ローマ 発– 1日から4日まで、世界60か国以上から男女修道会の代表300人強がバチカンに集まり、カトリック教会が来年に予定する「聖年」の準備会合を開いている。
Pope Francis greets a group of nuns during his weekly general audience at the Vatican, Wednesday, Jan. 15, 2020. (Credit: Alessandra Tarantino/AP file photo.)
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この会合は、さまざまな性的虐待スキャンダル、女性修道者への虐待と搾取の相次ぐ表面化や、修道者数の急激な減少などに悩まされ、修道会の危機が増大する中で開かれている。
米国の諸修道会に関する最近の調査によると、「修道者の減少は今後も続く」と予想しないアンケート回答者は、世界の508男女修道会のうち、438の修道会で、一人もおらず、米国の全修道会のうち87%で、新規誓願はゼロだった。
修道会のイメージは数々のスキャンダルの発覚によって傷ついている。最近では、元イエズス会士で昨年修道会から追放されたスロベニアのマルコ・イワン・ルプニク神父の事件があり、彼がスロベニアで設立を支援した共同体のメンバーを含む20人以上の成人女性から性的虐待の訴えを受けている。
そして、ペルーの教団であるSodalitium Christianae Vitae(SCV)は、その創設者ルイス・フェルナンド・フィガリが、さまざまな虐待でバチカンから制裁を受け、さらにバチカンによる捜査が続けられている。
このように修道会をめぐる危機が増大する中で、権力、権威の濫用の罪に照らして、修道者の「従順の誓い」を具体的に評価することをもって、修道会活動の改革を求める声が強まっている。これは、 数え切れないほど多数の修道会員や元会員が、神の代弁者だとする上長から身体的、心理的、精神的、感情的虐待を受けている、と訴えているためだ。
*「従順の誓い」への誤解が”虐待の扉”を開いている
ニュージーランド・オークランドにあるカトリック神学大学で組織神学を教えているRocio Figueroa氏はCruxに対して、「『従順の誓い』は明確に定義されておらず、これが特に信心深い女性たちに対する”虐待の扉”を開いている」と次のように語った。
「『従順の誓い』は修道士たちから始まりました。修道院長に対する従順です。 上長は神の代理でしたから、上長に従うことは神に従うことになります… 初期教会の修道士たちは、砂漠に行って非常に過酷な生活を送ろうとしたので、自分の意志や欲望を無にすることが、聖なる者となる方法だと考え、『聖なる道』を生み出し、『精神性』を生み出しました。 神に従うことにおいて、自分自身の”能力”を危険である、とみなすのです」。
そして、「このような考え方は、イエズス会の創始者、ロヨラの聖イグナチオによって強められました。彼は修道生活を始める前は軍人であり(その経験をもとに)、共同体の一員として『何があっても従わなければならない』という『盲目的な服従』を説きました」とし、「この従順の理解には問題があります。多くの修道者、特に修道女にとって、上司は神の声であり続け、『上司は私に命令し、屈辱を与えているが、彼らがそうしているのは、それが正義だからだ』と受け止めているのです」と指摘した。
「神の意志、神の計画に疑問を抱くつもりはありません。問題は、イエスの『従順』は常に父に対してであり、私たちに求められている『従順』も人間ではなく『神に対する従順』(だということが誤解されている)こと。宗教上の指導者、修道会の上長は、善良な者である場合にのみ神を代表すると言えるのです」と語った。
さらに、「私は、『従順』は、もっと『協力的』なものであるべきだと考えています。修道者たちは、上長から受けた指示について疑問がある場合、自由にそのことを表明できるようにすべきです」と強調。
「そうすることが、混乱を招くかもしれないし、議論も増えるでしょうが、それが人間社会であり、家族なのです。 物事は話し合って、最後までやり遂げるべきです… 『従順』とは「自分の意志や考えを、上長の指示に服従させることではあり得ない」としたうえで、Figueroa氏は「教会や、修道会の上長が権限を行使する別の方法が見つからない限り、行使することが非常に難しくなるでしょう。 私たちは教会や修道会で上長が権威を行使するための新しいモデルを作ることが必要になっている」と訴えている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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