また教皇は、「貧しい人の叫びと大地の叫びは、同じ叫びです… 環境問題の解決は、人々の貧しさや不平等を減らし、苦しむ人々に配慮するものでもなければなりません」と指摘された。
今日の世界に特徴的な「人間関係の貧しさ」についても言及。特に家庭の危機によって、「人々は、命を迎え入れ、守ることに困難をきたし、消費主義が、人々の孤独や心の空虚を満たそうとしていますが、それは『幸福の飢餓』を招くだけです」と警告された。
さらに、社会や経済における精神性の重要さを強調された教皇は、「すべての人間は生きるための意味を求めていますが、それは経済生活においても同様です… これまで宗教や伝統によって育まれてきた社会の『精神的な資本』を、現代世界は猛烈なスピードで消耗させ、若い人たちは今、『意味の欠如』に苦しんでいます」とされ、アッシジの聖フランシスコの清貧、貧しい人々への愛に触れつつ、「貧しい人々を中心に据え、貧しく弱い立場の人たちへの、尊重と愛といたわりのある経済を目指すように」と若者たちを促された。
このような考察を踏まえながら、新しい経済を構想する若者たちが努力すべきこととして、「貧しい人々の視点で世界を見ること」「働くことと、働く人の大切さを忘れないこと」「考えや希望を具体的な形にすること」の3点を強調され、最後に、「『善』と『命』を望む若者たちの歩みを支えてください」と神に祈られた。
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経済をテーマにしたこの集まりは、教皇フランシスコが2019年、世界各国の若いエコノミストや起業家、経済を専攻する学生、社会や共同体のために独自の経済活動を試みる若者たちを、環境、持続性、貧困問題、正義、平和などの広い観点を持った包括的な経済の考察へと招かれたことがもとになっている。最初の集まりは2020年3月にアッシジで予定されていたが、新型コロナの大感染の影響で同年11月に延期され、オンライン形式で行われた。
2回目となる今回の集まりは、イザヤ書の「見張りの者よ、今は夜の何どきか」「夜明けは近づいている、しかし、まだ夜なのだ」(参照 イザヤの預言12章11-12節)を表現する、「夜から夜明けへ」をテーマにしたパフォーマンスで始まり、アフリカ、南米、アジア、ヨーロッパ出身の若者たちが、それぞれを取り巻く環境、得た経験、これからの目標や夢を語った。集まりの最後に、参加者たちはこれからの目標リストを教皇に示し、教皇が若者たちの約束が記された紙にサインされた。
(編集「カトリック・あい」=表記の修正のうち、とくに”いのち”は当用漢字表記の「命」にしましたが、この漢字は「神に願い、いただいたもの」を表す会意文字であり、それ自体に深い意味を含んでいます。ひらがなでは、その意味が伝わりません。教会関係者には、「聖書・新共同訳」に影響されてか、ひらがなを多用する傾向がありますが、漢字も立派な日本語、日本文化の一部であることを認識する必要があります。)