【聖金曜日】「イエスよ、私の心に話しかけてください」-教皇の黙想と共にコロッセオで十字架の道行

(2024.3.30 バチカン放送)

 キリストの受難と死を記念する29日、「聖金曜日」の夜、教皇フランシスコによる黙想テキストと共に、ローマのコロッセオで十字架の道行が行われた。

 この日は強い風が吹く一日となったが、夕方、聖ペトロ大聖堂で「主の受難の儀式」をとり行なった教皇フランシスコは、聖土曜日の復活徹夜祭と復活の主日の行事に備えて健康状態を良好に保つために、夜はバチカンのサンタ・マルタ館から十字架の道行に参加された。教皇は、昨年の聖金曜日も、気温の低下のためにコロッセオには赴かず、バチカンから会場の参加者と心を合わせ十字架の道行を行われている。

 教皇の直接的な参加なしで行われた今年の十字架の道行だったが、コロッセオに集った信者らは教皇の存在を特別身近に感じることができたようだ。今年の十字架の道行の黙想テキストが、教皇フランシスコ自身によって記されたものだったからだ。

 聖金曜日のコロッセオでの十字架の道行には、黙想のためのテキストが用意され、年ごとに異なる執筆者らによって、多様なテーマ、視点を持ったテキストが書き下ろされてきた。来年2025年の聖年を前に、教皇は2024年をその霊的準備のための「祈りの年」と宣言されている。こうした背景のもと、教皇は祈りの豊かさを人々に再発見してもらうために、今年、十字架の道行の黙想テキストを自ら準備された。教皇フランシスコ著の十字架の道行の黙想テキストは、今回が初めてのものとなる。

 『十字架の道行をイエスと共に、祈りのうちに』と題されたこの黙想の導入で、教皇は「主イエスよ、あなたの十字架を見つめ、あなたが私たちのためにすべてを差し出されたことを知ります。私たちはこの時間をあなたに捧げます。ゲツセマネからカルワリオまで祈られたあなたのそばで、この時間を過ごしたいと思います。この祈りの年、私たちはあなたの祈りの歩みに一致します」とされた。

 そして、教皇はイエスの死刑宣告から、十字架上の死、埋葬まで、十字架の道行の14の過程(留)をイエスと共に歩みつつ、それぞれの場面を心の目で見つめ、イエスと内的対話を行いながら、問い、思いを述べ、自己を省み、祈りを投げかけている。

 第一留 「イエス、死刑を宣告される」では、教皇は「イエスよ、命であるあなたが、死刑を宣告された。真理であるあなたが、偽りの裁判を受けている。なぜ、抗議しないのですか。なぜ声を上げ、あなたの正しさを説明しないのですか… イエスよ、決定的なこの瞬間に、あなたは話さず、沈黙する。それは、悪が強ければ強いほど、あなたの答えは徹底的だからです。あなたの答えは沈黙です。しかし、あなたの沈黙は豊かです。それは祈り、柔和さ、赦し、悪からの解放の道、苦しみを恵みに変える道。イエスよ、私はあなたをよく知らないことに気づきました。なぜなら、あなたの沈黙をよく知らないからです… イエスよ、あなたの沈黙は私を揺さぶります。それは私に、『祈りは唇を動かすことから生まれるのではなく、耳を傾けることを知る心から生まれるのだ』と教えてくれます。祈りとはあなたの御言葉に従順になること、あなたの現存を礼拝することだからです」とされ、「イエスよ、私の心に話しかけてください」と祈りを繰り返している。

 この夜、コロッセオ周辺には、およそ2万5千人の信者が集い、教皇の言葉に聞き入り、その黙想を共に味わいながら、十字架の道行を行った。最後に、ローマ教区教皇代理司教アンジェロ・デ・ドナーティス枢機卿による祈りをもって、聖金曜日のこの伝統行事は終了した。

(編集「カトリック・あい」)

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2024年3月30日