議とともに開かれてきた。来年はその10回目に当たる。

*家族の新しい形

 さらに教皇はメッセージで、「この使徒的勧告の主たる目的は、今日、教会にとって、家庭についての新しい形が求められている、と伝えること」とされ、「教義の大切さを繰り返すだけでは十分ではありません… それよりも、私たちは家庭の素晴らしさの”管理人”となり、その脆弱さと傷を、思いやりを持って、ケアすることが重要です」と強調。

 また、すべての家庭司牧の核心には「福音を宣べ伝える率直さと、共に歩む優しさ」という2つの側面がある、と指摘され、「私たちは、男女、夫婦、家庭に、一致と愛、三位一体の愛のしるしと姿、そしてキリストと教会の間の契約の、真の意味を理解する助けとなる言葉を宣べ伝えるのです 」と司牧者たちに求められる一方で、その言葉は「上からまたは外から与えることはできず、決してそのようにして与えてはなりません」と注意された。

 そして、教会は、主がそうであったように、歴史の中で具現化されてきた。だから、教会が家族についての福音を宣べ伝えるときには、実際の家庭生活の中に入り、配偶者の、両親の日々の争い、彼らが抱える問題、苦しみ、彼らの人生の旅の重荷となり、時として妨げとなる大小すべての事柄を知ることによって、そうする必要がある、とも語られた。

 

*「私たちの日々の愛」

 さらに教皇は、「Our Daily Love(私たちの日々の愛)」というオンライン・イベントのタイトルに言及し、「このタイトルを選んだのは重要なことです。なぜなら、それは、『夫婦生活の率直さと日々の働きによって、そして、夫婦、母親、父親、そして子供たちによる日々の、時には骨の折れる献身によって、生み出される愛』という意味が込められているからです」と説かれ、「福音が日々の暮らしの『肉』に入らず、『上からの教義』として示されるなら、素晴らしい理論だけが残り、道徳的な義務としてしか受け止められないリスクさえあります」と注意された。

 そして、司牧者たちが家庭司牧において心掛けるべきこととして、このように諭された。「私たちは家庭の人生の旅を共に歩み、耳を傾け、祝福するよう求められています… 方向を示すだけでなく、彼らと共に旅をすること。思慮分別と愛をもって”家”に入り、夫婦にこのように話しかけます。『教会はあなたと一緒にいます』『主はあなたの近くにおられます』『私たちは、あなた方が受け取った贈り物を守る手助けをしたいと思っています』と」。

 メッセージの最後に教皇は、「家庭の素晴らしさを損なうすべてのものから、家庭を守りましょう」と呼びかけられ、全ての人に対して、「驚き、思慮分別、そしてやさしさをもって愛の神秘に近づくように。そして、この価値のある、壊れやすい絆を守ることを心に誓いましょう。子供たち、両親、祖父母との絆… 私たちは生きるためにそしてよく生きるために、そして人類がもっと友愛で結ばれるように、これらの絆を必要としているのです」と訴えられた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*特別年にさまざまな企画、6月には世界の司教団など参加してのフォーラムも

(2021.3.19 バチカン放送)

 聖ヨセフの祝日の19日、現在行われている「聖ヨセフの特別年」と並行する形で、教皇フランシスコの使徒的勧告「Amoris Laetitia(家庭における)愛の喜びよろこび」発表5周年を記念する(愛の喜び・家庭年)」が始まった。来年6月26日にローマで開催予定の第10回世界家庭大会まで行われる。

 教皇のこの使徒的勧告は、家庭をテーマにした2回のシノドス(世界代表司教会議=2014年の第3回臨時総会「福音宣教との関連から見た家庭の司牧的問題」と2015年の第14回通常総会「教会と現代世界における家庭の召命と使命」)での議論を受けた指針として、2016年3月19日に発表された。今年で5周年を迎えるにあたり、教皇は昨年末、同使徒的勧告についての考察を深める特別年の開催を布告された。

 主催者を代表する形で、バチカンの信徒・家庭・いのち省の長官、ケビン・ジョセフ・ファレル枢機卿が18日、この特別年の目的、概要を説明、特別年が、家庭を司牧活動と社会の中でより主役的にするための助けとなることを希望した。

 また、同枢機卿は、「新型コロナの世界的な大感染という困難の時こそ、キリスト教的家庭の姿を真の『善き知らせ』として示す必要があります」と強調。「家庭は私たちの最も正真で最も根源的な人間関係を守る存在であり続けます… シノドスの長い歩みの実りである、教皇の使徒的勧告「『Amoris Laetitia』を、教会の中だけでなく、家庭の中でも手に取り、その豊かな内容に改めて触れるように」と信徒たちに勧め、さらに、この特別年を「困難を抱えた家庭に寄り添い、危機にある夫婦や家族を導き、孤独な人や、貧しい家族、分裂した家族を支える機会とするように」と呼びかけた。

 この特別年の企画として、教皇庁信徒・家庭・いのち省は、同省のホームページに使徒的勧告「愛の喜び」をテーマにした一連のビデオを定期的に掲載し、教皇や幾人かの証言者が参加する予定だ。さらに、関連の出版やビデオ会議も計画されており、6月9日から13日にかけては、世界中の司教協議会および協議会の家庭司牧担当らが参加し、「Amoris Laetitia」が司牧にどう生かされているか、生かしていくべきかを話し合うフォーラムが開かれる予定だ。

(編集「カトリック・あい」)

 

*「カトリック・あい」より特別年の日本語名称について

 特別年の名称について・公式英語版の名称は「 Amoris Laetitia Family Year 2021-2022」とされ、バチカンの共通ロゴもそうなっています。Familyは『家庭』とも『家族』とも日本語に訳されますが、この特別年に学びなおそうとする使徒的勧告「Amoris Laetitia」の内容は、Familyがキーワードで、日本のカトリック中央協議会のイタリア語原文からの翻訳でも、これより先行した「カトリック・あい」の公式英語版からの試訳でも、『家庭』とする方が、文脈から判断して適当とし、『家庭』としています。したがって、その延長としての特別年の名称の和訳も『家庭』で統一することにしました。なお、18日付けのバチカン放送日本語版は「愛の喜び家族年」と訳しています。中央協議会は3月19日現在、この特別年の始まりを告知していませんが、今後、告知することがあれば、名称をそろえることも検討します)

 

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2021年3月20日