・「多くの司祭は『司教たちが自分を支持してくれる』とは信じていない」全米の調査結果(Crux)

Survey shows many priests don’t trust bishops to support them

Brandon Vaidyanathan, associate professor and chair in the department of sociology at The Catholic University of America in Washington, speaks at the university Oct. 19, 2022, during a presentation on the findings of a national study of Catholic priests. At right is Stephen White, executive director of The Catholic Project at the university. (Credit: Bob Roller/CNS.)

 

(2022.10.20 Crux  National CorrespondentJohn Lavenburg)

 ニューヨーク発 – 全米カトリック司教協議会が設立し、ワシントンにキャンパスを置く「カトリック大学アメリカ」が20日、性的虐待問題の暗雲が続く全米の司祭を対象にした調査報告書を発表した。

 「危機の時代における福利、信頼、および政策: カトリック司祭の全国調査」と題するこの報告書によると、米国の司祭の大多数が「ダラス憲章と聖職者の性的虐待の危機に対する制度的対応を支持する一方で、自分たちが誤って告発されることを恐れており、そうした場合、司教が彼らを支持してくれるが確信が持てない」と回答。

*司祭の士気は高いが、司教への信頼は高くない

 そして「米国の司祭たちの士気は高いものの、司教に対する全体的な信頼は高くなく、特に若い司祭はある種の”燃え尽き症候群”を経験している」と報告書は指摘している。

 報告書をまとめた同大学のカトリック ・プロジェクト事務局長、スティーブン ホワイト氏は「今から5年後に同じ調査を行った場合、状況が異なっていることを期待している。聖職者は自分の召命に満足いるが、『不安を和らげてもらいたい。支えられていると感じさせててもらいたい』と願っている。司教たちも、それを望んでいることは分かるが(うまく表現できていない)、このデータが役立つことを願う」と述べた。 今回の調査はまず、全米の191 の教区の 1万人のカトリック司祭に調査票を送る形で行われ、36% の3516 人から回答を得、さらに回答のあった司祭100人以上の司祭に面接調査を行った。また、全米の司教すべてに対しても調査票を送ったが、回答者は131人だった。

*回答司祭の45%が”燃え尽き症候群”を経験、特に若い司祭に多い

 

調査ではまず、ハーバード大学が作成したFlourishing Indexを使って、司教と司祭の幸福度を測定。司祭の 77% と司教の 81% が「生き生きと活動している」と分類された。だが、一方で、司祭の 45% が、聖職者としての務めに”燃え尽き症候群”を発症していると判断され、回答者の 9 パーセントが重度の燃え尽き症候群となっている。また、若い司祭は、何らかの形で燃え尽き症候群を経験する可能性が高いことも判明した。

「若い司祭の燃え尽き症候群の原因をよりよく理解することは、司祭養成と聖職者の定着の在り方を改善するために重要である」と報告書は指摘している。

また、司祭の司教に対する信頼感については、司祭の 49% が「自分の司教を信頼している」と答えたものの、「全米の司教全体のリーダーシップと意思決定を信頼している」と答えた司祭は3516人の回答者のうちわずか 24 人。さらに、司祭たちは、さまざまな社会的支援において司教を最下位にランク付けし、「上司の司教が、個人的な問題への対応の力になってくれる」とした司祭は36%にとどまった。

*性的虐待で誤って訴えられるのを恐れる司祭が8割

報告書に引用された匿名の司祭は、「自分の上司の司教は『自分のお尻を隠したいだけ。司祭のことはあまり気にしない管理者だ」と辛らつに批判している。報告書は「司教に対する司祭の不信感の少なくとも一部は、聖職者による性的虐待がもたらした教会の危機に対処すべく作成された対策の実施に関する経験から来ている」と指摘している。

 また報告書では、司祭の 90% は「教区が子供の安全と保護の強い文化を持っている」と考えているが、 40% は「性的虐待には例外なく厳しい措置を取る」という教皇の方針は厳しすぎる、と考えている。また司祭の 82% が「性的虐待で誤って告発されることを恐れている」と回答した。

 さらに「性的虐待の訴えが出された場合、自分たちを弁護するために、教区から十分な人的、物的支援がが提供される」と信じる教区司祭は 36% にとどまる一方、司祭全体の51% は、「訴えが出された場合、司教が自分たちを支援してくれると信じている」と述べた。

 これについて、匿名を条件の語ったある司祭は、「私たちには、まず、司教たちが後ろ盾になってくれていない、と「いう一般的な感覚がある… 司教たちは、司祭を支えるという司教としてしなければならないことをするのではなく、告発された司祭の後ろを向く、という感覚があります」と語り、また別の司祭は「訴えがされた場合、それを審査する委員会がどのような対応をすることになっているのか、何の情報もない」と述べた。

 

 

*司教は「兄弟、父親」として、司祭との信頼関係改善の必要

 このような結果から、報告書は、司教が司祭との信頼関係を改善するためまずすべきことは、「”雇用主”ではなく、兄弟と父親として」個人的な関係を強化することであり、次に司祭たちが願っているのは、司教たちに「もっと透明性と説明責任を果たす」こと。財務や役割などに関する計画立案と実施決定に関する透明性、および性的虐待の申し立てを受けた司教たちの審査プロセスと適正な手続きの確保に関する透明性を図ることを求めている。

 説明責任に関しては、多くの司祭が一貫した基準を示すよう求めている。面接調査を受けた匿名の司祭は、「司教は、司祭と同じように責任を負わなければなりません… また、カトリックの教えに忠実であるべきですが、悲しいことに、多くの場合そうではありません」と訴えている。

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2022年10月21日