♰沈黙と祈り… 教皇が子どもたちと聖金曜日の十字架の道行き

(2021.4.2 Vatican News  Linda Bordoni)

 教皇フランシスコは2日夜(日本時間3日未明)、新型コロナ感染予防のためほとんど参加者のいないサンピエトロ広場で、聖金曜日恒例の十字架の道行きを主宰された。

 今回の十字架の道行きは、コロナの世界的大感染が続くなど様々な苦境の中で孤独と孤立にさいなまれる世界の人々への未来への希望を願って、その象徴ともいえる子供たち、若者たちに準備が任された。

 サンピエトロ広場の中央に設けられた飾りの無い壇上から教皇が見守る中を、子どもたちが父母や聖職者、教師たちに付き添われ、たいまつの火で作られた小道に沿って、祈りと共に十字架を運びながらオベリスクの周りを回った。

 バチカンでは、教皇パウロ6世が1964年に古代の「十字架の道」の伝統を復活させて以来50年以上にわたって、ローマのコロッセオを背景にする形で、イエス・キリストの受難と死を再現するこの儀式を教皇が主導して続けてきた。

Way of the Cross 2021

  だが、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で昨年の聖金曜日からは、感染予防のため、厳しい制限の下で行うことを余儀なくされ、代わりにインターネットなど様々なメディアを通じで、世界に動画中継され、世界中の多くの信徒が参加した。

 3日夜の道行きでは、地点ごとに福音書の受難の場面が朗読され、瞑想を挟んで教皇による祈り、聖歌が歌われた。この典礼は瞑想が中心となり、教皇は説教をなさらなかった。

 十字架に向かって沈黙の中で祈ることは、新型コロナウイルス感染が悲しみと孤独をもたらし続け、疎外と失業、貧困と不正、そして無関心の「ウイルス」が死と絶望を引き起こし続けている、”沈黙”させられた世界の中で最も強力なコミュニケーション手段となる、という教皇の思いからだ。

 道行きの最後の祈りでは、子どもたち、若者たちが、復活のカギと希望を握っていることを強調し、「主よ、慈しみ深い父よ… この年に、改めて、私たちは十字架の道を、あなたの子、イエスのあとについて歩みました。あなたの王国に入るための模範として、ご自身が私たちの前に用意された子供たちの声、そして祈りを聴くことで、私たちはイエスに付き従いました」とした。

 そして、「私たちが、小さく、すべてのことを必要とし、命に開かれた子どもたちと同じようになるよう助けてください。私たちが、清い心と物事をはっきりと見る力を取り戻すことができますように。私たちの世界の子どもたち1人ひとりを祝福し、守ってくださいますように。すべての子どもたちが知恵、年齢、そして恩寵を重ねて育ち、彼らの幸せのためのあなたの特別な計画を知り、それに沿って生きることができますように」と祈った。

 この夜、世界は教皇にとってとても豊かなものとなった。広くで暗くされた舞台の中央、白衣の”孤独な預言者” 、教皇は、使徒的祝福を送られ、子どもたちの道行きでの祈りに感謝し、ゆっくりと歩いて聖ペトロ大聖堂に戻られた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年4月3日