(2021.10.29 バチカン放送)
31日からの国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前に、教皇フランシスコが29日、英国国営BBCのラジオ番組「Thought for the Day」で、会議へのメッセージを出された。
メッセージで、教皇は、気候変動と新型コロナウイルスの世界的大感染は、私たち皆のもつ根本的な脆さを明るみに出し、経済システムと社会のあり方について多くの問いと疑念をもたらした、とされ、「医療、環境、食料、経済、社会、人道、倫理など様々な分野に及んだこの一連の危機は、私たちの”共通の家”の未来のために、展望と計画策定能力、速やかな対策の実行を求め、大胆な選択の前に私たちを立たせています」と語られた。
そして、「危機の時は、機会の時。それを無駄にすべきではありません。危機に際して、孤立、保護主義、搾取を優先させるか、あるいは真の変革の機会、精神的な意味だけではない回心の真の転換点とするか。後者の道だけが、光ある未来に導く」とされ、「それは新たにされた世界レベルの責任と正義、運命と共にし、人類家族としての自覚に基づく、新しい連帯を通してのみ実行可能です。これは、共通善のための『文明の挑戦』、今日と未来のすべての人の尊厳を中心に据えた考えによる『展望の改革』なのです」と訴えられた。
また、「今回の危機から私たちが学んだ最も大切なことは、『共に築くこと』。自分たちだけで危機から脱出することはできません」と強調。さる10月4日にバチカンで行われた諸宗教指導者と科学者による集いで、「このままでは、生まれたばかりの私の孫は50年以内に居住不可能な世界に住むことになる」と警告したある科学者の言葉が強く印象に残ったが、「そのようなことがあってはならない。”航路”転換に、一人ひとりが取り組む必要があります」とするとともに、「いたわりの文化」を作るために、強欲や、無関心、無知、怖れ、不正、不安定、暴力などの”紛争の種”を取り除く必要を改めて示された。
最後に、「人類がこの目標に達するために、今日ほど多くの手段を持ったことはありません。COP26に参加する世界の政治家たちはもとより、私たち一人ひとりが、気候変動と環境破壊の脅威に対する共通の答えを出す役割を担っているのです」と訴えられた。(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)