・(解説)教皇のタイ、日本訪問-多くに人が注目する「核兵器」に対する発言(LaCroix)

(2019.11.20 LaCroix  Nicolas Senèze Vatican City)

 教皇フランシスコの19日からのタイ、日本訪問は、個人的かつ戦略的な旅。アジア訪問は韓国(2014年)、スリランカとフィリピン(2015年)、ビルマとバングラデシュ(2017年)に続く4度目となる。

アルペ師を通じ、宣教の地として夢見た日本

 日本は、教皇が青年時代に夢に見た国だった。若きイエズス会士として日本行きを望んだが、入会した直後に大病を患い、夢を果たすことができなかった。彼が故郷、アルゼンチンのイエズス会管区長となって以降、数名の会員司祭を日本に送った。その一人が、現在、日本管区長となっており、訪日中の教皇の通訳を務める。

 教皇は、訪日中に、日本で宣教師として働く希望を抱くもとになった故ペドロ・アルペ神父(1907-1991=元イエズス会日本管区長、後にイエズス会総長)の足跡をたどることになるだろう。アルペ神父は、広島に原爆が投下された当時、近郊のイエズス会修道院の院長として被爆し、彼の社会的使徒職の召命は、その時の原爆犠牲者たちの心と体の「痛みに接した経験」に根ざしています。

 また教皇は、タイ訪問でも、アルペ神父に言及する可能性がある。神父はバンコクを訪問、イエズス会のタイ管区で会士たちに対して、難民問題に積極的に関わるよう強く訴え、ローマに帰国後に脳卒中に見舞われ、結果として総長退任を余儀なくされた。

「外に出よ」と励ます教皇だが、タイで難民キャンプは訪問せず

 教皇も、昨夏、イエズス会の欧州の司祭たちに「イエズス会は勇気を持って、外に出、さまざまな思考、問題、使命が交差する場所に赴かねばなりません」と訴えている。

だが、今回のタイ訪問で、教皇は難民キャンプを訪ねない。そのことは、「教会は社会の場でも、教育の場でも活発であるべきであり、今の教会は社会的に排除されている人々、少数派の人々の声を聴くことに消極的」と考えるタイの多くのカトリック教徒にとって、残念なことだ。

信徒がわずかな日本、多くの問題を抱える

 日本でも、教皇は、社会、特に教育機関における存在が、総人口の0.4パーセントしかいないカトリック教徒と釣り合わない教会と出会うことになる。また、大部分が外国からの人々で占められている信徒の中には、日本での教会の活動が控えめすぎると感じたり、日本の文化風土を異なる信仰表現をしたり、多くの日本人にショックを与える恐れをもたらす者もいる。

 また、新興の信仰団体で海外では人気のある『新求道共同体の道』が計画した神学校の開校に司教たちが難色を示し、マカオに場所を変更するという動きもあった。また、カトリック教徒の中には、政治的と考えられる問題、例えば、反核や憲法改正反対など特定の政治的主張に関わりすぎている司教たちを批判する声もある。

日本で幅広い支持のある「死刑」制度への言及は?

 そうした中で、教皇が25日朝に東日本大震災被災者との集いに参加され、この震災での地震、津波、福島原発事故の「3つの災害」の犠牲者に対する講話をされるが、それ以外の場での講話も含めて日本では幅広い支持のある死刑についても言及される可能性があり、注目されるところだ。26日朝の上智大学での講話も、伝統的な社会的絆の崩壊が進む社会の問題にどのように触れるか関心がもたれている。

 だが、日本滞在中の教皇の発言で最も注目されるのは、核兵器に関してだ。教皇は24日、長崎の爆心地公園で核兵器に関するメッセージを発せられた後、広島に飛び、平和のための集いに参加され、ここでもメッセージを出される。

 バチカンのピエトロ・パロリン国務長官は、昨年9月の国連総会で「教皇は、核兵器の完全な撤廃のために、可能な限り強力な呼びかけをすることを怠らない」と述べ、バチカンが核兵器禁止条約への支持を確認している。バチカンが同条約を批准した2017年以来、核兵器を保有する国々はバチカンとの間で激しいロビー活動を展開しており、多くの政府高官が教皇の立場に影響を与えようとバチカンもうでを繰り返している。

 24日の長崎での教皇の核兵器に関するメッセージで、彼らの意見が聴き入れられたかどうかが、明らかになるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年11月21日