2021年10月1日、「アド・リミナ」訪問のためローマ滞在中、教皇の一般謁見のためにサン・ピエトロ広場に到着したフランスの司教たち(写真提供:Massimiliano MIGLIORATO / Catholic Press Photo/ MaxPPP)
(2024.3.15 La Croix Christophe Henning (in Paris)
フランスのカトリック聖職者による性的虐待の体験を明らかにし、補償を求めた被害者に関する、新たな実態が明らかになった。
フランス司教協議会(CEF)に設立した独立国家補償機構(INIRR)が14日発表した年次報告書によると、1396人の性的虐待被害者が自らの体験を明らかにし、補償を求めた。これまでに571 件が合意。被害者の 45% が 2万 ~ 3万9000 ユーロ(320万~630万円)、42% が 4万 ~ 6万 ユーロ(650万~980万円)の金銭的補償を受けている。
被害者の多くが長期間にわたって性的に虐待されており、その期間は、 1 年から 5 年が 全体の42 パーセント、 5 年以上が20 パーセントに上っている。 名乗り出た被害者が虐待を受けた時点の年齢は11~15歳が全体の5割、6~10歳が4割を占めている。
また、女性からの訴えは、全体の3割にとどまっており、ドラン・ド・ヴォークレッソンINIRR会長は「女性が声を上げることで、他の人たちも、それに加わることができるようになる」と女性が勇気を出して訴え出ることの重要性を指摘している。
年次報告によると、未成年時に聖職者から性的虐待を受けた人たちの場合、被害を名乗り出るまでに時間がかかることが多く、中には、非常に古い事実について思い切ってINIRRに告知するのが初めての経験だった、と語る人もいた。
ただし最近では、「性的虐待をした者が生存している時点で、私たちに連絡してきた若い被害者もいる」と会長は指摘。パリ・カトリック研究所(ICP)で教鞭をとる臨床心理学者のロレーヌ・アンジュノー氏は、「虐待被害者が声を挙げたとき、再び痛みを感じる… 訴えが無視され、教会と親族によって隠蔽されてしまった… ”沈黙”を破るのは大変なことです」と被害者の立場を説明した。
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INIRRは2022年に発足したが、当初は人員が不足し、毎月寄せられる100~250件近くの相談や訴えへの対応に苦慮した。 しかし現在では、被害者を支援する約30人のカウンセラーがスタッフとして活動、支援者も2022年12月の315人から、今では868人に増えている。 金銭補償だけでなく、教会の様々な記念行事への参加、教会の代表者との面談、旅行、地域社会で自身の体験を語る場の提供など、心身のケアのための具体的な対応にも努めている。
INIRRのチームの任期は今年11月までだが、これまで訴えてきた人たちの中で現時点でもなお、3割が支援を必要としており、「私たちは、決して人々を旅の途中で見捨てるようなことはしません」とヴォークレッソン会長は語り、CEFは来週ルルドで開く春季総会で、延長を決めるとみられる。
会長は、「被害者たちが受けた虐待のトラウマを金銭補償で埋め合わせることができないことは分かっています。それでもINIRRの活動が性暴力に関するフランス社会での議論の高まりに貢献している」とし、臨床心理学者のロレーヌ・アンジュノー氏も「性暴力には取り返しのつかない側面がある。だが、賠償ですべてを解決することはできなくても、苦しみを軽減することは可能です」と述べた。
また、年次報告書では、複数の被害者が、性的虐待で受けた痛みから心身が回復するのに、「時間」がいかに重要であるかを語っている。64歳になるダミアン・メイスさんは「私たちの内面、皮膚の下には消えない傷跡が残っています」と訴え、別の被害者は 「それでも、私は存在する。私は生きているのです」と語った。
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INIRRの活動は重要だが、報告書が示した1400人弱という被害者の人数は、「フランスのカトリック教会における性的虐待に関する独立委員会(CIASE)」が発表した数字と比べると相当に少ない。同委員会は、フランスで 1950 年から 2020 年にかけて約33万人が聖職者やその他の教会関係者によって性的虐待を受けた、と推定している。
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