・「聖職者などによる性的虐待への対処が改められていない、真剣な対応の議論が必要」教皇の未成年者保護委員会が、新枢機卿叙任式とシノドス総会に強く求める声明

Bishops pray at the start of a session of the Synod of Bishops at the Vatican Oct. 9, 2018. (Credit: Paul Haring/CNS.)

(2023.9.27 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen

Pope’s own abuse commission blasts system that leaves victims ‘wounded and in the dark’

 聖職者による性的虐待問題などに関する教皇の諮問機関、未成年者保護委員会が27日、声明を発表し、「世界の教会指導者たちのによる性的虐待案件の隠ぺい、誤った対応だけでなく、新たな案件がさらに表面化している」と指摘、改めて真剣な取り組みを強く求めた。

 シノダリティ(共働性)をテーマにした2期連続の世界代表司教会議(シノドス)第16回通常総会が10月4日から始まる。総会を前に、30日には教皇フランシスコが新たに任命した21人の枢機卿の叙任式が行われるが、声明は、世界のすべての枢機卿に対して、「贖いを求められている血は、あなた方自身のものであり、司牧している人々の血ではない」としたうえで、「勇気ある自己犠牲の模範として、新たな枢機卿の叙任は、可能な限りあらゆる手段を用いて最も弱い立場にある人々を守り、擁護するという揺るぎない決意を反省し、悔い改め、新たにする絶好の機会となる」と強調。枢機卿たちに対し、虐待の被害者とその家族に対し正義と真実の両方を追求する決意を、「忠誠の誓い」の一部とするよう求めた。

 そして、この決意は、「すべての司教と宗教的指導者のならうべきもの」であり、10月4日から始まるシノドス総会は「教会内の性的虐待の現実について話し合い、変化を促す絶好の機会でもある」と指摘し、シノドスの全参加者に向けて、教育、さまざまな形態の奉仕、組織、統治などの場面に、虐待問題への対処を行きわたらせる議論を徹底するよう要請。

 「時には、それは気の遠くなるような問題のように思えるかもしれないが、福音を告げ知らせる教会の信頼性に対して、性的虐待がもたらしている脅威に、包括的な方法で対処できるよう、ぜひこの難題に取り組んでいただきたい」と強く要望した。

 さらに、総会での議論の「有意義な時間」を虐待への対処に充てること、生存者が体験談を共有する場を設けることを求め、教会のすべての奉仕活動が「虐待の被害者たちにとって歓迎、共感、そして加害者との和解の場となる日」を目指して努力するよう求め、 「被害者たちの訴えを沈黙させ、虐待への対処の重要性を矮小化し、再生への希望を抑圧する教会や社会の人々の間に蔓延する”自己満足”。それを非難する人々と協力しましょう」と呼びかけた。

 またシノドス総会参加者たちに対し、「教会が、その管理下で多くの人々が犯した過ちについて完全な説明と全責任を負う日」が来るために活動するよう促し、子供たちが「適切な安全政策と手順」によって守られる日が来ることへの希望を表明した。

また、教会や関連施設において さらなる透明性が必要であり、被害報告は、「許容可能な基準」に従って、誰でもが空く説できるようにする必要があるとし、「教区、学校、病院、修養施設や養成施設、その他の施設における子どもの保護とその責任が真剣に受け止められる日はまだ到来していない。多くの人にとってそれは遠い遠い先の話のように思われている」と述べ、 「こうした長期目標の達成に向けて、今総会の会議の1日や2日だけでなく、シノドスのプロセス全体を通して検討するよう強く勧めたい。その成功は、私たちが主の弟子として、より良い道を求め、傷ついた人々や忘れ去られた人々とともに歩んでいることのしるしとなるだろう」と強調した。

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 声明で、同委員会は世界の教会の性的虐待への取り組みなどについて、私たちは、教会内で責任ある立場に人々の言動、被害を受けた人々の叫び、信徒やその他の活動、そして教会活動の非常に多くの分野に関連した残虐な行為についての報告を聞き、動揺している」としたうえで、「性的虐待事件はメディアに取り上げられるものもあるが、黙殺されているケースもあり、多くの被害者が沈黙を強いられる中で苦痛にあえいでいる」と指摘した。

 「すべての虐待は、加害者によってだけでなく、それに対応できない、対応に消極的な教会によって、被害者たちをひどく傷つけ、激しい痛みをもたらしている」と述べ、そうした加害者や教会関係者には「自らが犯した行為がもたらした現実に対して考える気すらない」と強く批判。

 さらに、最近のいくつかの事件は「『加害者を罰し、不正行為に対処する義務を負う人々の責任を問うことを目的とした現行の規範』に致命的な欠陥があることを示している… 虐待事件の判決中も判決後も、心身に深い傷を負った被害者を暗闇の中に放置するような手続きの不備が、改められずに長い間放置されている」とも指摘。

 委員会は、「現法の規範、手続きの欠陥を調査、研究し、必要な見直しを行い、虐待を受けたすべての被害者が『真実、正義によって償いを受けられる』」ようにし、教会の権威ある立場にある人々に対し、「任務を効果的に遂行し、さらなる違反のリスクを最小限に抑え、すべての人にとって敬意を払う環境を確保するために、性的虐待の犯罪に対処する」よう強く求めていくことを約束した。

 声明ではまた、委員会が2014年に教皇フランシスコによって設立されて以来、性的虐待の現実と、虐待と「教会指導者による虐待への誤った対応」に対処する「断固とした改革」に向けた数多くの取り組みを監督してきたが、「児童保護に関する2019年の世界司教協議会会長会議が開かれた後も、深いフラストレーションが正義を求める人々の間に特に残っている、とし、「(性的虐待に正義を持って対応する取り組みに)容認できない抵抗が続いている。それは、教会内の多くの人々の決意の欠如を示しており、しばしば深刻な人的、物的な”資源不足”によってさらに悪化するケースもみられる… 教会指導者たちの司牧的回心がなければ、この分野で効果的な変革は、ほとんど期待できない」と言い切った。

 

 

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2023年9月29日