ドイツ司教団、前教皇下の旧指針によるミサ典礼書の新独語訳作業中止(Tablet)

(2017.10.9 Tablet  Christa Pongratz-Lippitt )

 ローマ・ラテン典礼書を忠実に‶翻訳‶することを命じたバチカン典礼秘跡省の2001年指針による独語の新訳作業を、ドイツの司教団が取りやめたことが明らかになった。独国司教協議会の議長、ラインハルト・マルクス枢機卿が明らかにしたもので、枢機卿はこの指針を‶袋小路‶と呼んだ。

 指針に従ったミサ典礼書の新訳はまだ同国の司教協議会の賛同を得ておらず、教皇フランシスコが(「カトリック・あい」注・2001年指針を否定する形で)9月に現地の司教たちに翻訳の主導権を委ねる旨の自発教令「マニュム・プリンチピウム(重要な原則)」を出したことから、この新独語典礼書が日の目を見ることはなくなったようだ。

 司教団は秋の全体会議の最終報告でこれについて触れていないが、マルクス枢機卿は会議後の記者会見でこの問題について「ドイツ司教団は、教皇フランシスコが9月に出された自発教令で‶すっかり楽に‶なり、教皇にとても感謝しています」と語った。

 さらに、2001年指針は「あまりにも視野が狭い」と常々考えていたといい、(英国の司教団が)新英語訳の作業をその指針に従って進めようとするのも、自分は「行き過ぎ」と思う、とローマ・ラテン典礼書に固執する姿勢を暗に批判し、何人かの英国の司教たちが自分に助言を求めてきたので、新英語訳の祈りの原案で試しに祈ってみたが、‶とても受け入れられない‶祈りの文句だったことも明らかにした。

 そして、枢機卿は「教皇フランシスコが現地の司教協議会により自由な現地語翻訳を認めてくれたことはとても喜ばしい」としたうえで、「ローマは教義にかかわる翻訳に責任があるが、様式に関する翻訳には責任はない」と強調した。さらに、ミサ典礼書の翻訳は(時代や社会の変化に合わせて)4,50年ごとに改定していく必要は認めつつ、現時点で、新独語訳の作業を急ぐ必要はない、との見方を示した。現在の翻訳は1976年にされたもので、「それほど悪いものではない」が、司教協議会の典礼委員会が次の会議で新独語訳への対応を話し合うと述べた。

 新典礼書の独語訳で最も議論を呼んだのは前教皇ベネディクト16世が特に要求し、2001年を”すべてにわたって”ではなく、‶多くの箇所で”適用するよう求めたものだった。“Gotteslob”(神の賛歌)と題する最新の独語典礼聖歌集2013年版には、(祈り方などを含む)ミサ典礼の進め方全般も入っており、ドイツ語圏の各国すべてで使用されているが、前教皇の要求した翻訳も含まれている。だが、300万部以上も印刷されたこの本には「新独語訳はまだ正式決定したものではなく、従来の独語版をすべての教会で使うことができる」という特別の注意書きが入っている。

 なお、英国では新英語訳で、これまでミサで使われてきた表現 “and also with you”を “and with your Spirit” とすることが議論を呼んでいるが、ドイツはフランスと同様に、これまでも英語で訳せば“and with your Spirit” という表現が使われているので、この部分に関する限り問題は起きていない。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

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2017年10月12日