・「『赦し』と『慈しみ」は私たちの生涯の課題」年間第24主日・菊地大司教メッセージ

2023年9月16日 (土) 週刊大司教第142回:年間第24主日A

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 東京教区では、森司教様、西川哲彌神父様に続いて、9月10日にパウロ・テレジオ古賀正典神父様が帰天されました。葬儀は19日の火曜日午後1時半から、東京カテドラル聖マリア大聖堂で行われます。お祈りください。

 古賀神父様は、一時、神学生時代にレデンプトール会の志願者として名古屋で養成を受けられたこともあり、私にとってはその当時からの知り合いでありました。年齢は私より一つ下であります。東京教区司祭として1990年に叙階後、小教区司牧や教区本部事務局で働かれ、私が司教になった2004年頃は、中央協議会の法人事務部長も務めておられました。その後体調を崩し、2017年からはペトロの家で療養生活を続けておられましたが、この9月10日の早朝、帰天されました。古賀神父様の永遠の安息のためにお祈りください。

 秋田の涙の聖母で世界に知られている聖体奉仕会修道院で、4年ぶりに「秋田聖母の日」が開催され、地元の成井司教様に、大阪の酒井司教様と私も加わり、9月15日のミサは秋田県内外の司祭も含めて、司教三名、司祭6名で、集まった150名を超える方々とともに、ミサを捧げ祈ることができました。私がミサを司式させていただきましたので、説教原稿は別掲します。

 以下、16午後6時配信、年間第24主日メッセージ原稿です。

【年間第24主日A 2023年9月17日】

 多分に身勝手な私たちは、自分の過ちは「無条件で赦してほしい」と願うのに、自分に対する他者の過ちには、そう簡単に「赦してしまおう」という気持ちにはなりません。慈しみと赦しは、私たちにとって「生涯の課題」であるとも言えるでしょう。

 本日の第一朗読であるシラ書も、そしてマタイ福音も、赦しと和解について記しています。

 私たちが他者との関係の中で生きている限り、どうしてもそこには理解の相違が生じ、互いを理解することができないがために裁いてしまい、その裁きは時として怒りを生み、結局のところ、相互の対立を導き出してしまいます。シラ書は、人間関係における無理解によって発生する怒りや対立は、「自分と神との関係にも深く影響するのだ」と指摘します。他者に対して裁きと怒りの感情を抱いたままでは、自分と神との関係の中で、赦しをいただくことはできない。

 私たちは完全なものではありませんから、しばしば罪を犯し、神の求める道を踏み外したり、神に背を向けてしまったりします。人生の中で何度そういった過ちを悔い、神に赦しを願うことでしょう。しかし神は、神に赦しを請う前に、他者と自分の関係を正しくすることを求めます。他者との人間関係において、赦しと和解が実現しなければ、どうして神に赦しを求めることができるだろうかと、シラ書は指摘します。

 マタイ福音は、「七回どころか七の七十倍までも赦しなさい」というイエスの言葉を記しています。もちろん、「490回赦せばいい」という話ではなく、「七の七十倍」という言葉で、限りない深さを持った神の赦しを示しているのです。またその赦しをいただいたものが、その憐みを他者との関係における自らの行動につなげるのではなく、反対に隣人を無慈悲に裁いた話をイエスはたとえとしてあげ、「他者を裁くものには、神の赦しがないこと」も明示されています。

 私たちは、なぜ、赦し続けなくてはならないのか。それをパウロはローマの教会への手紙で、「私たちは、生きるとすれば主のために生き、死ぬとすれば主のために死ぬのです」と記すことで、私たちの人生そのものが、「主ご自身が生きられたとおりに生きることを目的としているのだ」と指摘します。

 その主の人生とは、十字架上の苦しみの中で、自らの命を奪おうとしているものを赦す慈しみであり、愛するすべての命の救いのために、自らを犠牲にする「愛と慈しみそのもの」の人生です。ですから私たちは、憐み・慈しみそのものである神に倣って生き、他者との関係の中で、徹底的に赦し、常に互いを受け入れ合う道を歩まなくてはなりません。それは、私たちが、愛と慈しみそのものである主イエスに従うのだと、この人生の中で決めたのだからこそ、そうせざるを得ないのであります。

 「生きるとすれば、主のために生き、死ぬとすれば、主のために死ぬのです」というパウロの言葉に、今一度、心を向けましょう。

(編集「かとりっく・あい」=「許す」と「赦す」は、どちらも「ゆるす」と読む同訓異字です。「許す」の意味は、相手の願いや申し出を受け入れたり認めることです。「赦す」の意味は、罪や過失を咎めないことです。聖書でよく使われるのは後者です。ひらがなではこの言葉のニュアンスが伝わりません)

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2023年9月16日