・教皇、科学アカデミー会員に、コロナ感染阻止に貢献した前台湾副総統、疫学者を任命

(2021.8.2 カトリック・あい)

 教皇フランシスコが7月30日付けで、教皇庁科学アカデミーの通常会員に、台湾の前副総統で疫学者の陳建仁教授を任命した。

 バチカン広報局の発表では、陳教授を「the Academia Sinica in Taipei, Taiwan,(台湾の台北にある中国アカデミー)の疫学講師」とする一方、経歴では「In the Government of the Republic of China,(中華民国政府で)…副総統…」とするなど、肩書について微妙な使い分けをしている。

 バチカンは台湾と国交をもつ欧州で唯一の国。中国国内での司教任命に関する暫定合意以来、バチカンの中国寄りの姿勢に台湾が懸念を深める一方で、中国政府・共産党によるバチカンの台湾との外交断絶を目指す動きが強まる中で、婉曲的にバランスを取ろうとするバチカンの外交戦略もうかがえるようだ。

 陳教授は、大聖グレゴリウス勲章エルサレム聖墳墓騎士団の「騎士」の称号を持つ、熱心なカトリック信者。バチカン広報局発表によると、陳教授は1951年6月6日、台湾・旗山生まれの70歳。台北の国立台湾大学で学んだ後、米国に留学し、ジョンズホプキンス大学で人類遺伝学と疫学の博士号を取得。中華民国政府での公職としては、保健相、国立科学評議会担当相、2016年から昨年まで副総統を務めた。専門は、疫学、予防医学、公衆衛生、および人類遺伝学で、2011年から2015年まで台北の中央研究院の副院長を務め、現在も同研究員教授。

 アジア地域のカトリック系有力インターネット・メディアUCANewsによると、陳教授は、蔡英文総統の与党民主進歩党に入党する前に、中国最古のカトリック大学、 輔仁大學の理事を務めていた。疫学の専門家、そして保健相として、2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)の発生を封じ込める独創的な役割で世界的に名を知られるようになった。副総統任期末期に発生した新型コロナウイルスの世界的感染では、SARS対策の経験者として、専門家として、感染拡大阻止のために助言や発信を積極的に行い、政府の政策にも積極的に貢献した。

 また、今年1月の中東のメディア、アルジャジーラとのインタビューで、「2019年12月に武漢で新型コロナ・ウイルスが最初に検出された際、中国当局が世界保健機関(WHO)に通知し、専門家チームに調査を許可していたら、ウイルスの世界的大感染は阻止された可能性がある」と述べ、「透明性と開放性は感染症の封じ込めにとって非常に重要」と強調していた。

 

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2021年8月2日