・オーストラリアの大司教、幼児性的虐待隠蔽で有罪(Tablet)

Archbishop found guilty of concealing child abuse

Archbishop Philip Wilson leaves Newcastle Local Court on May 22, 2018. He has been found guilty of concealing historical child sexual abuse
AAP Image/Peter Lorimer

(2018.5.22 Tablet  Mark Brolly)

 オーストリアのニューキャッスル地方裁判所のロバート・ストーン治安判事が22日、アデレードのフィリップ・ウイルソン大司教(67)に対して、同僚司祭による幼児性的虐待を隠ぺいしたとして、有罪判決を下した。

 判決主文は59ページにわたり、その中で、ウイルソン大司教は、同国ニューサウスウエールズ州のメイトランド-ニューキャッスル教区で司祭を務めていた1970年代に、同僚のジェームス・フレッチャー神父による幼児性的虐待を知っていたにもかかわらず、隠蔽した。

 大司教は、幼児性的虐待の隠蔽で有罪判決を受けたカトリック司祭としてはこれまでで最高位で、6月19日に二年を上限とする刑期が確定する。判事には刑の執行を猶予する判断が可能だが、検察側は禁固刑とすることを求めている。刑の宣告に出席することを条件に、現在は保釈中だが、2001年から南オーストラリア州の州都アデレードの教会の指導者だった大司教が現在の地位にとどまるかどうかは、まだ明らかでない。

 今回の裁判は昨年11月28日に始められる予定だったが、大司教がアルツハイマーであるとの診断が示され、現地の病院で改めて診察した結果、裁判に耐えられるとの医師の判断が出て、12月のクリスマス前から公判が続けられていた。

 有罪判決について、ウイルソン大司教は「はっきり言って失望している。判決理由をよく検討し、今後の対応について詳細に相談しなければならない。現段階では、それ以上のコメントは控えたい」と語った。

 オーストラリア司教協議会会長のマーク・コラリッジ大司教(ブリスベーン教区)も判決後、声明を出し、「ウイルソン大司教は本日、幼児性的虐待の訴えについて警察当局に告知しなかったとして有罪判決を受けた。大司教は、公判中、無罪を主張し続けてきた。彼が上訴するかどうかは、まだ明らかでない」としたうえで、「他の組織と同様、カトリック教会は幼児性的虐待の悲劇について多くを学び、子供たちや弱い大人たちを守るためのプログラム、政策、手続きを強化してきた。教会と司牧にとって、彼らの安全を確保することは極めて重要だ」と教会の幼児性的虐待問題に対する姿勢を改めて確認した。

 今回の判決にあたり、ストーン判事は、被害者の元侍者の少年(当時)がフレッチャー神父から性的虐待を受けたとする証言は真実であると判断できるとした。公判で、被害者の元少年は、同司祭が当時10歳だった彼に、罰を与えるとして性的虐待に及んだことを5年後の1976年に、当時イースト・メイトランドの聖ヨゼフ教会の先任司祭だったウイルソン現大司教に知らせた、と証言している。

 この証言に対して、大司教は1976年当時15歳になっていた被害者とのやり取りを思い出せない、と消極的にこれを否定したが、判事は「被害者には、そうしたやり取りについて嘘を宣べる動機も理由もない」とこの主張を退けたうえ、「大司教は被害者の家族を知っており、彼の訴えが信頼できることが分かっていた」とし、提訴は「教会とその評判を守ることを願っての事」と述べた。ただし、判事は、大司教がこの性的虐待に直接関わっていないこと、2006年に獄死したフレッチャー神父が彼の了解をえていなかったこと、については大司教の主張を認めている。

 所轄のニューサウスウェールズ警察のピーター・フォックス元警部は、これまで教会が神父の犯罪を隠していた、と主張し続けてきたが、教会内部の人間も応分の責任を取らねばならないことが明確になった、として今回の有罪判決を歓迎、「この判決は大きな転機になる。これまでは、証言をすることさえ難しかった。どれほど難しいが言い表すことができないくらいだ」とオーストラリアAPに語った。「この判決がバチカンに波を起こすと確信している」。

 聖職者による性的被害者の一人、ピーター・ゴガティー氏は、判決が出された22日は「オーストラリアの歴史で刑法に関わる最も重要な日となる」とし、こう語った。「子供たちを狼の群れに放り込むような組織を意図的に擁護するような人々を告発する司法の扉が開かれた。この国と他の国々のすべての被害者のために言いたい。このような被害をもたらした人々が償いをする日が来て、ほんとうにほっとしました。今回の判決で禁固刑が決まる方向にあることを歓迎しています。私たちは性的虐待を受けた子供たちについて話している、そして大司教はそのことを知っていた-だから、彼を禁固刑にすることを求めているのです」。

 ウイルソン大司教は1975年に司祭に叙階され、米国で博士課程の勉強をした後、メイトランド-ニューキャッスル教区で司牧活動をし、教皇ヨハネ・パウロ二世からシドニー南部、ウオロンゴン教区の司教に任命され、5年後にアデレード大司教に昇進。2006年から2012年までオーストラリア司教協議会の会長を務めた。

 (翻訳・「カトリック・あい」山田恵子・南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

 

 

 

 

 

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2018年5月23日