・次期教皇の選挙権を持つ枢機卿たちは、皆が”同じ群れ”ではない(LaCroix)

(2024.2.10 La Croix  Robert Mickens)

 教皇フランシスコが任命した枢機卿が全員、教皇の教会改革のビジョンを完全に共有しているわけではない。したがって、彼の後継者が誰になるのかを予測するのは困難だ。

 「Birds of a feather flock together(同じ羽の鳥たちは群れを成す)」という英国の古い諺があるが、カトリック教会の枢機卿たちにそれが当てはまるだろうか?教皇フランシスコから”赤い帽子”を受け取った全員が、彼と同じ方向に進んでいるだろうか?

 最近起きた出来事は、教皇フランシスコが任命した枢機卿全員が、いわゆる”Francis bishops(フランシスコ司教たち)」、つまり彼の熱狂的な支持者である高位聖職者ではないことを、改めて印象付けた。

 バチカン教理省が昨年12月に発表した祝福の司牧的意味に関する宣言「Fiducia supplicans」で、同性愛カップルに祝福を与えることを条件付きで認めると読める方向を打ち出したが、アフリカを中心に多くの司教や枢機卿から、極めて否定的な反応が出されたのだ。

*枢機卿顧問会議のメンバーから、教皇の改革路線に反旗

 この宣言に対する否定的な反応の主役となったのは、キンシャサ(コンゴ民主共和国)のフリドリン・アンボンゴ・ベスング枢機卿で、教皇フランシスコから赤い帽子を授けられただけでなく、教皇の枢機卿顧問会議(C9)を構成する9人のうちの1人でもある

 64歳のカプチン・フランシスコ会士は、フランシスコが教皇に選ばれた2013年当時、コンゴ民主共和国の47の教区の中で最も小さい教区の司教だった。ヨハネ・パウロ2世教皇によって司教に叙階されて9年経っており、そのまま司教定年まで務めると思われていたが、教皇フランシスコは2016年に西部のムバンダカ=ミコロ教区の大司教に昇進させ、その15か月後、同国最大のキンシャサ大司教区の共同大司教に抜擢。8か月後に単独の大司教となり、さらに1年足らず、2019年10月に枢機卿に任命され、昨年3月に枢機卿顧問会議のメンバーとなった。

 アンボンゴ枢機卿はアフリカ・マダガスカルの司教協議会連盟(SECAM)の会長でもあり、会長としての立場から、昨年1月、アフリカ地域の全司教に対して、「アフリカ大陸では同性愛者に祝福はしない」ことを強い調子で宣言する声明を出した。

 教皇は、このアンボンゴ枢機卿の声明以降も、教会が同性愛者やその他の「障害」や「不規則な結合」をしている人々をもっと進んで受け入れるよう強く訴えてきている。

 他の教会改革関連の問題で、アンボンゴ枢機卿がどこまで教皇の路線に反対しているのか、一つ一つ検証してはいないが、重要なのは、「100%は同意していない」ということだ。

*次の教皇選挙で現教皇任命の枢機卿が圧倒的多数を占めるが…

 教皇フランシスコが任命したC9の他のメンバーはどうだろう?何人が本当に”フランシスコ司教”なのか? 特定の問題、あるいは教皇が教会を導こうとしている方向について、彼と根本的に意見が相違する枢機卿がどれだけいるだろうか? これは次期教皇を選ぶ際に重要な問題となって来る。

 教皇選挙権を持つ枢機卿の圧倒的多数はフランシスコが教皇になってから選ばれた人たちだ。だから、枢機卿たちが、フランシスコの路線を引き継ぐ人物を新教皇に選ぶのはほぼ確実、との見方も成り立つ。

 2月12日現在で、教皇選挙権を持つ80歳未満の枢機卿は130人。そのうち、フランシスコによる任命が95人、ベネディクト16世による任命が27人、ヨハネ・パウロ2世による任命が8人だ。枢機卿の中には高齢者も多いので、世界代表司教会議(シノドス)総会第二会期が始まる10月10日までに、9人が選挙権を失い、フランシスコ任命が91人、ベネディクト任命24人、ヨハネ・パウロ2世任命はわずか6人となる。

 選挙権を失う9人の中には、フランシスコの主要”同盟者”でC9メンバーの米国のショーン・オマリー枢機卿(6月29日に80歳)も含まれる。 フランシスコが枢機卿にしたパナマのルイス・ラクンザ枢機卿(同2月24日)。 ベネズエラのバルタザール・ポラス枢機卿(同10月10日)もそうだ。C9のもう一人の主要メンバー、インドのオズワルド・グラシアス枢機卿も12月24日には80歳を迎える。つまり、それまでにフランシスコが新たに枢機卿を任命しないなら、教皇選挙権を持つ枢機卿についてパウロ6世教皇が定めた120人の”上限定員”に戻る、という訳だ。

 

 

*ヨハネ・パウロ二世教皇の影は今も…

 

 そうした中で、ヨハネ・パウロ2世が任命した教皇選挙権を持つ枢機卿6人が、数は少ないながら、次の教皇選挙で決定的な役割を果たす可能性がある。6人のうち、オーストリアのクリストフ・シェーンボルン枢機卿は、教皇フランシスコの重要な”同盟者”だが、2025年1月下旬には80歳になる。既に司教を引退したボスニアのヴィンコ・プルジッチ枢機卿も78歳だが、他の4人はまだ75歳以下だ。

 フランスのフィリップ・バルバラン枢機卿(73)は、性的虐待事件への対応が不十分だったとして、約4年前にリヨン大司教の職を辞任したこともあり、教皇選挙に大きな影響力を持つとは思われない。 昨年4月に74歳でザグレブ大司教を退任したクロアチアのヨシップ・ボザニッチ枢機卿も同様である。

 だが、残る2人は、教皇選挙権を持つ枢機卿たちが(教皇としての適性を)詳しく調べようとする対象となるだろう。 どちらかが、新教皇の”妥協候補”として浮上する可能性がある。

 その2人は、ハンガリーのペテル・エルデ枢機卿とガーナのピーター・タークソン枢機卿だ。前者は、伝統主義者の中央ヨーロッパ人、後者は穏健なアフリカ人。

 エルデはまだ71歳で、エステルゴム・ブダペスト教区の大司教を21年以上、欧州司教協議会連盟(CCEE)の会長を2016年まで10年務め、教会法弁護士であり、穏健派から保守派までバチカンの当局者多くと強いつながりを持っている。教皇フランシスコの路線とは、全く異なる方向に舵を切りながらも、公の場で彼を批判しないように注意してきた。 昨年1月に”保守派の代表”と目されてきたジョージ・ペル枢機卿の一周忌のミサがローマで行われた際は、ミサを司式する予定をキャンセルしたが、それより前、ペル枢機卿の死後に発表された記事で、教皇を厳しく批判する姿勢を見せていた。

 75歳のタークソン枢機卿は現在、バチカンの科学アカデミーと社会科学アカデミーの総裁を務めている。 ローマで教育を受けた聖書学者で、ガーナのケープコースト教区の大司教を務めた後、ベネディクト16世にバチカンの正義と平和協議会の会長に任命され、同協議会がバチカンの機構改革で再編統合されて出来た「総合人間開発省」の初代長官を5年余り務めた。一昨年1月に73歳で長官職を解かれている。

 ともあれ、世界のカトリック教会の枢機卿たちは、すでに”ポスト・フランシスコ”に向けた用意を始めている。 バチカンの”観測者”たちは双眼鏡を手に、鳥たちがどの方向に飛ぼうとしているのか、を注意深く観察することになるだろう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.com(有料)でご覧になれます。
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2024年2月13日