・米ワシントン首都教区、教皇の自発教令に従い小教区のラテン語ミサ禁止ー「信徒の半分失う」と反対の声も(Crux)

(2022.7.25 Crux National Correspondent  John Lavenburg)

 ニューヨーク発-シルベスター・ジュスティーノ氏は、ワシントンン大司教区で開かれた教区シノドスの聴聞の部で、「神の母・聖マリア教会」のグループが、大司教のウイルトン・グレゴリー枢機卿に「伝統的なラテン語による旧ミサ典礼」を禁止しないよう求めた時のことを覚えている。禁止したら「教区の信徒の半分を失う恐れがある」というのが、その主な理由だった。

 だが、その訴えは聴き入れられることがなかった。聴聞の部は5月に終わり、枢機卿は7月22日、「伝統的なラテン語ミサは、9月21日以降、小教区をもたない三つの教会に限定される」と発表した。

 教皇フランシスコは昨年7月、第二バチカン公会議以前のラテン語による旧ミサ典礼書の使用方法を再定義する自発教令「Traditionis custodes(伝統の守護者)」を発布。

 「第二バチカン公会議以前の旧典礼書の使用に関する判断は、世界の各教区の司教に任される」としたうえで、旧典礼でミサを行うグループは「典礼改革の正当性、第二バチカン公会議文書、教皇たちの教えを否定しないこと」と厳しい条件を課し、新たなグループの創設は認めず、小教区における旧典礼ミサを原則として禁止した。グレゴリー枢機卿は、この自発教令に沿って判断したものだ。

  だが、旧典礼を続けてきた神の母・聖マリア教会の信徒、ジュスティーノ氏は「枢機卿の決定は、私たちの教会にとって、悲しく、不幸なことだ。私たちの教区活動は大きな打撃を受けるだろう」と批判する。

 同教会の財務評議会で委員を務めるパトリック・ラリー氏は「13万ドルの赤字、というのは控えめな数字。これまで私たちは小教区の活性化に努めてきたが、それには20年から30年がひつようでした。私たちは、ワシントンンの繁華街で福音を伝え、多くの若者を引き付けてきた。その活動の原資は主として旧典礼ミサに参加する信徒たちの献金によっていたのです」と説明した。

 22日の枢機卿の決定について、デローザ神父は24日のミサ中の説教で、「信徒たちの間に不安を引き起こしています。枢機卿の発表後に、それぞれの小教区の事情に対応した措置が示されるかもしれませんが、今のところそのようなものはない」とし、教皇が提唱された”シノドスの道”、共に歩むことは素晴らしい。だが、『共に歩む』ことで、信徒にとって大きな変化が起き、教会を去らざるを得ない、としたら、”シノドスの道”で皆が声を上げ、耳を傾け合うこと、”シノドス=共働性”は何なのでしょう。価値があるものなのだろうか」と問いかけた。

 ラリー氏は、「私は、教会の財務評議会での務めを放棄するつもりはありませんが、このような状態では、この教会のミサに行くつもりはありません。それはおかしいことでしょうか」と語っている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月26日