☩南スーダン訪問初日:「流血を止めよ、今が平和構築の時だ」-大統領はじめ各界代表者たちに

*「私は和解と平和の巡礼者として来た」

 

*指導者たちに電話で直接訴える

 

また教皇は、この会見の後、南スーダンの闘いの先頭に立っている政治指導者たちに直接電話をかけ、「この若い国の父母たちは、自分の息子たち、娘たちにとって必要な平和と繁栄な源として、社会の在り方を刷新するよう求められています。彼らに必要なのは”覇者”ではなく、父親です。 絶え間ない崩壊ではなく、発展に向けた着実な歩みが求められているのです」と強調。

さらに、「この国の誕生に続く時代、辛い子供の時代が、平和な成熟につながりますように」と願われ、「あなたがたが奉仕するように召された人々の利益のために働くなら、彼らの息子たち、娘たち、そしてこの国の歴史に、あなたがたが記憶されることになる。未来の世代は、あなたの現在の行動に基づいて、あなたの名前を崇敬するか、記憶から消し去るかを判断するでしょう」と忠告された。

*「これ以上の流血、紛争、暴力、非難の応酬はあってはならない!」教皇は、大統領と副大統領に対して、直接、語りかけ、「人々が和平実現を渇望する中で、これ以上の流血、紛争、暴力、そして、誰にその責任があるかについての非難の応酬、破壊はあってはならない。平和を構築する時です! 戦争の時代を終わらせ、平和の時代を迎えましょう!」と強く訴えられた。
 そのうえで、「自分たちを真に公的な存在、人々のための存在として見るように」と勧められ、「 国家を主宰し統治する責任を任された人々は、公益に奉仕する義務があります。共同体社会に奉仕すること。それが権力の目的でなければならない」と強調。
 「自分の利益のために権力を利用したいという誘惑」に陥ること、「この国の豊かな資源を少数の者で占有」しようとすることに対して警告され、「豊かな資源はすべての人のためのものと認識されるべきであり、経済再建は、富の公平な分配と共に行われる必要があります」と強く求められた。

*「民主主義の根底は自己表現の自由、自由無くして正義はない」
 また講話の中で教皇は、この国の民主主義の在り方についても言及され、「民主主義の根底にあるのは、法と、法によって支持される人権、特に自己表現の自由に対する権利の尊重。自由無くして正義はありません」と言明。
 南スーダンの平和への道が惰性によって行き詰まらないように希望され、「今こそ、言葉から行動に移行する時。 ページをめくる時。緊急に、切望されている変革に取り組む時です」と指導者たちに呼び掛け、「平和と和解のプロセスには新たなスタートが必要です。 和平合意とロードマップを進める上で、理解が得られ、和平への歩みが進展しますように!」と希望された。
 さらに教皇は、「数多くの分裂と紛争によって傷ついた世界の中で、この国が『平和へのエキュメニカルな巡礼』を主催する国となったことは、とても有意義なこと。これは”方向転換”を意味します」とされ、「南スーダンが、穏やかな海で航海を再開する機会、二枚舌や日和見主義なしに対話を始める機会をもたらすでしょう。すべての人にとって、希望を取り戻す機会となりますように。憎しみ、部族主義、地域主義、民族の違い、という”汚れた水”に流されるのをやめる時が来たことを、国民一人ひとりが理解するようにしてください。今が、 未来に向かって一緒に航海する時です!」と強く願われた。

*「暴力、怒り、恨みから解放される唯一の道は『出会い』にある」
 教皇はまた、出席者に対して、互いに敬意を払い、対話、出会いの道を歩むよう呼びかけ、「あらゆる形態の暴力の背後には怒りと恨みがあり、あらゆる形態の怒りと恨みの背後には、癒されていない傷、屈辱、そして過ちの記憶があります」とされ、「これらから解放される唯一の方法は、『出会い』です。他の人を兄弟姉妹として受け入れ、一歩後退することになるとしても、彼らのために場所を空けることです」と促された。

*「和平に向けて、若者と女性の役割が重要だ」

 そして、このような態度は、あらゆる和平プロセスと社会の一致した発展にとって不可欠であり、「若者たちは、対立の蛮行から『活力ある出会いの文化』に移行するうえで、て重要な役割を担っています」、また「女性にも基本的な役割があり、政治生活と意思決定プロセスに一層、関与する必要があります」と指摘された。

*「分裂、暴力の土壌となる貧困の撲滅へ戦って」
 「未来の世代のために被造物を大切にする必要性」にも言及され、特に、暴利をむさぼるための森林破壊と闘う必要性を強調されるとともに、「資金の不公平な分配、金稼ぎの裏取引、利権政治、透明性の欠如」などの問題を挙げ、これらの腐敗を撲滅するために行動するように、憎しみ、分裂、暴力の土壌となる貧困と戦うように、と促された。 さらに、「どの文明国においても、国民、特に最も脆弱で不利な立場に置かれた人々をケアすることが差し迫った課題となっていますが、南スーダンにいる何百万人もの避難民についても、私の頭にあります」とされ、「紛争や強制移動の結果、家を追われ、生活の限界に追いやられている人は何人いることでしょう!」と嘆かれた。

*「これ以上、“死の道具”は必要ない!」

また紛争、戦争の裏にある活発な武器取引について、「不正な武器取引が国際条約で禁止されているにもかかわらず、南スーダンを含む地域の多くの国に武器が流れ続けている」とし、「この国には、これ以上、”死の道具”は必要ありません!」と訴えられた。

*「子供たちには、武器や労働の道具でなく、ノートや玩具を手に成長する権利がある」

 教皇は、南スーダンの政治指導者たちに、「適切な医療政策の策定、重要な社会インフラ整備の必要性、識字率の向上と教育の促進」を求められ、「アフリカ大陸と世界のすべての子供たちと同じように、南スーダンの子供たちも、武器や労働のための道具ではなく、ノートや玩具を手に持って成長する権利を持っているのです」と強調された。

 

*「南スーダンに和解と方向転換をもたらすように共に祈り、支える」

 講話の最後に教皇は、参加者たちに向かって、「これまで私が申し上げた言葉のいくつかは、粗野で露骨な印象を皆さんに与えたかも知れません」とされたうえで、今回の平和の巡礼を行う兄弟たちと共に、南スーダンが和解と方向転換を実現できるよう、心からの祈りと支えを約束され、次のように締めくくられた。

 「この国の命にかかわる進路が、暴力の洪水に圧倒されないように、腐敗の沼地に飲み込まれないように、貧困の氾濫で歩みを妨げられることのないように。 この地を愛する天の主が、この地に平和と繁栄の新しい季節を与えてくださいますように」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年2月4日