【教皇モンゴル訪問2日目】民主主義国家モンゴルの、人権と平和の促進への取り組みを讃えるー要人、外交団との集会で

Pope Francis and the President of MongoliaPope Francis and the President of Mongolia

 1日にモンゴル入りされた教皇フランシスコは、時差調整を終えた2日朝、首都ウランバートル市内での歓迎式典の後、大統領府に向かわれ、フレシュク大統領を表敬訪問され、国家宮殿で同国の政府、民間の代表や外交団との集会に大統領と共に参加された。

 集会での挨拶で教皇は、世界平和促進におけるモンゴルの積極的な役割を称賛されるとともに、モンゴルの”小さな”カトリック教会共同体がこの国の豊かな社会の構築に貢献していることを強調された。

 挨拶の中で教皇はまず、モンゴルという広大な遊牧国家を、「友情の巡礼者」として旅する喜びを表明され、「モンゴルとバチカンとの現代での外交関係はまだ30年しか経っていませんが、最初の接触はモンゴル帝国時代の13世紀に遡ります」と指摘されたうえで、 「私はその戸口に立つ友愛の巡礼者。喜びに満ちた心と、あなたの前で人間的に豊かになることを望みながら、静かにあなたがたの所にところへやって来ました」と述べられた。

*「モンゴルの遊牧民の伝統は神の創造物への配慮の模範」

 続いて教皇は、伝統的なモンゴルの円形のテント—ゲル—に象徴される、この国の歴史ある遊牧民の伝統に触れ、「何世代にもわたって牧畜や農園経営を経て成熟したモンゴル人の『土着の知恵』は、キリスト教徒が価値を置くものに感謝し、注意深く育て、神の創造、そして、責任ある環境政策を反映する配慮と先見性の文化をもって、人類を荒廃させる動きと闘うのに役立ちます」と強調。さらに、モンゴルの土俗宗教の伝統的なビジョンと、仏教哲学から受け継がれた、すべての生き物に対する敬意が、地球を保護し、保存するための緊急の取り組みに、大きな貢献をすることができます」と付け加えられた。

*伝統と現代性

 また「ゲルは『伝統と現代性の価値ある”結婚”』を象徴している、と指摘され、「それと同じように、皆さんは特にここ数十年、『開発と民主主義』という世界規模の大きな課題に直面しながらも、自らのルーツを守り続けて来られました。それはモンゴルの人々の継続性の証しです」と語られた。

 

*モンゴルの核拡散阻止の姿勢を評価

 さらに教皇は、現代の民主主義国家モンゴルの、人権と平和の促進への取り組み、特に核兵器のない国であり続け、核拡散を阻止する変わらぬ決意を称賛され、 2023年が建国者チンギス・ハーンの生誕860周年にあたることを思い起し、 「豊かな歴史と空に開かれたこの国で、無数の紛争で荒廃した世界に平和をもたらす天からの贈り物を祈り、共に平和の未来を築くために努力しましょう」と呼び掛けられた。

*信教の自由の象徴

 教皇は続けて「深い精神的感受性」がモンゴルの文化的アイデンティティに織り込まれ、今日のモンゴルを「信教の自由の象徴」にしている、と指摘。 「宗教がその本来の精神的遺産に根ざしており、宗派の逸脱によって腐敗しないとき、宗教は健全で豊かな社会の構築において信頼できる助けであることを証明され、その中で信者は平和的共存と政治的利益を確保するために努力するのです」とされ、先見の明を持つ人々は、公益のために一層、必要とされており、「国全体を貧困化させる功利主義的で不謹慎な考え方がもたらす汚職の潜伏的な脅威に対する安全策でもあります」と付け加えられた。

 また、共産主義政権の無神論的イデオロギーに染まったモンゴルが、「現在では、異なる信仰を持つ信者間の調和のとれた協力の基本的な重要性を認識し、尊重するようになっています。信者たちは、それぞれ独自の観点から、宗教の発展、 人々の道徳的かつ精神的な進歩に貢献しています」と強調された。


*カトリック教会共同体のモンゴル社会への貢献

 加えて教皇は、「小規模で控えめなモンゴルのカトリック教会共同体は、この国に人的・精神的に貢献することを、喜びを持って続けていきます。モンゴルのカトリック教徒は連帯、普遍的尊重、宗教間対話の文化を広め、正義、平和、社会調和のために働くことによって、今のこの国を助けています」と述べられた。

 さらに、モンゴル政府と教皇庁の間で現在検討されている二国間協定が締結されれば、「カトリック教会が従事する通常の活動を遂行するのに不可欠な条件を整えるための重要な手段となるでしょう」と締結実現への期待を示され、今回のモンゴル訪問のモットである「共に希望を」を思い起しつつ、「今回の使徒訪問で、共通善の追求における教会とモンゴルの間の実りある協力と敬意を持った対話を深めることができるように」と希望を表明され、次のように締めくくられた。

 「モンゴルのカトリック教徒は、この偉大な土地に住む他のすべての人々と対話し、協力しながら、豊かで安全な社会の構築に、惜しみなく貢献し続けることを、私は確信しています。モンゴル社会のさまざまな構成要素が、このユニークな人々の素晴らしさと高貴さを世界に提供し続けることができますように」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年9月2日