・「”通常兵器”の使用はあくまで防衛目的、民間人に向けてはならない」教皇、リヴィウのカリタス支援物資倉庫の破壊を強く非難

(2023.9.20 Crux  Senior Corresponden  Elise Ann Allen

 ローマ-ウクライナ西部リヴィウのカトリック国際支援団体・カリタスの支援物資備蓄倉庫がロシアのミサイル攻撃で破壊されたことに対して、教皇フランシスコは20日、バチカンで開催中の平和の関するシンポジウムに向けた書簡で、強く批判された。シンポジウムは、聖ヨハネ23世教皇の回勅「地上の平和」が発出60周年を迎えたのを記念して開かれたもの。

 教皇は「現代の戦争で、いわゆる『通常兵器』によって引き起こされる倫理的問題は緊急性に対処すべきもの。これらの兵器は防衛目的のみに使われるべきもので、民間人に向けられるべきではありません」と言明。「この問題についてさらに検討が重ねられ、計り知れない破壊力を持つ兵器が、余計な障害や不必要な苦しみをもたらさないように、使用を禁止することで合意されることを願っています」と語られた。

 また、国連総会に出席するためニューヨークを訪れていた国際カリタスのアリスター・ダットン事務局長は20日、 「昨夜、ロシアが、リヴィウのカリタス・スペス・ウクライナ倉庫を攻撃し、ウクライナの人々への支援物資300トンを破壊しました。これは、非道な行為であり、国際人道法への重大な違反である」と述べた。

 *国際人道法=第二次世界大戦後に生まれた概念。1971年の「武力紛争に適用される国際人道法の再確認と発展のための政府派遣専門家会議」で初めて使われた国際的な諸法規の集合を指す。

 現地ウクライナのカリタス・スペシュ支部長のヴャチェスラフ・グリネヴィッチ神父によると、このミサイル攻撃で、カリタスの職員などに人的被害はなかったが、「倉庫とその中にあった食料、医療キット、発電機、衣服などすべてが破壊され、焼失しました。倉庫に置かれた援助物資の中には、攻撃を受けたその夜に、カリタス・ポーランドから着いたばかりのものもあり、ロシアの度重なる攻撃で困窮した約600世帯に配布しようとしていたところでした」という。

 カトリック・リヴィウ教区ののエドゥアルド・カヴァ補助司教は、「この大型倉庫は、ロシアの攻撃が始まって以来、1年半にわたって、ウクライナ東部の被災者たちへの人道支援物資の配布のために使われてきました。そのすべてが破壊されたのです」と嘆いた。

 ロシア軍の軍事侵略が長期化する中で、ウクライナ各地の人道支援物資備蓄倉庫への攻撃も増えており、 5月にはオデッサとテルノーピリの2か所で、人道支援団体の倉庫が襲撃されている。これらも含めて、民間の施設、地域への無差別攻撃でロシアは、戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所によって捜査を受けている。 国連は既に2022年4月に、ロシアを国連人権理事会から追放し、昨年10月までにウクライナで民間人の殺害、誘拐、無差別爆撃、性的暴行の容疑で捜査を続けている。

 教皇は、このシンポジウムにあてた書簡で、「私たちの世界が断片的に展開されている第三次世界大戦の下にあり続け、特に今、(ロシアの一方的軍事侵攻で引き起こされた)ウクライナ紛争の最中において、このシンポジウムが開かれるのは時宜に適ったもの」とし、通常兵器による残虐な破壊行為に注意が集まる中にあっても「 核兵器の脅威がなくなったわけではない。(それどころか)現在の瞬間は、世界が核戦争に巻き込まれる寸前までいった『1962年10月のキューバ危機』、回勅「地上の平和」が出される直前と、不気味に類似しています」と指摘。

 そして、「キューバ危機から70年余りたった今、核兵器の数と威力は、当時とは比較にならないほど大きなものとなり、新兵器の開発投資も増え、化学兵器や生物兵器の開発・使用禁止という長年の合意さえも、危機にさらされている」と警告。ヨハネ23世教皇の言葉を使って、次のように、訴えられた。 

 「国家間の関係は、個人間の関係と同様、武力によってではなく、正しい理性の原則、つまり、真実、正義、精力的かつ誠実な協力の原則に従って規制されねばならない」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月22日