聖職者など教会関係者による未成年者などへの性的虐待問題に対処するバチカンの未成年保護委員会の総会が8日、6日間にわたる討議を終え、性的虐待に対処する新戦略を発表して閉幕した。
委員長のオマリー枢機卿は、「教皇は、私たちに多くのことを求めておられます。私たちは皆、教皇の意向を受けて、使命を果たすために全力を尽くしている」と強調した。
世界の教会の性的虐待に対処するガイドラインを刷新する「Universal Guidelines Framework’ (UGF=新たな普遍的枠組み)」と題する新戦略は、① 被害者に対する支援と(社会復帰)訓練のための各司教協議会の寄付による基金② 保護プログラム推進のための米国の社会事業財団 GHR などとの協力③ 児童虐待と闘うためのオンライン戦略④ さまざまな形態の脆弱性の問題に関する詳細な研究⑤被害者が必要としている支援に焦点を当て、教会の説明責任の仕組みの中で対処する戦略計画-の立案と実施を柱としている。
UGFは今後、世界の教会指導者、虐待被害者組織、その他の利害関係者に提示され、意見、提案を受けたうえで、必要な修正を経て、今年後半に教皇の承認を得、正式に発効する見通しだ。
*教皇の苦言と激励
教皇フランシスコの着座の翌年、 2014 年に設立された委員会は、昨年月に教皇が出されたバチカン改革の使徒憲章「Praedicate Evangelium」によって、バチカンの教理省に正式に位置づけられた。この間、多くの委員の辞任があったが、昨年11月に10人の新委員を加え、今回の総会はそれ以来2回目となった。
総会3日目の5日の会合に出席された教皇は、聖職者による性的虐待が引き起こした教会の危機は、「人類を解放する神の存在を完全な形で受け止め証しすべき教会の力を脅かし、教会にとって特別に深刻な問題」としたうえで、「この悪を止め、被害者たちを助けるために適切な方法で行動する能力がなかったことは、私たち自身の神の愛の証しをゆがめている…『怠慢の罪』を犯している」と自戒を込めて強く批判。
委員会に対し、その活動が「あまり良い方向への変化が見られない」という批判的な見方にひるむことなく、「教会がすべての人にとって安全な場所となるような世界的な展望を示す」という使命を果たすべく、粘り強く、前に進むよう求められた。
*被害者の側に立つこと
委員会は総会閉会後の8日の新聞発表で、 「委員会は、その役割を堅持し、若者や脆弱な人々が危険にさらされず、虐待された人々が心身ともに立ち直れるようにする、という教会の誓約と、そのような措置が実行され、効果を上げていることを検証できるようにせねばならない、と確信している」と言明した。
そのうえで、教皇の言葉に倣い、「恒久的な法規」として、2019年5月に出された、教会内での虐待や暴力を報告する手続きを定め、司教や修道会の長上らに周知徹底を図る使徒的書簡「 Vos estis lux mundi」の更なる徹底と対応の厳格化について、今総会で協議し、委員会発足以前の2011年にバチカン教理省が出した、世界の全教会が性的虐待に対処するためのガイドラインを刷新、「Universal Guidelines Framework’ (UGF=新たな普遍的枠組み)としてとりまとめた。
*虐待被害者対応の不平等を無くす各国の司教協議会からの寄付による基金の設立・運用
UGFに盛り込まれた対策の一つは、性的虐待対策で人的・物的資源を欠き、不平等な状態に置かれている貧しい国々の教会を助ける基金の設立と運用。具体的には、そのような国々で、性的虐待被害者やその家族が心身ともに立ち直れるように支援や訓練をうけられるようにするための資金を提供する。試験的プログラムは、すでにルワンダの教会で始まっている。
*米国の社会事業財団やバチカン福音宣教省などとの協力推進
委員会はすでに、性的虐待被害者保護のための活動で外部団体と協定を結んでいる。 1つは、米国に本拠を置く社会事業財団GHRと協力し、性的虐待被害者の保護に関する専門家の地域コンサルタントを派遣するプログラムの運営で、昨年12月から始まっている。もう1つの協力協定は、世界の半分以上で教会の活動を監督するバチカンの大使館などを通じて被害者保護を促進するためのもので、4月にバチカンの福音宣教省と協定を結んでいる。
また、「性的虐待が引き起こす問題に対処するしっかりとした方策を教会が持てるようにするため、さまざまな形態の『脆弱性の問題』に関する詳細な研究を進めること」についても、今総会で合意している。
*保護方針と手順に関する年次報告書
また今総会では、2022 年 4 月に教皇から求められた「教会における性的虐待被害者保護などの対策と手続きに関する年次報告書の枠組み」の見直しもなされた。
8日の新聞発表によると、UGFは「虐待被害者が必要としていることにどのように優先順位をつけ、教皇に提案する目的をもって教会の報告の仕組みに対応するか、に焦点を当てた「人間中心に作られた方策」を採用している、という。
また、「現地の教会の保護ガイドラインの妥当性を評価する」ために使用される検証ツールの策定や、教皇が指摘された「オンラインを悪用した児童虐待」に対処する方策も含まれている。
以上のような対応について、進捗状況を測定し、利害関係者に説明責任を持たせるための目的、ターゲット、およびパフォーマンス指標を特定する戦略5か年計画が、提案されている。
*「教皇が求められた事柄を全力で達成する」とオマリー枢機卿
(以下、翻訳中、未定稿)オマリー枢機卿は、「教皇は私たちに多くのことを求めており、私たちは皆、これを機能させることに全力で取り組んでいます」と述べ、これらの進展は「委員会にとってより影響力を重視した方向への大きな転換」を表していると強調しました。
この新しい方向性は「私たち全員にとって険しくも速いものでした」と彼は付け加えました。「過去 6 か月間のこの加速したペースは、短期的および長期的なニーズの両方に対応しようとしてきたため、ますます大きな苦痛を引き起こしました。」
プレナリーでは、「私たちのさまざまな役割を明確にし、私たちのマンデートとその実施に対する私たちの共同責任の共通の所有権の感覚を生み出すために、私たちの作業方法論に対する主要な調整を開発しました.」
「私たちは、適切に対応するために必要なリソースを探してきました」とオマレー氏は締めくくります。
O’Malley: committed to achieving what the Pope asked for
“The Holy Father has asked a lot from us, and we are all committed to making this work,” says Cardinal O’Malley, stressing that these developments represent “a major shift towards a more impact-focused direction for the Commission.”
This new direction “has been both steep and fast for all of us,” he added. “This accelerated pace over the last six months has caused growing pains as we have tried to respond to both shorter and longer-term needs.”
In the plenary, “we developed key adjustments to our working methodology so as to clarify our different roles and to create a sense of common ownership of our mandate and of our collective responsibility for its implementation.”
“We have sought the necessary resources,” O’Malley concludes, “to respond appropriately, and we are confident in the plan we have laid out and the people we have working with us.”