☩「気候変動の危機と”コロナ”後に対処する新たな世界構築を共に」COP26へメッセージ

(2021.11.3 カトリック・あい)

 教皇フランシスコが、10月31日から始まった国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)のアロック・シャルマ議長あてにメッセージを送られた。

*人的、資金的、技術的資源を注ぎ込む政治的意思が必要

 2日にバチカン広報局が発表したメッセージで、教皇はまず、「私たち皆が認識しているのは、気候変動のもたらす弊害を緩和し、最も強い影響を受けている世界の貧困層、脆弱国を助けるために、誠実さと責任、勇気をもって、さらに多くの人的、資金的、技術的な資源を注ぎこむ政治的意思を、国際社会全体に対して示す重大な役割を、この会議が担っている、ということです」と、会議が気候変動対策で大きな成果を上げることへの期待を表明された。

*コロナ感染前とは異なる新たな世界を共に構築

 また、この会議が、ほぼ2年にわたって私たち人間家族に大きな打撃を与えている新型コロナウイルスの大感染の最中に開かれていることに注目され、「コロナ大感染は、測り知れない悲劇を私たちにもたらしていますが、克服のために、私たち全員が参加せねばなりません。そしてそれには、世界の人々の強い連帯と友愛的な協力が必要です」とされ、「コロナ大感染後の私たちの世界は、感染が始まる前の世界とは必然的に異なったものになる。過去の過ちを認識したうえで、私たちが共に構築していかねばならない」と訴えられた。

 そして、「気候変動の地球規模の問題に取り組みでも、同様のことが言えます。私たちが協調し、責任ある方法で行動する場合にのみ、パリ協定によって設定された諸目標を達成することができます。これらの目標は野心的なものですが、もはや先延ばしすることはできません。今日、必要な決定を下すのは、皆さん次第です」と、会議に参加者した各国代表の努力を促し、特に先進国には、「脱炭素化、循環型経済など、気候変動対策への取り組みで、脆弱国に対する人的、資金的、技術的支援に主導的役割」を果たすよう求めた。

*持続可能な経済に必要な新しいライフスタイル、”いたわりの文化”

 バチカンとしての様々な取り組みの中で、特に、未来を背負う若者たちの間にそうした取り組みに沿った「新しいライフスタイル」を促進し、友愛と人間同士のつながりを中心に置いた持続可能な経済発展の文化を育てるような教育の必要性を認識するようになったこと、昨年10月にはバチカン主導でCOP26 を視野に入れた宗教指導者や科学者の会議を開き、さまざまな意見を交換し、現在の世界で支配的になっている「使い捨て文化」を、私たちの”共通の家”とその”家族”のための「いたわりの文化」に移行させる、という決意表明に至ったこと、を説明。

 そのうえで、「新型コロナの大感染によって私たち人間家族に負わされた傷と気候変動による弊害は、世界的な紛争が引き起こしているものに匹敵する」と指摘され、第二次世界大戦による荒廃からの復興に世界が力を合わせたように、「今、国際社会全体で、協調し、連帯し、先見の明のある行動目標を最優先事項として設定する必要があります」と強調された。

*”環境債務”や”環境難民”の増大抑える先進国の役割

 また、環境への被害と商業的利益の不均衡、および自国と他国の天然資源の均衡を欠いた使用がもたらす”環境債務”が増大しており、それが対外債務の増大につながって、しばしば人々の生活の向上、発展を妨げている、とも指摘され、新型コロナ感染終息後の世界では、気候変動がもたらす緊急事態への対応策として、「より持続可能で公正な世界経済の経済再編」に本格的に着手し、 「先進国は、再生不可能なエネルギーの消費を大幅に制限し、貧しい国々の持続可能な経済成長政策を支援することによって”環境債務”の返済を助けねばなりません」とも語られた。

 このような緊急の必要性が高まる中で、世界の現状を見ると、「残念なことに、気候変動に対処するために設定された国際的な目標の達成には、ほど遠い状態」にあり、「あまりにも多くの兄弟姉妹がこの気候変動の危機に苦しんでいる。数え切れないほどの人々、特に最も脆弱な人々の生活は、ますます頻繁に、壊滅的な影響を受け、子どもの生存の権利が脅かされ、近い将来、”環境難民”の数が、戦争や紛争による難民の数を上回りかねない状況にある」とも指摘。

*若者たちのこの”惑星”での未来は、私たちの選択にかかっている

 「私たちは、このような現状を正直に認めねばなりません。今の状態を続けるわけにはいかないのです。今こそ、ただちに、勇気を持って、責任を持って行動する時です。私たちに行動を強く促している若者たちが、私たちから継承するこの惑星は、私たちが行おうとしている選択にかかっている。彼らがこの惑星の将来に希望と信頼を置くことができるかどうかの瀬戸際になのです」と会議参加者に改めて努力を訴え、会議が大きな成果を上げることができるよう、祈られた。

(バチカン広報局発表文の翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2021年11月3日