米英独の三国が主催した国連の特別インターネット・イベントで参加18か国が中国の新疆ウイグル自治区におけるウイグル人ジェノサイド(大量虐殺)に対し国連が続けてきた沈黙を破ることを誓った。
今週開かれたこの会合には、各国の大使、市民グループ、学者、ジャーナリストなどが出席、同自治区における中国政府・共産党によるウイグル人に対する深刻な人権弾圧、迫害の現状について意見を交換し、今後の対応について話し合った。
中国政府は、この会合が開かれる以前から、「わが国の内政に不当に干渉するもの。主催者たちは中国との対立をかきたてることに夢中になっている」と批判、国連加盟国に参加しないよう呼び掛けていた。
このイベントにウイグル人の代表の一人として参加したジュワア・トティさんは、学者の父、イルハム・トティ氏が”分離主義者”の烙印を押され、終身刑に処されている実情を報告した。
トティ氏は、8年前に空路米国に向かう途中で北京空港で逮捕され、裁判にかけられ、2017年に終身刑の判決を受けた。ジュワアさんによると、トティ氏が有罪とされたのは、漢人とウイグル人の対話を促進し、すべての人々の宗教的および文化的信念の自由の保障を訴えたことだった。彼女は「父からは、この4年間、連絡がありません。逮捕された後、10日間監禁され虐待を受けた後、いったん自宅軟禁の措置を受け、しばらくして、武装警察によって強制収容所の闇に放り込まれた、ところまでは知っていますが、今、生きているかどうかも分かりません」と訴えた。
(写真右は、ジュワア・トティさん)
ジュワアさんはさらに、新疆ウイグル自治区でのウイグル人の実態について、「多くの人が駆り集められ、収容所に閉じ込められ、強制労働をさせられたり、厳しい懲役刑を宣告されたりしています。まさに、国家が組織的に行っている人権侵害です」と述べ、 「家族は引き裂かれ、精神的な苦痛のどん底に落とされています」と指摘。
だが、このようなことを、これまでトランプ前米大統領との会見など、様々な場で繰り返し訴え続けてきたにもかかわらず、 「現状に何の変化も見られません」としたうえで、「現在行われている残虐行為を即刻止めねばなりません。私の父を含めたウイグルの人々の運命は、国際社会の手に委ねられているのです」と、イベント参加者たちに改めて積極的な協力を求めた。
米英独から参加した国連常駐代表(国連大使)たちは、深刻化している人権侵害の現状について概説し、中国北西部地域におけるウイグル人とトルコ人のイスラム教徒たちに対する残虐行為の事実は「反証が不可能」であることを確認した。
英国のバーバラ・ウッドワード国連大使は「あらゆる事象が、特定の民族グループに対する組織的な抑圧が大規模に行われていることを示している」と語り、各国の代表に、国連高等弁務官が中国政府に「この地域への『即時の、意味のある、自由なアクセス』を許可するよう求めることを要求。「この地域へのアクセスを妨げていることに、強い疑問を感じます。人間の権利と価値、国連憲章の核心にある諸原則を堅持せねばなりません」と訴えた。
米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使は「世界人権宣言の基礎は『個人』にあり、『国家』ではありません」とし、「今、虐待されている人たちは『犠牲者』ではなく『英雄』です。私たちも、中国政府が新疆ウイグル自治区での大量虐殺と人道に対する犯罪行為をやめるまで、発言し続けることを誓う」と強調した。
ドイツの国連大使クリストフ・ホイスゲンは、すべての国連加盟国に対し、「ウイグル人たちが自由に暮らし、信教と言論の自由を保障されるまで、力を合わせて働き続けよう」と呼びかけた。
人権NGOのHuman Rights Watch (HRW)や Amnesty International, World Uyghur Congress(WUC)の代表は、新疆ウイグル自治区における中国政府・共産党の行為を口をそろえて強く非難。 HRWのケネス・ロス事務局長は、中国が国連事務総長に対して圧力をかけるなど、国連の関係者、機関をこの問題について沈黙さようと懸命になっていることを指摘し、このイベントに肝心のミシェル・バチェ国連高等弁務官が参加していないことに強い疑問を呈した。
Amnesty Internationalのアグネス・カラマール事務局長も、「国連高等弁務官事務所、国連事務局、そして、多くの国連加盟国の、この問題に対する沈黙、恐れ、臆病さは、率直に言って受け入れらません。彼らは自分たちの役割に背いている」と批判、中国による圧力に屈することのないよう、関係機関、各国関係者に訴えた。さらに、国連が、こうした人道的犯罪を調査する国際的なメカニズムを作るための特別会合あるいは緊急討議の場を招集するよう要請。 「この問題に黙り続け、あるいは見苦しい譲歩をしていることが、中国の姿勢を大胆にしている。彼らは人権保護の体制を傷つけ、国連全体を弱体化させ、中国に対して私たちが果たすべき義務を怠っている」と指摘した。
国連の少数民族問題特別報告者(国連人権 理事会から任命され、特定の国における人権状況や主題別の人権状況について 調査・監視・報告・勧告を行う専門家)、フェルナンド・デ・ヴァレンヌ氏は、新疆ウイグル自治区などにおける残虐行為の実態を調べる調査団派遣の緊急の必要性について発言することを、国連関係者が恐れ、ためらっていることを非難。
「煙があるところには火がある。今、数え切れないほどの人々に影響を及ぼす大きな火災が発生しているのです。被害を受けている人たちの大半は少数派、そのほとんどはイスラム教徒、ウイグル人です」と述べ、「国際社会全体と国連が、自分たちで声を上げることのできない人たちを守る時が来ている」と強調した。
そして、18の国々のイベント参加者ートルコ、北欧およびバルト諸国、フランス、カナダ、日本、スロバキア、オーストラリア、オランダ、ルクセンブルグなどー全員が、中国北西部での人権侵害を非難し、これを優先度の高い問題としてこれに対処する緊急の行動を求めた。
反論する中国の郭嘉君・国連大使
こうした中で、唯一反対意見を述べたのは、中国の郭嘉君・国連大使で、「真実を明らかにする時が来た。わが国新疆ウイグル自治区での、いわゆる”残虐行為”の告発は、今世紀最大の虚偽であり、このようなことは決して起きていない」と反論。「我々に、隠すことは何もない。全ての人々が来るのを歓迎するが、虚偽に基ずく調査には反対だ。新疆ウイグル自治区は素晴らしく、反映している地域であり、中国封じ込めのためにこの地域を利用する試みは、失敗する運命にある」と主張した。
これに対して、WUCのドルクン・イサ議長は、ウイグルの人々を代表して、中国は、自らの残虐行為を否定し、世界の広範な地域を力で抑えつけようとしている、と改めて批判。「こうした体制の下で苦しんでいる人々のために、皆さんに、行動を起こすようにお願いしたい。ウイグルの人々だけでは、今行われているジェノサイドを終わらすことができないのです」と訴えた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」)