(2021.9.21 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen

ローマ発―教皇フランシスコは先週スロバキアを訪問された際、同国のイエズス会士たちと面談されたが、その中で、教皇は、「事実を知らずに侮辱する人たちに、私は時として我慢できなくなることがあります」と述べ、十分な事前取材もなく、一方的にご自分を批判するメディア関係者を暗に批判された。
また、「自分の教会共同体のことよりも、旧ラテン・ミサ典礼に愛着を抱く司祭たち」のような「過去に過度の郷愁をもつ教会の構成員たち」を「教会の逆行」の表われとして批判された。
*手術後も「まだ生きています」
教皇は、今回の東欧二か国訪問の初日、12日にハンガリーのブタペストでの会見の冒頭で、7月の大腸手術後の健康状態についての質問に、冗談を交え、「死んでほしい、と思う人もいますが、まだ生きています」と答えられた。イエズス会士たちとの面談では、「私の病状が公式発表よりも深刻だと考えている(高位) 聖職者たちの間で、会合さえ行われていたことを知っています。 彼らはコンクラーベ(教皇選挙) の準備をしていたのです」 と語ったうえで、「急ぐな! 私は大丈夫です。神に感謝」と付け加えられた。
*「私を悪く決めつけるテレビ放送網があり、司祭もいる」
また面談で、あるイエズス会士が「教皇についての評価が分かれているようです。『異端だ』と思う人もいれば、『理想的だ』とする人もいます。ご自分を疑いの目で見る人たちに、どのように対処されているのですか」 と尋ねたのに対しては、教皇は自分を「悪く言い続けることに躊躇しないある大手カトリックテレビ・ネットワーク」を挙げ、「私は罪人なので、 個人的には攻撃や侮辱に値します。でも、教会はそれに値しない。それらは悪魔の仕業です。そのように、彼らの何人かに、私は言いました」と語られた。
教皇が名指しされたテレビ局が具体的にどこかをおっしゃることはなかったが、教皇自身と彼の決定に批判的な評論を一貫して放送してい るアメリカの保守派のカトリック系テレビEWTN(Eternal Word Television Network)を指している、と見る関係者が多いようだ。
さらに教皇は、「私にについて意地悪な発言をする司祭も多い。まともな対話をせずに、決めつけるような言い方を聞くと、このような人々に時々我慢できなくなることもあります」とされ、「しかし、それに対して、私は何もできません。だが、私は、彼らの考えや幻想の世界に引き込まれることなく、進みます。だから説教をすることを好むのです」と説明された。
*「旧ラテン・ミサ典礼への執着は、過去への逆行」
また、「聖性のようなテーマについて、もっと話されだらどうですか」 と諭す人もいるが、 「私はいつも社会問題について語り、”共産主義者”だ、と言われています。しかし、聖性に関する使徒的勧告『ガウデーテ・エト・ エクスルターテ(Gaudete et Exsultate)』も、私が書いたものです」と述べられた。
教皇は7月に、旧ラテン・ミサ典礼に対する制限を強化する自発教令を出されたが、これによって、教会が「ベネディクト16世とヨハネ・ パウロ2世の真の意図に立ち返るのに役立つことを期待している」と語られた。そして、 今回の決定は、 世界中の司教たちとの協議を経て行われたものであることを強調し、「司祭に叙階されて1ヵ月後に、 司教のところに行って、旧ラテン・ミサ典礼によるミサを捧げたい、と言ってくる若い人たちがいますが、それは教会が過去に逆行していることを示す現象です」と批判された。
また、ある枢機卿との話した際に、枢機卿が叙階したばかりの、司祭の何人かが「(旧ラテン・ミサ典礼による)ミサを司式するためにラテン語を学ばせてください」と許可を求めに来た、と聞いたことを思い起こされた。
「その枢機卿は、こう答えたそうですー『教区には多くのヒスパニック系の人たちがいます。彼らに説教ができるようにスペイン語を学びなさい。スペイン語をマスターしたら、私のところに来なさい。教区にはベトナム人が何人いるか教えてあげるから、 ベトナム語を学んでもらいましょう。ベトナム語をマスターしたら、ラテン語を学ぶことを許可しましょう』と」。 教皇は、「この枢機卿は、このような司祭たちを”地上”に戻らせたのです」 と語られた。
*「決定し前進する時は、忍耐、祈り、そして思いやりが必要」
さらに、教皇は、「自分が下す決定は、”革命”を起こしたいからするのではなく、 私自身がしなければならないと思うから、するのです。それには多くの忍耐と祈り、そして多くの思いやりが求められます」 と述べた。
また、教皇に近い年齢のあるイエズス会士が、「 教会の中には、『過去に戻りたい』と思っている人や、『 以前のやり方に安心感』を求める人がたくさんいるようですが」 と聞いたのに対しては、「確かにたくさんいます。今日の教会は『後ろ向きのイデオロギー』に悩まされている。それは、『心を植民地化』するイデオロギーです。『 イデオロギー的植民地化』の一形態なのです」とされる一方で、「これはそれほど普遍的な問題ではありません。むしろ、特定の国の教会に特有の問題と言えます」と話されたが、具体的にどの国を指しているのか明らかにされなかった。
さらに「過去に目を向けることは、安心感を得たいがための手段ですが、(注:そのような後ろ向きの姿勢で)『私たちの顔を見て真実を語ってくれる神の民』の前で司式することは 、私たちを怯えさせます。司牧的な行いの中で、前に進むことを恐れさせます」 と警告された。
*再婚した夫婦への対応、LGBT、そして「ジェンダー・イデオロギーによる植民地化」
教皇はまた、家庭をテーマにした2014年、2015年の二度にわたるシノドス(世界代表司教会議)での議論に関して、「『離婚して再婚した夫婦が、地獄に落とされているわけではな い』ということを理解してもらうために、 多くの努力が必要でした」と振り返られた。
さらにLGBT(性的少数者)のコミュニティに言及した教皇は、「 性的多様性を持つ人々に同行することも、私たちは恐れています。パウロ6世教皇が語られた『岐路』や『道』を恐れています。この瞬間こそ悪、すなわち『頑迷』と『聖職者主義』に道を求めることなのです」と語られた 。
このスロバキアのイエズス会士たちとの面談ではこの他、ユダヤ教とキリスト教の対話、移民や難民に対する恐れ、 そして教皇が言われる「イデオロギーによる植民地化」圧力など、幅広いテーマで意見交換が行われ、イデオロギーに関しては特にジェンダー(社会的・文化的につくられる性別)イデオロギーが話題になった。
イタリアでは、 憲法における性的指向に基づく差別を受ける人に対する保護を拡大し、 学校の教科へのジェンダー理論の取り入れを目的とし た法案「ddl Zan」が議論されている。同法案に対しては今夏、バチカンが「憲法で保障されている信教の自由を侵害する」として法案に反対する「口上書」(正式な外交文書) を提出という異例の態度表明をして、 世界的に注目されている。
これに関連して教皇は、「イデオロギーは具体的な形をとらないため、常に悪しき魅力を持っています。私たちは今、”イデオロギーの文明”の中に生きています。それは根源から暴かねばならない」と述べ、 ジェンダーのイデオロギーを特に「危険です」と指摘された。なぜなら、人の具体的な生活に関して抽象的な主義主張であり、人が男性か女性かを抽象的に自由に決められるかのように見えるから」であり、「 抽象的だということは、私にとって常に問題なのです」とされた。
ただし、教皇は、同性愛や同性婚の人たちの問題を、ジェンダー・イデオロギーと区別し、「同性愛のカップルがいたら司牧的な導きをし、キリストとの出会いの中で前進するようにできます」とも語られ、「私が『イデオロギー』について語るとき、『人々の具体的な生活や現実の状況』ではなく、『何でも可能な抽象的な概念』を意味するものとして語っているのです」と念を押された。
(翻訳「カトリック・あい」ガブリエル・タン、南條俊二)
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