【教皇、マルセイユ訪問】「移民・難民問題は人間性と連帯をもって対応されねばならない」海の犠牲者追悼碑前の集いで

マルセイユに到着し、子どもたちから花束を受け取る教皇フランシスコ 2023年9月22日 フランス・マルセイユ国際空港マルセイユに到着し、子どもたちから花束を受け取る教皇フランシスコ 2023年9月22日 フランス・マルセイユ国

(2023.9.22 Vatican News   Lisa Zengarini)

   教皇フランシスコは、 仏マルセイユで開催中の地中海地域をテーマにした「ランコントル・メディテラネンヌ」などに参加のため、22,23日両日、同地を訪問された。ローマ教皇がマルセイユを訪れるのは、1533年の教皇クレメンス7世(在位1523‐1534)の訪問以来。

 同行事は、地中海に接する5つの地域(北アフリカ、バルカン半島、ラテン・ヨーロッパ、黒海、中東)の諸都市を結び、教会関係者、行政責任者、若者らが集い、地中海地域の多様で豊かな価値を見出しながら、共通の課題への一致した取り組みを促すのが目的。

 教皇は22日午後、マルセイユに到着され、空港での歓迎式の後、ノートルダム・ド・ラ・ガルド大聖堂で地元教区関係者らと聖母への祈りを捧げられた。

 続いて、海で亡くなった船員や移民・難民の追悼碑の前で、船員、移民や難民のケアに携わる宗教者や現地の教会、信徒団体の代表たちと祈りの集いを持たれた。

 この集いでの挨拶で教皇は、「地中海が『墓地』となっている移民・難民の悲劇に対し、言葉ではなく具体的な行動で対応すること、人道的に対応することが緊急に求められています」と強調。

 そして、「より良い未来を求めながら、海で命を落とす移民・難民は、単なる”数”ではありません。紛争や貧困、環境災害から逃れてきた顔も名前もある人々です」とされ、 「海で亡くなる人たちのことを”数字”で考えることに慣れないようにしましょう。その人たちには、名前があり、姓があり、顔があり、人生の物語があり、壊された人生り、打ち砕かれた夢があったのです」と語られた。

 教皇はさらに、「小説『リトル・ブラザー』の主人公ヘルマニトが、ギニアから欧州までの危険な旅の終わりに思い出したように、移民・難民たちは『生と死の岐路』に立たされている。そして欧州諸国は文明の岐路に立っています…一方に、人類社会を善意で繁栄させる『友愛』があり、他方に地中海を血で染める『無関心』がある。海で危険にさらされた人々を救けることは、人類と文明の両方の義務です」と訴えられた。

 続けて、「私たちが、陸でも海でも、最も弱い人々をケアする方法を体得し、ベルベットの手袋で他人に死刑を宣告する怖さと無関心の麻痺を克服できれば、神は、私たちを祝福してくださるでしょう」とされたうえで、「私たちは、人間が交渉の材料として扱われ、投獄され、残虐な方法で拷問されているのを見て、あきらめることはできません。 残酷な人身売買と無関心による狂信によって引き起こされる難破の悲劇を見過ごすことはできません。 波の中に取り残され、溺れようとしている人々を救わねばなりません。 それは人類の義務、文明の義務です!」と再度、訴えられた。

 そして、教皇は、この危機に対処するために、「さまざまな宗教、特に神の名の下に見知らぬ人に対するもてなしと愛を教えている地中海地域の3つのアブラハムの一神教(注:聖書 の 預言者 アブラハム の神を受け継ぐ ユダヤ教 、 キリスト教 、 イスラム教 )は、模範を示すよう求められています」とされ、 「私たち信者は互いに、兄弟姉妹として相手を読ころんで受け入れることで、模範的でなければなりません」と強調。 「過激主義という“木食い虫”や、地域社会の真の生活を蝕む原理主義というイデオロギー的疫病」に身を任せてはならない、と忠告された。

 また教皇は挨拶の中で、「社会的緊張の増大に直面しているマルセイユの複雑な多文化、多宗教の現実」に言及され、マルセイユは「出会いか対立かの岐路に立っている」と述べられ、そうした中で、移民・難民支援やコミュニティ間の平和共存促進に携わるいくつかの団体、特に宗教間NGO「マルセイユ・エスペランス」の活動を賞賛、 「あなたがたは未来のマルセイユです。この街がフランス、欧州、そして世界にとって希望のモザイクとなるよう、めげずに前進してください」と激励された。関連して、第二次世界大戦後、ユダヤ人とキリスト教の融和を促進するために精力的に活動したフランス在住のユダヤ人歴史家ジュール・アイザック氏を「対話の先駆者および証人」と挙げられた。

 挨拶の最後に、教皇は、欧州議会の議長を務め、昨年亡くなったデビッド・サッソリ氏の言葉を引用して、「欧州が壁を打ち破り、橋を架ける一致の精神」で、地中海における大規模移民・難民によってもたらされている現在の課題に対処できるよう希望された。また、2020年にイタリア南部、バーリで開かれたイタリア司教協議会主催の「地中海、平和のフロンティア」の呼びかけを繰り返された-「兄弟姉妹の皆さん、これらの問題に一緒に向き合いましょう。 希望を難破させないようにしましょう。 一緒に平和のモザイクを作りましょう!」。

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 訪問2日目の23日は、教皇は大司教館で人々との私的な出会いを持たれた後、パレ・ドゥ・ファロで「ランコントル・メディテラネンヌ」の最終セッションに参加。同所で仏大統領と会見される。午後、スタッド・ヴェロドロームでのミサ終了後、空港での送別式を経て、ローマに戻られる予定。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月23日