イタリア南部カラブリア地方で”海中ミサ”を捧げるベルナスコーニ神父(2022.7.24 Credit: Screen capture.)
ローマ – 教皇フランシスコはこれまで信徒たちに、福音宣教をするのに教会の建物の中で人が来るのを待たず、”人々がいる場所”に出かけるように、と常々言われている。
では、猛暑の中でボランティア活動をしてきた若者たちのために、海水浴場の浅瀬でミサを捧げるのは、どうなのか。イタリアでは、単なる是非論でなく、司法の問題になっている。
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イタリア南部カラブリア地方の海水浴場の浅瀬で、浮きマットを祭壇にしてミサを捧げた神父が、現地の警察当局から「信仰告白に対する犯罪」の容疑で取り調べを受けている。この神父、36歳のマッティア・ベルナスコーニ神父が有罪とされた場合、米ドルにして2000ドルから6000ドルの罰金を科せられる可能性がある、という。
ベルナスコーニ神父は、ミラノ大司教区に所属し、若者たちに対する意欲的な福音宣教活動で知られ、有力なサッカー選手、ピアノとエレキ・ギターを演奏するロックグループの共同創設者でもある。
その神父が7月、ミラノ教区の若い信徒たち約20人のグループを率いて、カラブリア地方で反マフィアのボランティア活動に参加した。(注:カラブリアは、世界中に根を広げるイタリア4大マフィアのひとつ「ンドランゲタ」の本拠)ベルナスコーニ神父は、活動の最終日、24日に近くの浜辺でミサを捧げる、と若者たちに約束していた。
ところが、当日、浜辺の日陰のある場所は別のグループが既に使用しており、そばの森も同様だった。この浜辺、アルフィエーリ・デル・クロトーネーゼは気温が40度を超えており、砂は熱く燃えるようで、神父は、このような砂の上でミサはできない…。折よく近くにいたカップルから「”海中”でミサをなさりたいなら、祭壇のために浮きマットをお貸ししましょうか」と申し出があり、それを受けた神父は、グループの若者たちに腰の高さまで水に入るように勧め、近くにいて参加を希望した若者数人も加えてミサを捧げた。
この模様は、近くで”見物”していた何人かがスマホを使って動画を撮影、YouTubeやInstagramなどのソーシャルメディアチャンネルに投稿したため、たちまち大騒ぎに。このことを知ったカラブリアのクロトーネ教区とサンタセヴェリーナ教区はすぐに声明を出し、「こうした形のミサを捧げるためには、事前に地元の教会当局と相談しなければならない。ミサには、最低限の装飾と、ミサ聖祭に求められる象徴性が保たれねばならない」と神父を批判した。
地方検察官のジュゼッペ・カポッチャは、「ベルナスコーニ神父が宗教的信条についての法律の定めに違反した疑いで取り調べる」と言明した後、信じられないことに、捜査を”イタリア版CIA”、Digosの名で知られる諜報機関に渡した。
”事件発覚”を受けて、ベルナスコーニ神父はミラノ教区のサン・ルイジ・ゴンザーガ教会のウェブサイトに謝罪文を投稿。
「ミサ聖祭を陳腐化したり、他のメッセージに利用したりする意図はまったくありませんでした。単に、一週間にわたって(反マフィア)のボランティアに参加し、共に働いた若者たちと、最後にミサを捧げたのです。このミサの単純素朴さからみて、聖祭の神聖さを保つために十分だと判断しました」とする一方、「ミサにおいて、シンボルが重要であることは事実であり、それに値する配慮をしなかったのは、私の至らなさによるものです。私の善意を理解していただき、赦しを求める私の心からの願いを受け入れていただきたいと思います」と釈明した。
地元メディアによると、ベルナスコーニ神父の”海中ミサ”について、ミラノ教区の信徒たちの評価は分かれている。多くの信徒は、善意から出た彼の行為をたたえ、「ミサを捧げる場所が川であろうと山であろうとかまわない。重要なのは場所の設定ではなく、ミサに対する思いだ」としているが、一方で、「ベルナスコーニ神父は”スター”になりたいのだ。自分自身を撮影して喜んでいる… そういう彼のことをよく知っている」と個人攻撃めいた批判する声もある。
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この”事件”で、第一に考えさせられるのは、性的虐待から金銭の不正流用まで数々の刑法違反を犯したカトリックの司祭たちが有罪判決を受ける今の時代に、ミサの捧げ方を”犯罪事件”として取り調べることが、国家情報機関にとって本当に価値があることなのか、ということだ。さらに、礼拝が適切に祝われたかどうかの判断を当局がするのは、信教の自由の見地から問題があるのではないだろうか。
第二に、仮に”海中ミサ”をした神父の判断の甘さに問題があるとしても、信仰の実践に若者を巻き込みたいという誠実な願望を持っている若い司祭の意欲を削ぐべきなのだろうか。
これらの問いに答えることは、神学者でも司牧者でもない私の能力を超えている。しかし、ジャーナリストとして、少なくとも当局や教会の関係者に問うことはできると思う。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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