(図表は Istat/Corriere della Sera 提供)
(2023.3.5 Crux 編集者 John L. Allen Jr.)
ローマ – 教皇フランシスコの 着座10 周年の3月19日を前に、多くの論評がなされるだろう。バチカン専門家たちは、フランシスコと前任者たちーヨハネ・パウロ 2 世とベネディクト 16 世ーとの対比を強調し、ある者は教皇フランシスコが過去 10 年間にとった新しい方向を称賛し、またある者は失望する見方を述べるだろう。
いずれにも共通するのは教皇職の重要性への認識だ。教皇が右寄りになるか、左寄りになるか、ハッチを閉じるか、開け放つか、は、カトリックの盛衰にとって重要だ。
そうした中で、現代の教皇職を取り巻くすべてのイデオロギーの「響き怒り」にもかかわらず、こういうことがあるのを思い起こすことは意味のあることだろうーつまり、教皇たちには、彼らがどれほと伝統主義的か前衛的かに関係なく、制御できないことがある、ということだ。
その一つが、カトリックの活力の基本的で一般的に受け入れられている尺度ー日曜日に教会のミサに出てくる信徒がどれほどいるか、だ。
教皇のおひざ元のイタリアを見てみよう。 このほど、同国の国立統計研究所(Istat)がイタリア人がミサに出る頻度を含む「宗教的実践」に関する最新の調査結果を発表した。
その内容を見る前にまず、教皇職に就いて。伝統的に、教皇の称号の一つは「イタリアの首座大司教」だ。教皇は、イタリアの司教協議会の会長を直接任命する権限を持つ。(フランシスコは、その権限を司教たちに戻そうとしたが、拒否された。司教たちは3人の候補を立てるが、その中から教皇が選ばねばならない)。そして地球上で、教皇交替がわが身のように感じられる場所と言えば、イタリアだろう。
そうしたイタリアで、日曜のミサの出席率が1960年代から低下を始め、1980年代に横這いで安定したと思われたが、1990年代以降、再び低下し、今もその傾向を続けている。
Istatの発表による 2001 年から 2021 年まで 20 年間は、特に興味深いものだ。イタリア人の中で「少なくとも週に 1 回はミサに出席する」と、「まったく行かない」の比率が入れ替わったのである。
2001 年には、全回答者の 36.4% が「週に 1 回以上教会に行く」と答え、15.9% は「一度も行ったことがない」としていたが、 20年たった2021年には、32.4%が「一度も行かない」と約二倍に増え、「毎週行く」と答えたのは19.2%と大幅に低下した。
ミサ出席者の減少は1960 年代に始まったが、これは第二バチカン公会議 (1962-65) のリベラルな改革と一致し、パウロ 6 世の比較的左寄りの教皇職の時代まで続いた。 1980 年代には、より保守的な教皇ヨハネ・パウロ 2 世の下で出席者は落ち着いたように見えたが、1990 年代に再び減少し始め、それ以来、上向くことはない。
2001 年から 2021 年にかけての減少は、影響力がピークに達していたはずのヨハネ・パウロ二世の治世最後の 4 年間と一致している。そして、 ベネディクト 16 世の 8 年間。 さらにフランシスコの教皇着座から8年間。 言い換えれば、12年間の保守的な教皇のリーダーシップと、8年間の進歩的な教皇の治世のいずれもが、ミサに行く人の数に影響を与えていないのだ。 つまり、イタリアにおけるミサ出席者の顕著な減少の原因は、教皇が保守的かリベラルかとは、ほとんど関係がないようである。
教皇フランシスコの教皇着座10周年を迎えるにあたって、真に劇的な この10 年間の変転を味わい、分析するのは意味のあることだ。だが、カトリックの繁栄を取り戻したい、と思うのなら、左派と右派の観点だけで教会活動を分析して解を求めようとするのは、時間とエネルギーの最も有望な使い方では必ずしもない、ということを認識する必要がある。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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