◎教皇連続講話「悪徳と美徳」⑨「神の力は弱さの中で完全に現れる」(コリントの信徒への手紙2・12章9節)

(2024.2.28 Vatican News   Deborah Castellano Lubov)

 教皇フランシスコは28日、水曜恒例の一般謁見で、ここ数日の軽いインフルエンザ症状のため、代読の形で「悪徳と美徳」をテーマにした連続講話を続けられ、「妬みと虚栄の罪」に焦点を当て、妬みや虚栄は危険な悪徳だが、対抗するための治療法がある、自分自身を中心に置かず、弱さを受け入れ、 神が私たちの生活の中で働いてくださるようにすることだ、と説かれた。

 講話の要旨は次の通り。

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 今日は、霊的伝統が遺した悪徳のリストの中から、「嫉妬」と「虚栄」の二つを取り上げたいと思います。

 まず、「嫉妬」から始めましょう。聖書では、「嫉妬」は最も古い悪徳の一つとして登場します(創世記4章参照)。カインがアベルに対する憎しみを爆発させたのは、弟の献げ物に神が目を留められたことを知った時でした。カインは、アダムとエバの長子であり、父の遺産を十分に受け取っていましたが、弟アベルが小さな手柄を立てただけで動揺します。抑えることのできない嫉妬は、相手への憎しみを生み、アベルを殺してしまいました。弟の幸福に耐えられなかったからです。

 嫉妬の根底には、愛と憎しみの関係が存在します。相手の不幸を望む反面、「相手のようになりたい」とひそかに願います。相手の存在は、「自分がなりたいが、実際にはなれないもの」の現れです。相手の幸運は、あってはならないことに思われる。「自分の方が当然、その成功や幸運にふさわしい」と考えるからです。

 嫉妬の根元には、神に対する誤った考えがあります。嫉妬する者は、神が私たちとは異なる、独自の数学を持っておられることを認めることができません。たとえば、イエスの「ぶどう園の労働者」のたとえ(マタイ福音書20章)でも、早朝から働いていた者は、最後にやって来た者よりも多額の賃金がもらえる、と信じていました。しかし、主人はすべての労働者を同じ扱いにし、「自分の物を自分のしたいようにしては、いけないか。それとも、私の気前のよさを妬むのか」(同20章15節)と言ったのです。

 私たちは神に自分たちの利己的な論理を押し付けようとする。それに対し、神の論理は「愛」です。神が私たちに与えられる善は、分かち合うために作られています。ですから、聖パウロはキリスト者たちに、このように勧めています―「兄弟愛をもって互いに深く愛し、互いに相手を尊敬し…霊に燃えて、主に仕えなさい」(ローマの信徒への手紙12章10節)。これこそが、嫉妬への特効薬なのです。

 次に、「虚栄」について考えでみましょう。虚栄は嫉妬の悪魔と腕を組んで行きます。この二つの悪徳は、野心家で、自分を世界の中心と思い、すべての物と人、あらゆる賞賛と愛を利用することをためらわない人のものです。

 虚栄は、根拠なくふくらんだ自信。虚栄に満ちた人は、邪魔になるほど自我が大きく、共感に欠け、世界には彼以外の人が存在することに気づきません。人間関係はいつも道具的で、他者に対して横暴です。彼という人物、その手柄、成功は皆に見せびらかされなくてはならない。彼は永遠に自分への関心を乞い続ける。彼の才能が認められない時は、激怒する。彼にとって、間違っているのは相手であり、理解のレベルに達していないのだ、と考えます。

 霊性の大家たちは、虚栄の治療について、あまり助言していません。虚栄の治療法は、虚栄の人自身の中にあるからです。虚栄の人が世間から得ようと望んでいた称賛は、いつか彼から背を向けるからです。虚栄を克服するための最も素晴らしい教えは、聖パウロの証しの中に見ることができます。使徒パウロは、どうしても克服できない自身の一つの欠点に対し、常に決着をつけようとしていました(以下、コリントの信徒への手紙2・12章8‐9節参照)。パウロは「(サタンから送られた使いについて)離れ去らせてくださるように」と三度、主に願いました。ところが、主はこう答えられます―「私の恵みはあなたに十分である。力は弱さの中で完全に現れるのだ」。そして、パウロは虚栄から解放されたのです。パウロの体験の結末は、私たちのものにもなるべきです。「キリストの力が私に宿るように、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう」。

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 教皇は、ここ数日、「軽いインフルエンザの症状」を訴えられ、2月28日の一般謁見終了後、ローマ市内のジェメッリ・イゾラ病院を診断のために訪問、再びバチカンに戻られた。 教皇は、先週24日と26日、軽いインフルエンザの症状のため予定されていた謁見を中止されていた。

(編集「カトリック・あい」・聖書の引用は「聖書協会・共同訳」を使用)

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2024年2月28日