◎教皇連続講話「使徒的熱意について」⑤聖霊に祈り求めなければ宣教の火は消える

(2023.2.22 Vatican news  Joseph Tulloch)

   教皇フランシスコは22日、水曜恒例の一般謁見で「使徒的情熱について」の連続講話をお続けになり、福音宣教における聖霊の中心的役割を強調、「聖霊に祈り求めない教会は、不毛で憔悴した議論の中に自分自身に閉じ込めてしまう」と警告された。

 (バチカン放送)教皇の講話の要旨は次のとおり。

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 「イエスは近寄って来て(弟子たちに)言われた。『私は天と地の一切の権能を授かっている。だから、あなたがたは行って、すべての民を弟子にしなさい。彼らに父と子と聖霊の名によって洗礼を授け、あなたがたに命じたことをすべて守るように教えなさい。私は世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる。』」(マタイ福音書28章18-20節)

 「使徒的熱意について」の連続講話の今回を、このイエスの言葉で始めましょう。

 復活されたイエスは「あなたがたは行って、すべての民を弟子にしなさい」と言われました。それは相手を教化したり、強制的に改宗を迫るのではなく、イエスとの関係の中に入り、イエスを知り、愛する可能性を一人ひとりに与えるように、ということです。

 また、イエスは「行って、洗礼を授けなさい」とも言われます。「洗礼」とは「浸すこと」を意味しますが、典礼的な行為を示す以前に、「自らの命を父と子と聖霊の中に浸し、私たちのそばに、父、兄弟、霊としておられる神の存在に毎日喜びを感じること」を表しています。

 イエスが弟子たち、そして私たちに「行きなさい」と言われる時、それは、聖霊と共に伝えられるのです。なぜなら、聖霊の力によってのみ、キリストからの使命を受け取り、それを継続できるからです(ヨハネ福音書20章21-22節参照)。

 使徒たちは、聖霊降臨の日が訪れ、聖霊が彼らの上に降りるまで、恐れから高間に閉じこもっていました(使徒言行録2章1-13節参照)。福音の告知は、聖霊の力によってのみ実現されます。聖霊は宣教者たちに先立ち、彼らの心を準備されます。聖霊こそ「福音宣教の原動力」なのです。

 「使徒言行録」のすべてのページが、福音の告知の主役が、「ペトロやパウロたちではなく、聖霊」であることを伝えています。「使徒言行録」に記されている初代教会には、今日の教会と同じように、慰めもあれば、悩みもありました。

 当時の教会は、信仰に入った異邦人たち、ユダヤ人ではない人たちに対し、モーセの慣習に従わせるかどうかで意見が分かれていました。使徒たちが集まり、「エルサレム使徒会議」と呼ばれる教会史上初の会議を開き伝統と革新の適当な妥協を図ろうとしましたが、それより先に聖霊が使徒たちの上に降り、同じように異邦人たちの上にも注がれ、聖霊の働きに従い、異邦人たちに対し「聖霊と私たちは、次の必要な事柄以外、いっさい、あなたがたに重荷を負わせない」(使徒言行録15章28節参照)ことを決め、律法に関わるほとんどの義務を取り去りました。感受性や意見の相違があるにもかかわらず、聖霊に耳を傾けたのです。

 聖霊は今でも有効な一つのことを教えていますー「あらゆる宗教的伝統は、イエスとの出会いに助けられるなら、有益だ」ということです。現代の私たちにも恩恵をもたらしている最初の教会会議の歴史的な決議は、「教会においては、すべてが福音宣教の必要に応じて形作られる」という「福音宣教の原則」に促されたものでした。

 保守派あるいは急進派の意見にではなく、「イエスが人々の生活に届くように」という必要に従うのです。ですから、一つひとつの選択や使用、組織や伝統は、「キリストを告げることを助ける」という尺度に従って判断されるべきです。

 このように、聖霊は、教会の歩みに光を与えています。「心の中の光」であるだけでなく、「教会を導く光」でもあります。物事を明確にし、判断や識別を助けてくれます。ですから、私たちは四旬節が始まった今日だけでなく、ひんぱんに聖霊に祈り求める必要があります。教会が機会や場所、共同体や活動グループを持っていても、聖霊に祈らなければ、宣教の火は消えてしまうからです。使徒パウロも「霊の火を消してはいけません」(テサロニケの信徒への手紙1・5章19節)と言っています。ひんぱんに聖霊に祈り、「私たちの中に、日々、その光を灯してください」と願いましょう。

 教会は、聖霊から出発し、そして新たに出発します。私たちの司牧の計画が、社会学的な調査や分析、諸問題や課題のリストから始まることはもちろん重要ですが、いちばん大切なのは、聖霊の体験から出発することなのです。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二=聖書の引用は「聖書協会・共同訳」による)

 

 

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2023年2月22日