・性暴力の被害者が加害司祭の所属修道会に損害賠償求める裁判で、被告・神言会側が「彼はやっていない」と否認

(2024.5.8 カトリック・あい)

 カトリック信者の女性が「外国人司祭からの性被害を訴えたにもかかわらず適切な対応をとらなかった」として司祭が所属していたカトリック修道会、神言会(日本管区の本部・名古屋市)に損害賠償を求めた裁判の第3回口頭弁論が8日、東京地方裁判所で行われ、これまでの準備書面で原告の訴状に対してほとんど「不知(知らない)」と繰り返してきた被告の神言会が「(所属していた司祭が性的虐待を原告女性に行ったとする訴えを)否認する」と新たな書面で言明したことが明らかになった。次回は、7月17日午後3時から東京地裁第615法廷で行われる予定。

 原告代理弁護人は、この新たな準備書面の内容について、「私たちが訴えているのは、神言会が『適切な対応を取らなかった』ことであるにもかかわらず、それに反論せずに、このような表現で応えたのは、神言会そのものが加害者に成り代わったもの」と受け止めている。

 原告を支持している多くの傍聴者からは、原告の訴状の内容などから、外国人司祭が原告信者の告解を利用して性的暴行を繰り返したのは明らかと思われるにもかかわらず、「司祭が属していた修道会が、これまで”知らぬ存ぜぬ”を通してきた態度を一変させて、性的暴行そのものの否定に回ったのは、理解できないし、原告被害者をいっそう傷つける行為以外の何物でもない」と批判の声が上がっている。

 前回に続いて、司祭、修道女、一般信徒など関東、関西、北海道などから集まった約50人が傍聴席を埋める中で行われた8日の法廷では、裁判長と2人の陪席裁判官のもと、原告の田中時枝さん(東京教区信徒)、代理人の秋田一惠弁護士、被告側は当事者である神言会日本管区の代表がこれまでどおり欠席、代理人弁護士のみが出廷し、被告側から新たに出された準備書面の内容などをめぐってやり取りがあった。

 その中で、原告側は、被告側が新たな準備書面で「(訴状にある、外国人司祭=バルガス・F.O.サビエル=による被害者への性的虐待行為を)神言会として否認する」としたことについて、なぜ、これまでの『不知」を改めたのか、とに質したのに対し、被告側は「本来なら『不知』だが、(神言会の代理人弁護士として)否認する」と返答。さらに「それでは、あなたは、バルガスの代理人か」との問いに、「(バルガスの)代理人ではない。神言会の代理人だが、(バルガスは原告に対する性的虐待は)やっていない」と繰り返した。

 また、バルガスに対して「訴訟に加わるように」求めた被告訴訟告知書について、裁判長から「(バルガス)本人ではない人物が受け取ったようだ」との説明があり、「その人物は(バルガスの)妻か」との原告側の問いには、「それは不明確。(受領書の)コピーをお渡しするので、そちらで確認してほしい」との回答があった。これにより、神言会が明確にするのを避けてきたバルガスの居所が分かれば、本人を直接訴えることも可能になるため、今後の展開が注目される。

 第三回の口頭弁論終了後、原告の田中時枝さんと原告代理人の秋田一惠弁護士が会見を開き、田中さんが「本物の信仰をもったたくさんの方が支援してくださり、今回も多くの方が傍聴に来てくださって勇気をいただきました」と感謝。秋田弁護士も「大きな苦痛を覚悟のうえで、田中さんが実名で、顔をさらして訴え、それに、多くの方が共感され、励ましてくださっている。今や東京地裁でこの案件を知らない関係者はいないくらいに注目を浴びています。裁判はこれからも続きますが、これだけで、私たちは『勝った』と言ってもいい」と語り、感謝と、さらなる支援を訴えた。

(南條俊二記)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年5月8日