英国国営BBCなど世界中の有力メディアが伝えたところによると、スペイン議会の委託を受けた独立調査委員会が27日、同国のカトリック聖職者から性的虐待を受けた被害当時に未成年者だった人が、成人人口の約0.6%に上るとする調査報告書を発表した。
調査は昨年2月から行われてきたが、調査委員会がこれまでに8000人以上から聞き取り調査などを行った結果、同国の成人人口の約0.6パーセントにあたる人が、未成年期に聖職者から性的虐待を受けていると推計されることが分かった。スペインの総人口は約4800万人であり、その成人人口の0.6パーセントは、現地メディアによると、人数に換算すると少なくとも20万人に上る、としている。教会が監督する施設内での一般信徒による性的虐待の疑惑がもたれる案件を含むと総計で40万人以上とも推計されるという。
BBCによると、この調査結果を発表した担当者は、27日の記者会見で、 報告書には487人以上の虐待被害者の声明も含まれており、「被害者の中には自殺した人もいます… 人生を立て直すことができないでいる人も…」と被害者たちが肉体的ダメージだけでなく、精神的にも深い傷を負っていることを強調。「何年もの間、何らかの形で不当な沈黙を強制されてきた被害者たちの苦しみと孤独に対応する必要がある」 と述べ、虐待の被害者に補償を提供するための国による基金の創設を提案した。
スペインのカトリック教会では、これまで多くの被害の声が出される中でも、真相究明に消極的な姿勢を続けて来た。同国の有力日刊紙 El Paisのこの問題に関する調査報道をきっかけに、2018年から公式調査が始まり、これまでに1000件以上の虐待の疑いのある事例のデータベースが作成され、そのうえで、独立調査委員会による調査が昨年2月から進められてきた。
BBCによると、27日会見した調査委員会の担当者は、「教会は、委員会の調査にある程度協力している」としつつ、教会の関心はいまだに薄く、「教会は長年にわたり虐待の事実を否定したい、隠したいという願望があった。今も一部の教区では、司教が(調査委員会に)敵意さえ持っている」と、教会、特に高位聖職者の対応を批判した。
スペインのペドロ・サンチェス首相は、報告書の調査結果はこの国の民主主義における「マイルストーン」であるとし、 「長年にわたって誰もが知っていたが、少なくとも今日のような条件では誰も語らなかった現実が公けになったことで、我が国は、より良い国になった」と、隠ぺい体質を続けるカトリック教会と高位聖職者への皮肉を込めて語っている。