・イタリア最大のカトリック信徒団体幹部が未成年性的虐待で逮捕(Crux)

Mirko Campoli. (Credit: Youtube screen capture.)

Abuse scandal in Italy raises issues of lay supervision, disclosure

(2023.5.26  Crux Staff)

 ローマ発 –教皇のおひざ元の イタリアで、新たな性的虐待スキャンダルが発生した。同国最大のカトリック信徒団体の著名な幹部が少なくとも未成年者4人に性的虐待を働いた罪で司法当局に逮捕されたものだ。

 この事件で、 容疑者が聖職者ではなく一般信徒だった場合の責任の所在、説明責任に新たな課題も浮上している。

 逮捕されたのは、「Azione Cattolica (カトリック・アクション)の青少年部門の元責任者、ミルコ・カンポリ(46)。犯行当時10歳から14歳だった少なくとも4人の未成年者に性的虐待をした容疑で5月23日に逮捕された。現在、足首に電子監視ブレスレットを装着することを条件に自宅軟禁の状態に置かれている。

  Azione Cattolica は、1867 年に設立された、伝統あるイタリアで最大のカトリック信徒団体。会員数は 1950 年代後半には 300 万人を超えていたが、 現在は 信徒の”教会離れ”を背景にして、27万人程度になっている。

 カンポリは、2002 年から 2008 年までAzione Cattolica の青少年部門の責任者を務めた後、ローマ郊外のチボリ教区の大規模な高校の副理事長になるとともに、同教区のAzione Cattolicaのコーディネーターも務めた。最近では、ローマにある性的虐待の被害者を持つ家族のための施設で働いていた。また、若者向けの宗教教育に関する出版物を多数執筆し、新型コロナウイルス感染拡大で学校が閉鎖された若者たち向けに信仰教育のビデオを制作。イタリア司教協議会の運営するテレビ放送で教会が運営する青少年キャンプの宣伝にも一役買っていた。

 カンポリ容疑者について、ある検察官は「憎むことのできない人物、第二の父親とも言われる、誰もが知っていて好かれる人物」である反面、「被害者に高価な贈り物をして、訴えを封じるだけでなく、思春期独特の悩みに耳を傾け、なだめ、怒りや不安を無くすことのできる人物」としている。

 イタリアのメディアによると、カンポリを訴えた被害者は4人で、2016年から、学校や協会主催の旅行中に繰り返し性的虐待を受けたという。カンポリに対する性的虐待疑惑は2020年に表面化し、学校副理事長の職を説かれ、教区司教によって宗教教師としての免許も取り消されている。だが、関係者によると、その後、ローマにもどったカンポリは新たな職を得、そこでも性的虐待を繰り返してきた、という。

 チボリのフランチェスコ・メンディット検察官は5月23日の記者会見で、「教会当局が司法当局への報告を十分にしなかった。それがされていれば、この男の犯行をもっと早く止めることができた」と教会の隠ぺい体質を批判した。

 これに対して、チボリ教区は声明を出し、「教区の家族相談センターが、カンポリに性的虐待の疑いがあることを知った時点で、速やかに司法当局に通知している。被害者の両親から告発を受け、それが信頼できると判断した時点で、宗教教師としての免許も取り消した」と反論。イタリア司教協議会のマッテオ・ズッピ枢機卿も25日の記者会見で「チボリ教区の司教は責任を果たしている。隠ぺいの批判を受け入れられない」と述べた。また、イタリア司教協議会は今秋、11月13日から16日まで、未成年者の保護をテーマにした臨時総会をアッシジで開催する予定にしている。

 こうした教会当局に、現地メディアはチボリ教区の評議会が自己のフェイスブックに、カンポリの「ここ数年の働きに心から感謝する」旨のメモを載せ、また同教区のソーシャルメディアチャンネルへのカンポリの投稿は、逮捕時点まで閲覧可能だった、と指摘。

 メンディット検察官は、「教会当局者の対応は、”マフィア”に似ている。親(である教会当局者)は自分の子ども(である信徒たち)が受けたかもしれない暴力が事実であるこを受け入れたくないので、それを隠蔽しようとし、まして未成年者のことを信じようとしない」と重ねて批判し、さらに「多くの場合、被害者やその親たちは教会当局者としか話しませんが、教会当局は内部で状況を管理しようとする傾向があります」と語っている。

 また、ある関係者は、「カンポリ事件」の問題のひとつは、「責任の境界線」が曖昧であることだ、と指摘する。Azione Cattolica、チボリ教区、カンポリが副理事長を務めていた学校、地元の検察と警察、あるいはカンポリの監督や告発に主な責任を負うべき機関が明確になっていないのだという。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年5月27日