☩「『無関心の文化』が医療格差を生んでいる」ー教皇、「世界病者の日」にメッセージ

教皇フランシスコ ローマの小児科専門病院訪問で 2013年12月教皇フランシスコ ローマの小児科専門病院訪問で 2013年12月 

 カトリック教会は毎年、ルルドの聖母の日の2月11日に「世界病者の日」を記念しており、今回で30回目となる。教皇フランシスコは、前日10日に教皇庁人間開発省主催で開かれたインターネット会議にメッセージを送られ、教会、そして社会の中で、苦しむ人の傍に愛をもって寄り添うすべての人々に感謝を述べられた。

 教皇は、「病気の経験は、私たちに自分の脆さを感じさせるとともに、他者の助けが必要なことを認識させ、人生の意味を異なる角度から考えさせますが、その答えはすぐには見つからないこともあります」とされたうえで、「聖ヨハネ・パウロ2世が自身の個人的な経験から、苦しみのキリスト教的な意味を追求する道に人々を招いたこと」を思い起こされ、「その道は、自分の苦しみに押し潰されることなく、自分をより大きな愛へと開くものとなります」と語られた。

 そして、「人がキリストの苦しみを分かち合う者となるとすれば、それはキリストがご自身の苦しみを人に開かれ、その贖いの苦しみにおいて、すべての人の苦しみを分かち合われたからです。人間は信仰を通して、キリストの贖いの苦しみを発見しつつ、同時に、信仰を通して、新しい内容と意味で豊かにされた自分の苦しみを再発見するのです」という聖ヨハネ・パウロ2世の言葉(1984年 使徒的書簡「サルヴィフィチ・ドローリス − 苦しみのキリスト教的意味 −」)を引用された。

 また教皇は、「一人ひとりの病人の尊厳と脆さを決して忘れないように。体、精神、愛情、自由、意志、霊的生活といった幅広い観点からのケアに配慮するように」と願われ、「体は救われても、人間性を失うようなことがあってはなりません… 病人に尽くした聖人たちは、師イエスの教えに常に従い、体と魂の傷を癒やし、肉体的・霊的な回復の両方のために祈り行動したのです」と説かれた。

 さらに、「現代世界で広がっている”個人主義”と”他者に対する無関心”が、消費主義的な幸福を追い求める社会と行き過ぎた自由経済の中で拡大され、結果として、医療分野での不平等、ー高度医療を受けられる人々と、基本医療を受けることさえ難しい人々との格差ーが生じています」と指摘。「この”社会的ウイルス”に打ち勝つ薬は、『皆が唯一の父なる神の子たちとして平等な存在だ』という認識に基づく、”兄弟愛の文化”にほかならなりません」と強調された。

 メッセージの終わりに教皇は、日々病いにある人々に寄り添うすべての人々、家族と友人、医師、看護師、薬剤師、医療技術者・従事者、また司祭や修道者、ボランティアらに心からの感謝を述べられ、「教会は、『人類の善きサマリア人』であるイエスに従い、常に苦しむ人々のために奉仕し、特に病者のために尽くしてきました… 最も貧しい病人たちのために献身する宣教師たちや、医療事業を始めた数多くの聖人たちを思いつつ、これからも人間の統合的な癒やしのための召命と使命のカリスマを新たに、苦しむ人々に寄り添い続けてください」と励まされた。

 そして、教皇は世界中の病いにある人々、特に孤独な人々、十分な医療を受けられずにいる人々を聖母の保護に託して祈り、すべての人に祝福をおくられた。

(編集「カトリック・あい」)

 

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2022年2月11日