Pope Francis talks to a guest in the Paul VI Hall at The Vatican at the end of his weekly general audience, Wednesday, Dec. 14, 2022. (Credit: Domenico Stinellis/AP.)
(2022,12,18 Crux Editor Jhon L. Allen Jr.)
ローマ発=教皇フランシスコが17日、86歳の誕生日を迎えた。
教皇の生年月日に関して信頼できる記録が残っている過去1000年の間に123人が教皇職を務めたが、86歳を過ぎて在職した教皇は、フランシスコ以前では6人に過ぎない。
*歴代教皇266人中、86歳超えの8人のうちの1人に
それ以前の記録は信憑性に劣るが、キリスト教の最初の千年紀で現教皇よりも年上だった教皇はただ一人、681年に104歳で亡くなったアガト教皇である、とされている。つまり、フランシスコは、歴代の教皇266人のうち、86歳を超えて教皇職を務めた8人のうちの一人、統計的には無視できるとされる「3パーセント」に含まれる可能性がある、ということだ。
*”全力前進”の姿しか見えない
世間一般の通念からすれば、フランシスコの86歳の誕生日は「教皇職の終盤を迎えたという憶測」を呼ぶはず、ということになる。ところが、驚くべきことに、今現在、そのような話はほとんど聞こえない。それどころか、今のフランシスコからは”全力前進”の姿しか見えてこない。
(今年の夏の間、教皇がいくつかの予定をキャンセルし、枢機卿全員を集めた会議を開き、そして、自分から退任したベネディクト16世教皇の墓を訪れたことから、観測筋が「終わりが近い」熱に浮かされたことがあったが…)
教皇は、18日に公表されたスペインの新聞Abcとのインタビューで、自身の健康、とくにこれまで一年間、歩行を不自由にさせてきた右膝の関節炎について尋ねられ、以前からのセリフを繰り返したー「統治は『頭』でするもの。『膝』ではありません」。そして、「今は歩けるようになっています。『手術は受けない』という判断が正しかったことになります」と語っている。
*”辞表”は出しているが、まだ行使するつもりはない
同じインタビューで、教皇は、2013年3月の就任から間もなく、医学的に教皇としての役目を果たせなくなった場合に備えて、あらかじめ辞表を書き、当時の国務長官、ベルトーネ枢機卿に渡したことを明らかにした。
もっとも、今、それを行使するつもりが教皇にないことは明らかだ。実際のところ、バチカンは12月初めに、教皇が新年早々、1月31日から2月5日にかけて、コンゴ民主共和国と南スーダンを訪問されると発表している。
彼には、徐々に終盤に向かおうとする兆候がほとんど見られない。ここ数週間を見ても、カトリックの国際的援助機関の頂点に立つカリタス・インターナショナルの全面的な刷新、そして財務事務局のトップ交代などいくつかの重要な人事にも手を付けている。
このような動きに詳しいバチカンの複数の関係筋は、一連の取り組みは、教皇の名のもとに誰か別の人物がしているのでなく、教皇自身の判断でなされている、としている
*新年も野心的計画を立てている
さらに、教皇は、新年2023 年に向けて野心的な計画を立てている。
教皇のイニシアチブで昨年10月に始まった”シノドスの道”は2023年10月の世界代表司教会議通常総会で終わることになっていたが、教皇はこの通常総会を2024 年 10 月にもう一度開く”2セッション”制とすることを決められた。どうやら教皇は、”シノドスの道”を 後世に残していく要石とし、そうなることを最後まで見届けようと決心しているようだ。
コンゴ共和国、南スーダンに続く外国訪問では、昨年の夏の予定が延期を余儀なくされたレバノン訪問を、教皇は考えているだろう。 不測の事態がなければ、世界青年の日(WYD)世界大会出席のため、 8 月にポルトガルの首都、リスボン訪問の可能性も高いようだ。
*ウクライナ和平の可能性も捨てず、努力続けている
教皇はまた、ロシアの一方的な軍事侵攻で始まり、今も続くウクライナでの戦争とそれに関係する外交・地政学上の問題に熱心に取り組み、早期和平の実現に取り組み続けている。最近、ウクライナ戦争で、チェチェン人やブリヤート人などの少数民族に最大の残虐行為の責任があると示唆したことで、ロシア政府から抗議を受け、謝罪に追い込まれたが、ロシアとの通信回線は開いたままにし、対話による和平実現の可能性を残そうとしている。
また、教皇フランシスコのバチカン改革の青写真である使徒憲章「 Praedicate evangelium 」と、バチカンにおける金融汚職に対する「世紀の裁判」の遂行についても、自身で完了することを望んでいるようだ。
これはすべて、フランシスコのついての主要な業績に追加されることになる。
*在任期間は「いつ終わるか」でなく「どこまで続くか」であるべきだ
このような見方からすれば、フランシスコの教皇在任期間は、「いつ終わるか」ではなく、「どこまで長く続くか」ということであるべきだろう。フランシスがこれから 18 年生き、アガト教皇よりも現職として最高齢となる可能性は非常に低い。
だが、「ありそうもないこと」は、「不可能なこと」と同義ではない。教皇フランシスコによれば何でも可能であることに、これまで気づかなかった人がいたら、それは、注意をしてこなかっただけだ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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