・教皇、性的虐待隠ぺいを疑われるポーランドの大司教の辞表を75歳の誕生日に受理

(2020.8.14 カトリック・あい)

 教皇フランシスコは13日、ポーランド・グダニスク教区長のスラヴォイ・ジジェク・グロズ大司教から出されていた辞表を受理、同教区の暫定管理者としてエルブロンク教区長のヤセク・エジエルスキ司教を任命した。

 この人事を発表したバチカン広報は、以上のこと以外、一切のコメントを出していないが、13日は、グロズ大司教の75歳の誕生日だった。古都グダニスクの教区長という同国のカトリック教会では極めて権威の高い地位の大司教の辞表を、”司教定年”の75歳を迎えたその日に教皇が受理するのは、極めて異例。聖職者による性的虐待と高位聖職者によるその隠ぺい問題が深刻になっているポーランド教会の”隠蔽の文化”に幕を引こうとする断固とした姿勢を示したもの、との見方が教会関係者の間に出ている。

 日本でも、”規模”や”程度”に差はあるものの、聖職者による性的虐待の被害者からの訴えや多額の詐欺被害に責任者として適切な対応をしていないとされる教区の代表が、間もなく”定年”を迎える例があり、教皇の今回のポーランド教会問題に関係した対応が、どのように影響するか注目される。

 国際通信社APによると、ポーランドにおける聖職者による性的虐待とグロズ大司教による隠ぺいは、昨年、同国で上映されたドキュメンタリー映画「Tell No One」で取り上げられ、大きな問題となった。同映画で、大司教は、幼児性愛者として知られたフランシゼク・シブラ神父-同国の”英雄”、連帯のリーダーだったレヒ・ワレサ氏の指導司祭だった-の葬儀の席で、彼の性的虐待行為を知りながら、賞賛しているところが描かれている。

 同神父の性的虐待の被害者たちは、性的虐待を行なった司祭たちを擁護したとしてグロズ大司教を含む同国の司教24名のリストを添付した告発状を、昨年の聖職者性的虐待問題に関する世界司教協議会会長会議の前に、教皇に提出している。

 第二次世界大戦後、長い間、ソ連支配下の共産政権のもとにあったポーランドでは、カトリック教会は道徳的な権威としての立場を続け、1980年代のポーランドのソ連支配、共産党支配からの離脱の運動の中で、精神的な拠り所としての役割を果たし、1978年に初のポーランド出身の教皇、聖ヨハネ・パウロ2世が登場、東西冷戦崩壊の精神的推進力となったことで、その権威はピークに達した。

 だが、最近の聖職者による広範な性的虐待が露見、しかも、高位聖職者の複数がその隠ぺいを図り、被害者の信徒たちを肉体的だけでなく精神的にも深く傷つける事態が深刻化するに至って、教会の権威は急速に低下、聖ヨハネ・パウロ2世についてさえも、生前の聖職者性的虐待問題への対応の責任が問題にされる事態となっている。

 

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2020年8月14日