「世界人権宣言採択から70年を経た今も、多くの基本的人権が侵害されている」

教皇フランシスコとバチカンの外交団による新年の挨拶交換 – RV

(2018.1.8 バチカン放送)教皇フランシスコは8日、バチカン宮殿の王宮の間で、バチカンの外交団と新年の挨拶を交換された。

 バチカンと外交関係にある国・組織は、昨年5月にミャンマーがバチカンと国交を樹立し、マルタ騎士団と欧州連合を含めて185で、これらから大使が出席した。

 教皇は挨拶で、今年が第一次世界大戦の終結から100年、1948年12月に国連総会で世界人権宣言が採択されて70年にあたることに言及したうえで、人権という観点から、今日の世界情勢を展望された教皇は、平和の構築と軍縮、命や家庭の保護、移民問題、宗教の自由、環境保全など多岐なテーマに触れられた。

 そして、「世界人権宣言採択から70年を経た今も、多くの基本的人権が侵害されている」と述べ、「中でも侵害されているのは、生命、自由及び身体の安全に対する権利です」とし、そうした権利を傷つけるものとして「戦争や暴力だけではなく、生まれてくる前から大人のエゴイズムで排除される命や、疎外される高齢者、暴力にさらされる女性、人身売買やあらゆる隷属の犠牲となる人々、特にその危険に晒されている難民など、現代社会の中の気付きにくい形の人権の侵害」を挙げられた。

 そのうえで、「生命や身体の安全を守るために、すべての人に医療と必要な社会福祉が保障されるように」強く希望した。

 また、「生命を守るためには、何よりも平和構築に精力的に取り組まなくてはならない」と述べて、平和と軍縮の緊密な関係を示し、「紛争の解決は武力ではなく和平交渉によるべき」というバチカンの姿勢を改めて強調。具体的には最優先の課題の一つとして、朝鮮半島危機の解決のため、「(関係国の)対話を、あらゆる形で支えることが急務」と述べ、「対話によって現在の対立を克服する新しい道を見出し、相互の信頼を育み、朝鮮半島と世界に未来の平和を保障する必要がある」と訴えられた。。

 シリアの長期紛争の終結や、イラク、イエメン、アフガニスタン国内の紛争当事者の和解と平和的共存の早期実現を願われた。また、米国によるイスラエル大使館のエルサレム移転決定をきっかけに緊張が高まっているイスラエルとパレスチナの関係に触れ、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の聖地であるエルサレムの問題について、国連主導による解決を各国がそろって尊重するように促した。また、ベネズエラ、南スーダン、コンゴ民主共和国、ソマリア、ナイジェリア、中央アフリカ、ウクライナに対しても、紛争の解決と平和への努力を訴えられた。

 人権を守る上で、また未来の社会の発展のためにも、社会の基本的な核をなす家庭を守り、支援することの重要性を確認。移民問題に関連して「自分の国も含めてどの国からも立ち去り、あるいは自分の国に帰ることができる」移動の権利を強調するとともに、自分の国で生活することを望みながらも、差別や、迫害、貧困、環境破壊などのために国を離れざるを得なかった人々に思いをはせされた。

 さらに、信教の自由を守る必要性についても強調し、信教の自由には「自らが信じる宗教を変える自由も含まれる」と述べて、世界の幾つかの国で施行されている「国民の改宗を禁じる法律」に対して真向から挑戦する姿勢を示した。そして、「嘆かわしいことですが、信教の自由についての権利は、しばしば無視され、宗教は、新たな形の過激主義のイデオロギー的な正当化や、あからさまに迫害することはしないまでも、信仰者を社会的少数派とする口実に使われている」と批判した。

 また、社会の平和と発展のために、「労働の権利」の重要性を強調されたほか、環境保護に関して、「次の世代に今よりももっと美しく、住みやすい世界を残す責任を一致した努力をもって果たす必要がある」とし、各国が地球温暖化防止のパリ合意に基づいて、地球の大気と人間の健康を害する温室効果ガスの排出削減に向けて一層の努力をするように強く求めた。

(バチカン放送の日本語文をもとに、公式英語訳などを参考にして「カトリック・あい」がまとめました)

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2018年1月9日