ローマ–イタリアのカトリック教会指導者たちは現在、教皇フランシスコが世界の教会に参加を求める来秋の世界代表司教会議(シノドス)に向けた”シノドスの道”と同時並行の形で、イタリア独自の取り組みを進めている。
イタリア版”シノドスの道”は、2025年に予定するイタリア・シノドスで新型コロナウイルス大感染で打撃を受けたイタリアが抱える課題を検討し、同時にこの国の教会の全体的状況について評価と対応をまとめるのが目的だ。
教皇は、2015年にフィレンツェを訪問されて以来、イタリアの司教団に対して、国としての”シノドスの道”を始め、その歩みの中で「古くて反復的な」イタリアの教会構造を取り除き、「貧しい人々や恵まれない人々に近づく」よう、強く求めてこられた。
イタリア版”シノドスの道”で司教団が取り組むべき数多くの課題の中には、国民の間で顕著になっている教会と宗教全般に対する無関心、教会運営やさまざまな慈善事業を支えるプロジェクトを支援する基金に関連する損失問題がある。
若者たちの教会離れも深刻な問題だ。教会に批判的な団体、無神論者・合理主義者・不可知論者連合(UAAR)によると、イタリアの若者たちの間で学校で宗教に関する科目をとらない者が急速に増えている。具体的に、政府統計によると、公立学校の100万人以上の生徒が、自由選択を認められている科目の中で、伝統的なカトリックを学ぶ『宗教の時間』や『カトリックの教え』を選ばない者が増えている、と指摘している。『宗教の時間』は、学校の選択科目の一つで、イタリア政府とバチカンの1985年の合意に基づいて続けられている。合意以前は、カトリックはイタリアの事実上の国教とされ、学校においても『カトリックの教え』が必須科目とされていたが、選択科目となったことで、カトリックの教えを学ぶことが義務付けられなくなり、選択する魅力も薄れてきたことを反映している。
教会の財務に関する問題も深刻だ。イタリアでは国が国民から徴収する所得税の収入から配分される資金が教会財政の重要な柱となっているが、その額が年々減っているのだ。国が徴収する所得税の収入は、政府と納税者が選択する教会を含む複数の正式承認を受けた慈善事業団体に配分される。どの団体にするかは、納税者が選ぶのだが、カトリック教会を配分先に選ぶ納税者が年々減少。
イタリア国民の75%はカトリック信者であり、配分額の少なくとも7割は教会に配分され、配分先を選ばない納税者の税金は、選択した納税者の割合に応じて配分されるので、年間の教会の受取総額は約10億ユーロにのぼるのだが、その受取額が年を追って減っているのだ。
その原因には、コロナ下での国民の所得減少がまず考えられるが、災害、飢餓、難民など世界的な危機の増大、学校教育の充実の必要などに国民の目が向き、それらに関連する慈善事業を税収の配分先として選択する人が増えていることもあるようだ。
イタリア司教協議会は、納税者に、配分先をカトリック教会とするよう求める新聞広告を出すなど、収入減を食い止めようと努めているが、信徒の間に、聖職者による性的虐待問題への司教団の対処に不満を持つ声が高まる中で、どこまで説得力を持つのか、疑問をもつ声もある。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)