・タイで、韓国で…外国人労働者が悲惨な状態に置かれている(LaCroix)

world/southeast-asias-migrant-workers-united-in-misery (タイで行われている新型コロナウイルス検査、12月22日にタイでは、感染者が新たに427人確認されたが、その大部分が、首都バンコク近郊、サムットサーコーン県の魚市場に関係している人々だという。 (Photo by Xinhua/Rachen Sageamsak/MaxPPP)

(2020.12.24 LaCroix Benjamin Freeman )

 二つの別の人々が関係する二つの別の国で起きた一見、無関係な出来事には、大きな共通点がある。それは、いずれも、東南アジアからの多数の移民労働者が日常的に直面している虐待と搾取を証明している、ということだ。

タイの州、サムットサーコーン県のプラスチック工場。最近、その地域では、ミャンマーからの移民労働者の間で新型コロナウイルス感染者が多発していたが、ある工場の経営者が12月22日夜、ミャンマー人労働者24人の移民労働者を車に乗せ、バンコク郊外まで行って、道路脇に置き去りにした。

 現地の警察幹部は「労働者たちは、『自分たちがどこに連れて行かれるのか知らされず、ただ雇用主の命令に従った』と言っている」と記者たちに説明した。工場経営者は、自分の工場でコロナ感染者が出るのを恐れて、彼らを追い出すことを決めたようだ。

 さらに翌日の23日、同じ工場で働いていた3人の移民労働者が放棄されたことが明らかになった。工場経営者は、州の封鎖規則違反などいくつかの罪状で取り調べを受けている。

 一方、トムソン・ロイター財団によると、2015年以降、韓国で少なくとも522人のタイ人移民労働者(ほとんどが未登録)が死亡している。ソウルのタイ大使館によると、死者の14割は原因不明、残りは事故、自殺、健康関連の原因によるものだった。

 今年に入ってからだけでも、韓国では122人ものタイ人移民労働者が亡くなり、「社会の最も不利な立場にある移民労働者が、適切な医療を受けずに苦しみながら、日常的な困難や虐待に耐えざるを得ない状況に置かれている」という見方が強まっている。

 トムソン・ロイター財団によると、「タイ外務省から、情報公開請求に応じて得られたデータによると、2015年から2018年の間に韓国で死亡したタイ人の数は他のどの国よりも多い283人だが、2019年と2020年の統計は入手できなかった」という。

 現在、推定約18万5千人のタイ人が韓国で外国人労働者として働いており、その多くは農業と製造業で労働集約的な仕事をしている。彼らの過酷な労働と生活実態についていくつかの報告が出ており、国連の国際労働機関(ILO)の”労働移民”の専門家、ニリム・バルア氏は「注意と調査が必要だ。政府に登録されていない移民労働者は最も保護されておらず、彼らの健康と安全が懸念されている」と述べている。

 韓国当局はこれまでのところ、調査結果についてコメントすることを拒否しているが、ソウルのタイ大使館の関係者は、「死者の多くは過労と、それに関連する要因による可能性がある」と語った。「多くの違法なタイ人労働者は、おそらく適切な投薬なしの過労と健康の問題から、睡眠中に予期せず死亡していると思われます。労働者たちは、苛酷で不衛生な仕事を引き受けており、現地の公的な医療を受けることができない」と語った。

 移民労働者が適切な医療を受けることができない現状は、特にタイ、ベトナム、インドネシア、ネパールからの在留登録をしていない人々に打撃を与えている。

 「ビザがない場合、医療へのアクセスが遮断され、病院に行って手術を受けるのに1000万ウォン(約90万円)も必要になります」と韓国のAsane  Migrant Workers Centerのマネージャー、ウ・サムヨル氏は語った。 「タイ人を含む、在留登録のない外国人労働者は病気になっても、致命的な犠牲を払うまで痛みをこらえて働くことになる」。

 言い換えれば、韓国におけるタイ人移民労働者の状況は、タイにおけるビルマ人、カンボジア人、ラオス人の移民労働者の状況と共通している。国籍に関係なく、東南アジアおよびそれ以外の地域の移民労働者は、共通の悲惨さを味わっているようだ。

 ILOは、2017年現在で、東南アジア出身の外国人労働者は二千万人を超え、そのうち七百万人近くが、この地域の他国で働いていると推定している。

 「これらの労働者が社会的保護を受ける権利は、多くの国の場合、法律上は自国民と同じ扱いになっているが、実際には、不平等で差別的な扱いを頻繁に受けている… 問題は、ほとんどの東南アジア諸国で移民労働者の苦情を解決するためのメカニズムが働いていないことだ。虐待を受けている時に、それを申告し、善処してもらう手段が提供されていない」とILOは報告書で説明している。

 こららの地域の数多くの貧しい人々は、より良い賃金を得て、少しでも良い生活ができるようにと、他の国に働きに出ている。だが、彼らはしばしば、苛酷な労働環境に置かれ、正当な報酬を支払うことをしない雇用者に翻弄され、国にいる時よりも長く貧しい生活を強いられる。

 運が良ければ、自分たちの国をより良くしようとする慈善団体から助けを受けることができるかも知れない。例えば、韓国の非営利団体、南楊州市移民福祉センターは、未登録外国人労働者に無料の医療を提供している。だが、新型コロナウイルス大感染の影響を受け、現在、事業の縮小を余儀なくされている。「未登録労働者の中には糖尿病の治療薬が必要な人々がたくさんいます。だが、コロナのために無料医療サービスの継続が難しくなっており、それが事態を悪化させている」とセンターで奉仕している司祭は窮状を訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年12月26日