・バチカンの前典礼秘跡省長官、「西欧の高位聖職者たちは世俗的価値観への批判精神を失っている」と批判‐同性カップル祝福に反対

(2024.4.15 Crux  Africa Correspondent  Ngala Killian Chimtom)

 ヤウンデ(カメルーン)発 – 教皇フランシスコの路線に批判的立場をとるロバート・サラ枢機卿(前典礼秘跡省長官)が15日の母国カメルーンの司教たちとの会議で、同性のカップルへの祝福を認める最近のバチカンの文書について、「この文書は、伝統的アフリカ文化だけでなく、カトリックの教えそのものにとって、受け入れることができない」と主張し、「西欧の高位聖職者たちは、世俗的な価値観に反対することに消極的。神経が衰弱している」と批判した。

 サラ枢機卿は「多くの西欧の高位聖職者は、世界に愛されることを夢見ている。 彼らは”抵抗の象徴”になりたいという欲求を失ったのだ」と述べ、「現代の教会は無神論の誘惑にさらされている。しかも『 知的無神論』ではなく、『流動的で実利的な無神論』の微妙で危険な精神状態に置かれている。このような無神論は、初期症状が良性のように見えても危険な病気。教会の言説を含む現代文化のあらゆる側面に浸透しているため、知的無神論よりも陰湿だ」と指摘。

 さらに、「教会とその指導者たちは、『流動的で実利的な無神論』という大きな嘘に順応し、それと共謀するという罪を犯している。キリスト教の信者であり、信仰を持っている人であるふりをしているが、実際には異教徒、不信者として生きているのだ」とし、「『流動的で実利的な無神論』は危険でとらえどころのない勢力であり、蜘蛛の巣に捕まった虫のように、逃げようとすると、もっと強く締めつけられる。サタン自身が仕掛けた巧妙な罠だ」と述べた。

 そして、「(西欧の)教会指導者たちは、この形態の無神論は人間の弱さとその欺瞞に屈する人間の傾向を食い物にしているが、教会に派閥や自称”救世主”が存在すべきではない。教会に”政党”を作ることも必要ない」とし、「信仰の精神を維持するということは、それを損なうものをすべて拒否し、神の御手をしっかり握りながら信仰のレンズを通してのみ世界を見ることであり、それが真の平和と優しさへの唯一の道。信仰の精神だけが真の兄弟愛を育み、欺瞞と紛争で荒廃した世界に平和をもたらすことができる」と強調。”西欧教会の歪曲”に直面する中で「信仰の統一」を守るよう、アフリカの司教たちに強く勧めた。

 またサラ枢機卿は、現在進んでいる”シノドスの道”の歩み、特にシノダリティ(共働性)に関する今年10月の世界代表司教会議総会の第二会期に言及し、昨年10月の総会第一会期を含めて、アフリカ教会の指導者たちが伝統的な教義と価値観を強く擁護してきたことを賞賛、「昨年10月の総会第一会期で、アフリカの教会は、神によって創造された男性と女性の尊厳を力強く擁護した。 その声は、西欧の圧力団体を喜ばせることだけを考える人たちから無視され、軽蔑されたが、アフリカの教会は、神権の真理と信仰の一致を守らなければならない。 アフリカの教会の声は、貧しい人々、素朴な人々、小規模な人々の声だ」と訴えた。

 さらに、「アフリカの教会は今日、神の言葉を守る上で重要な役割を果たしているが、西欧のキリスト教徒は富に惑わされ、啓蒙と現代性について誤った認識を持っているようだ」としたうえで、「真実を断片化し、相対主義の文化を推進する(西欧の)司教たちに対抗し、信仰の普遍性を守る者としてのアフリカの司教たちの立場」を強調、「神の真理の使者としての、アフリカの司教たちの役割」を賞賛し、「神はしばしば、強くて評判の高い人々を混乱させるために、一見弱くて人気のない人々を選ぶ」と述べた。

 同性カップルや”非伝統的関係”にある人々の祝福を認めるバチカンが最近出した文書「Fiducia Supplicans」に反対しているカメルーンの司教たちを称え、この文書に従わない、とする司教団の決定を「教会の統一とその教えの真実を守る大胆かつ預言的な行動」と評価した。そして、アフリカ・マダガスカル司教協議会連盟(SECAM)の声明を取り上げ、今回のバチカンの文書以前の同性愛に関する宣言、カトリック教会のカテキズム、聖書などを引用して、アフリカで同性愛カップルなどに祝福を与えない神学的および教義的な理由を説明した。

 カメルーン司教協議会会長のアンドリュー・ンケア・フアンヤ大司教はCruxの取材に対し、サラ枢機卿は「神が与えてくださった偉大な人物であり、アフリカのカトリック教会の象徴であり、彼が私たちの中にいることは素晴らしいこと」と述べ、「この世界にはあまりにも騒音が多いので、彼は私たちに沈黙の中で神と親密になるよう教えてくれた」と語っていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年4月17日