・アジア大陸レベル会議閉幕、「アジアの教会は世界に多くのことを与えられる」とオロリッシュ枢機卿が激励

   “シノドスの道”アジア大陸レベル会議は26日、最終日を迎えた。この日の全体会合で講演したシノドスの総括担当者であるジャン=クロード・オロリッシュ枢機卿(ルクセンブルク大司教は、現在進められている”シノドスの道”に求められている「調和と回心」について語り、「アジアの教会は、世界に多くのことを与えることができる」と激励した。

 最終日の会合は、 フィリピン出身でシノドスの神学委員会のメンバー、エステラ・パディラ教授が進行役を務める形で、フィリピンのパブロ・デビッド司教、台湾・中国地域司教協議会シノドスチームの テレサ・ウー氏など参加者による分かち合いが行われた。

 

*”交響曲”としてのシノドス

 オロリッシュ枢機卿が冒頭、この日の議事を方向付けるために 3 つのポイントを提示。まず、相乗効果、連帯、調和としての”交響曲”を挙げた。作業グループの 1 つによって行われた省察を取り上げ、 「”交響曲”には反復と規律が含まれており、すべての演奏者は自分の楽器を大事にする必要があります。もしピアノがうまく調律されていなければ、”不協和音”のひどい演奏になってしまうでしょう」とし、「共働的な回心は、”楽器を調律”すること。 回心は常にキリストに向かっています」と述べた。

 

*共働的回心と洗礼に基づく一致

 そして、「回心には、互いを見て、私たち一人一人の中にある洗礼によって与えられた尊厳を理解するために、私たち自身のエゴを手放す謙虚さが必要です」としたうえで、「 聖体拝領ではなく洗礼から始めることは、洗礼に基づく教会一致の”新しい春”をもたらすことになるでしょう」と述べた。

 

*「創造」のシノドス的解釈

 三つ目のポイントとして、枢機卿は「創造のシノドス的解釈」を提示した。 そして、聖書に書かれた創造のシノドス的解釈は、「男」、「男と女」、あるいは婚姻制度と家族の創造として見るのではなく、「人間性」の創造と見ること、と指摘。 「私たちは教会として、想像された人類の一部であり、人類に奉仕するよう召されています。 ですから、シノドス(共働)的な教会とは、キリストによって宣教され、福音を宣言する教会です。 もし私たちが世界に仕えなければ、誰も[私たちの]福音の宣教を信じないでしょう」と述べた。

 

*デジタル時代にシノドス的教会が与えられるものは

 また枢機卿は、シノドス的教会が世界に与えることができるものは、他宗教との対話と、デジタル文化で促進される個人化に、共同体社会をもたらすことで実証される、としたうえで、「 私たちはデジタル時代の”0年”におり、『私たちの時代への変換』が必要です。 若い人たちはすでに ”0.1 年”に進んでいます….  にもかかわらず、私たち司教は、デジタル時代の前、”マイナス 0.1 インチ”の状態にあることもある」と指摘。”シノドスの道”を歩むことは、「教会共同体を共同生活の中心に戻すことであり、新しい時代に奉仕することです」と強調した。

 講話の最後に枢機卿は、会議の参加者たちに「私たちは皆、キリストと共に、聖霊の導きのもとに歩んでいます。そして、アジア教会は、世界に与えるべきものをたくさんもっています」と激励した。

 

 

*大陸文書草案の最終まとめを執筆チームに一任

 参加者による分かち合い、オロリッシュ枢機卿の講演の後、沈黙の祈りがされ、識別と大陸文書起草チームのメンバー、クラレンス・デヴァダス神父から、文書案初稿をもとに今回会議で出された意見を受けた最終草案のの更新された草案の説明があった。

 これを受けて、進行役のパディラ教授が、会議参加者に対し、修正草案について静かに熟考する時間をとることを提案。その後、 活発な議論が行われ、修正草案が彼らの意見を反映していることを評価。さらなる修正を執筆チームに委任し、修正草案に執筆チームが今回の会議から得られた最終的な所見を取り入れた後、最終案をアジア司教会議連盟(FABC)に加盟する全司教協議会に提示し、承認を得る方針が了承された。最終文書は FABC からバチカンのシノドス事務局に送付される。

 

*「秋の世界代表司教会議に向け、アジアの教会の更なる貢献を」とシノドス事務局長

 最終日の午後のセッションでは、参加者は、教会のシノドリティを強化するために教会の構造をどのように変更または作成できるか、およびシノドスの 2023 年 10 月と 2024 年 10 月のセッションで何が起こることを望んでいるのかについて、熟考し、議論し、報告した。

 閉会にあたってバチカンのシノドス事務局長のグレック枢機卿があいさつし、参加者たちに、素晴らしい経験をしたことへの感謝を述べ、 「今回の経験で、私はアジアの教会を忘れることができなくなります。sinodality(共働性)に関する大陸レベルのこの会議は、シノドスは神の民についてのもの。問うべきは『教会とは何か』ではなく、『教会とは誰か』です」と語った。

 そして「すべての人が、『共に歩む』よう招かれており、そうすることでキリストは今日、人々に出会うことができるようになるでしょう。そうして、sinodal(共働的な)教会は福音宣教の目標に向かって進んで行くのです」と強調。

 また、「sinodality(共働性)は一世紀のキリスト教徒の経験からの教会の特質であり、取り戻す必要がある。 ”シノドスの道”を歩む旅の素晴らしさは、私たちが sensus fidelium(信者の感覚ないしは信仰の感覚)と聖職者団の職務の適切なバランスを見つけようとすることにあります。 今回の会議で、皆さんは正しいバランスを保つことができました。皆さんの教会のアジアの特徴は、世界の教会全体に利益をもたらします」と評価した。

 そして、「このような鍛錬をもって、皆さんが取りまとめる文書は、今秋の世界代表司教会議に向けた準備に貢献すること、そしてsynodality (共働性)が変化をもたらすことを期待しましょう」と語り、それぞれの国に戻った参加者たちが、信徒たちに教皇と自分の感謝の意を伝えてくれるように、そして「新たな福音宣教の原動力」を提供するsynodality (共働性)の種を播き続けてくれるように、と願った。

*菊地FABC事務局長が閉会の辞

 この後、アジア司教協議会連盟(FABC)事務局長の菊地・東京大司教が閉会の辞で、会議を成功に導いた参加者全員の積極的な貢献に謝意を述べ、会議は終了。

 参加者たちは、FABC 議長のチャールズ・ボー枢機卿が主宰する四旬節第一主日のミサに参加。ボ―枢機卿はミサ中の説教で、主の復活を祝い、悪徳を放棄してもすぐその悪徳に戻ってしまう、という多くのカトリック信者の傾向に疑問を呈したうえで、「英語の『Lent(四旬節)』は、synodal conversion(共働的回心)に導く”頭文字”を内包しています。『L』は letting go(前に進む)、『E』はencounter(出会う)、『N』はneighborliness(隣人を大切にする)、そして『T』は transformation(変わる)です」と四旬節の意味を強調した。

 

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2023年2月27日