・ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

(2023.6.14 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom

ナイジェリアのイスラム過激派が”大統領の退任祝い”にキリスト教徒700人を殺害と、人権団体が報告

約700人のキリスト教徒を殺害したする報告書を明らかにした。

行使したとして告発されていたが、<詰める>「ナイジェリアのイスラム過激派指導者

 ヤウンデ(カメルーン)発 – ナイジェリアの有力人権団体が12日、イスラム教徒のフラニ族の遊牧民を主体とした過激派が5月29日に退任した同国のブハリ前大統領への「退任祝い」として約700人のキリスト教徒を殺害したとする報告書を明らかにした。

 「国際自由人権協会」と「法の支配協会」がCruxに送った報告書によると、ブハリ前大統領は 2015年からの任期中に、反キリスト教、親イスラムの政策を推進するために大統領としての権力を行使したとして告発されていたが、「ナイジェリアのイスラム過激派指導者(である大統領)が政権を去る機会を狙って、フラニ族過激派が 700 人以上の無防備なキリスト教徒を虐殺した」としている。州ごとの殺害された内訳は、ナイジェリア中東部のプラトー州で350人、ベヌエ州で190人、中北部のカドゥナ州で100人、中部のナサラワ州で62人、タラバ州で40人、ボルノ、ヨベ両州で40人、同国と隣接するニジェールで50人という。

 フラニ族は、北西はモーリタニアから東は中央アフリカまで西アフリカの多くの国に分布する民族遊牧民を起源とし、現在でも牧畜を営む者が多いが、 2000年代以降、ナイジェリアのカドゥナ州で農耕民のキリスト教徒との間で土地利用をめぐる衝突が始まり、しばしば暴力事件に発展し、双方に多数の死者が発生している。 国際キリスト教人権監視機構の調査では、フラニ族の過激派は「過去数年間でボコ・ハラムよりも多くのキリスト教徒を殺害し、キリスト教徒の農民を追い出している」と報告されている

 12日に出された「国際自由人権協会」と「法の支配協会」の報告書は、「2023年4月12日から6月12日までの60日間では、1100人以上の無防備なキリスト教徒がナイジェリア政府の支援するイスラム過激派によって殺害され、2023年1月1日から6月12日までの160日間では2150人のキリスト教徒が殺害され、1400人以上が拉致されそのうち140人が、 生きて家族の元に帰れなくなる恐れがある」。さらに、「4月12日から6月12日までの60日間に100の教会がイスラム過激派によって破壊され、聖職者20人が襲われている」としている。

 この報告書の前、4月10日に、ナイジェリアで2009年の”イスラム蜂起”以来、1万8100の教会と2200の学校が理不尽に焼き払われ、少なくとも5万3350人のキリスト教徒が殺害された、という報告書が出されており、それによると、フラニ族過激派による暴力行為の多くが集中したカドゥナ州では、ナシル・エル・ルファイ前知事統治下の8年間で、少なくとも3万1350人のキリスト教徒が切り殺され、200人以上の聖職者が襲われた襲撃された。また、イスラム教徒穏健派も同期間に約3万4000人が殺害された、という。

 また、報告書は、主にナイジェリア北部に住む5000万人以上のキリスト教徒が「キリスト教徒であるという理由でイスラム過激派による深刻な脅威」にさらされ、「1400万人が家を追われ、800万人が殺害を避けるために家からの避難を強いられている… 約500万人が避難民となり、ナイジェリア国内の国内避難民(IDP)キャンプや地域や隣接する準地域の国境にある難民キャンプに強制収容されている」と説明している。

 そして、「キリスト教徒とキリスト教会に対する迫害の責任は、ブハリ前大統領とカドゥナ州エル・ルファイ前知事の「過激なイスラム主義」にあると糾弾。エル・ルファイの最近の言動が容疑を裏付けるものとして引用されている。入手されたビデオ録画で、カドゥナ州前知事は「2015 年以来、カドゥナ州における完全なイスラム支配を再現することに成功し、ナイジェリアをイスラム国に変貌させることに成功した」と誇っており、最終的にはイスラム教徒によるイスラム教徒のための大統領の誕生に至った」と報告書は述べている。

 さらに、カドゥナ州を含むナイジェリアの中部地域でのキリスト教徒の大量殺害は「慎重に計画され、組織的に実行され、十分な資金が提供された”国家聖戦プロジェクト”であり、 バシル前大統領の残虐な治世(1989~2019年)のもとで行われた」と報告書は述べ、「大量虐殺と人道に対する罪を犯した」としてエル・ルファイ前知事とブハリ前大統領らの処罰を主張、「英国政府は、1998年国際刑事裁判所規程の当事国として、エル・ルファイ、ブハリ、ブラタイ、ムサ・ダウラ、アラセ、アルカリ・ババ、およびその他の現役及び退任したナイジェリアの治安に責任を持つ政府高官らの処罰が確実にすべきである」と元宗主国である英国に要求。「英国政府は… 『民主的で人権尊重する国家』として世界に誇る以上、陰惨で卑劣な人権侵害の加害者たちを容認する国と見なされることはできないはずだ」と訴えている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年6月14日