☩「平和の実現には他者を知り、耳を傾けること、知的柔軟性が必要だ」‐「アブダビ文書」5周年記念の国際学術研究会議へ

Pope Francis and the Grand Imam of Al-Azhar, Ahmad al-Tayyeb  (left) during his visit to the UAE in February 2019Pope Francis and the Grand Imam of Al-Azhar, Ahmad al-Tayyeb (left) during his visit to the UAE in February 2019  (ANSA)

 

 

*「対話と出会いの教育」が必要だ

 

 さらに、「戦争の悪の主な原因は、互いのことを知り理解していないことにある」とされ、「和平プロセスを開始するには相互信頼を築き、『人類の兄弟である他者』への否定的な認識を変える必要があります。そのために教育は非常に重要。他者への敬意と理解に基づく教育のない平和には価値がありません」と語られた。

 そして、 「もし私たちが、行動規範として相互協力を採用し、希望のある世界を構築したいのなら、 相互理解が方法と基準であるなら、今、取るべき方法は、対話と出会いへの教育です」と訴えられた。

 

 

*人の話を聞かないことは『友愛を損なう第二の罠』

 

 また教皇は、人工知能とは対照的に、人間の知能は基本的に「関係性」であることを指摘され、「相手の話を聞く力と、異なる視点を理解する上での真の対話の役割」を強調された。

 そして、「 人の話を聞かないことは、『友愛を損なう第二の罠』。話し合いをするために、私たちはまず、『聴くこと』を学ばねばなりません。様々な画像と雑音に満ちた超近代の多忙な世界とは対照的に、沈黙し、心を落ち着けることです」とされ、「家族、政治的あるいは宗教的な共同体、大学、そして民族と文化の間で、もっと耳を傾け合い、沈黙し、本当の言葉をもっと多く持つことができたら、どれほど多くの悪が避けられることでしょう… 異なる意見を受け入れる場を作ることは時間の無駄ではなく、人間性を高めることに繋がります」と訴えられた。

 

*議論には、知的な柔軟性が必要だ

 

 続けて教皇は、「ディベートは、個人を柔軟で、オープンで、友愛的なものにすることを目的とした、知的柔軟性の教育を意味しています」とし、2017年にカイロのアズハルで開催された国際平和会議での自身の言葉を思い起しながら、「知恵は他者を求め、過去を尊重し、現在と対話するものです」と語られた。

 

 

*「平和における友愛の夢」は言葉にとどまってはららない

 

 メッセージを締めくくるにあたり教皇は会議の参加者に対し、「平和における友愛の夢」を言葉の中に閉じ込めないように。豊かな対話で、柔軟性を養い、世界の声に耳を傾けるように」と促され、 「好奇心を持ち続け、柔軟性を養い、世界の声に耳を傾け、この世を恐れないでください。自分が選んだのではなく、愛することを学ぶために神があなたの隣に置いた兄弟の言葉に耳を傾けてください」と訴えられた。

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 なお、この国際会議は、人類友愛の推進に内在するさまざまな側面と課題を探る3つのテーマを中心に議論される。

 一つ目は社会法で、多文化および多宗教社会における完全な市民権の問題を検討し、特に宗教的少数派の法的保護に重点を置く。 目的は、宗教の自由と少数派の権利の承認に関連する問題だけでなく、優れた慣行を評価することにある。

 二つ目は地政学。参加者は現在の紛争における宗教とイデオロギーの役割を考察し、 宗教的過激主義と不寛容に対抗することを目的としたプロセスの前向きな例を特定するよう努める。 また持続可能な開発、人権、平和などの共通の目標を促進するために、政府や国際機関が宗教関係者にどのように関与できるかについても検討する。

 三つ目は、神学的対話で、アブダビ文書によって促された神学的考察を探求し、この包括的な友愛の理想に応えてキリスト教徒とイスラム教徒が友愛と使命についての理解をどのように再考しているかを分析する予定だ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2024年2月5日