◎教皇連続講話「世界を癒やす」⑧新型コロナ危機脱出の唯一の道は「共に助け合う」こと

Pope Francis at General Audience in the Courtyard of St. Damasus in the VaticanPope Francis at General Audience in the Courtyard of St. Damasus in the Vatican  (Vatican

(2020.9.23 Vatican News)

   教皇フランシスコは23日、水曜恒例の一般謁見で、「世界を癒やす」をテーマにした講話をお続けになり、今回は、新型コロナウイルスの大感染が終息した後の世界に目を向け、「相互補完の原則を用い、社会組織を再活性化する役割を、社会のあらゆるレベルが担っています」と強調された。

*相互補完の原則を貫くことが求められている

 この講話で教皇は、引き続き、教会の教えに照らした新型コロナウイルスの影響に言及し、「私たち1人ひとりが自分の責任を担うよう求められています」とされ、「私たちは未来に目を向け、社会を構成する全員の尊厳と賜物が大切にされる社会秩序のために働かねばならない」と強調された。

 そして、「相互補完の原則」について考察され、その意味をよりよく説明するために、教皇ピオ11世が1929年の大恐慌後に「相互補完の原則には、『上から下へ』と『下から上へ』の2つの動きがある」と語られたことを想起した。

*危機脱出に必要な各人の「自主性」と「率先して行動する能力」

 そのうえで、「危機から効果的に脱出するには、一人ひとりー特に弱い人ーの『自主性』と『率先して行動する能力』を尊重し、相互補完の原則を貫く必要があります」と述べ、この原則が、「全ての人に、社会の癒しと運命のために各自の役割を果たされるようにするのです」にもかかわらず、「多くの人々が隅へ追いやられ、排除され、無視されたりするゆえに、多くの人が共通の善の再建に参加できない」と嘆かれた。

 さらに、「特定の社会集団が、経済的または社会的に窒息させられているために、貢献できていない。中には、多くの人々が自分の信仰と価値観を自由に表明できないができない社会集団があるのです」と語られ、「他の所、特に西側世界では、多くの人々が自分の倫理的または宗教的信念を抑制していますが、それは危機から抜け出すやり方ではない。少なくとも危機から立ち上がる方法ではありません」と指摘された。

*個人、家族、企業…そして教会の貢献が決定的に重要

 教皇は「国家のような社会の最高レベルが、進歩に必要な資源を提供するために介入することは正しい」とされ、「公的機関が、適切な介入を通じて助けようとしている」と指摘したが、その際、「社会の指導者たちは中産階級以下のレベルの人々を尊重し、励まさねばなりません」と注文をつけられた。

 また、「個人、家族、団体、企業、あるいは仲介機関、さらに教会による貢献が、決定的に重要」であり、「自分の属する社会を癒す過程で、私たちすべてが責任を負う必要」があるが、そうした中で、「弱者を排除するという不正が、巨大な経済的、地政学的利益が凝縮する場で、しばしば起きています」と警告。例えば、アマゾン地域では「原住民の声、文化、世界についての見方への配慮がされていません」と指摘した。

 

*巨大企業優先の財政支援は問題だ

 さらに「今日の世界で、相互補完の原則を尊重しない風潮は、ウイルスのように広がっています。国が実施する大規模な財政支援策を見ても、実際に経済を動かしている人々や企業ではなく、巨大金融機関に耳を傾ける形で行われています」と述べた。

 また、新型コロナウイルスのワクチンや治療法を手に入れようとする現在の競争にについても、「良い方法ではない」とし、パウロはコリント人への第一の手紙で「体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです」(12章 22節)と説いているのを取り上げ、「相互補完の原則を実行することによってのみ、私たちは皆、社会の癒しと運命のための自己の役割を引き受けることができるのです」と説かれた。

*「連帯」には「相互補完」が必要

 そして、それを実践することで「もっと健康的で、もっと正義にかなった未来への希望が生まれます」とされ、「より大きな未来を目指し、私たちの視野と理想を広げて、未来を共に作り上げていきましょう」と呼び掛けた。

 教皇は、危機からの脱出する方法として「連帯」を挙げた以前のご自身の講話を思い起こしつつ、「連帯」を進めるには、「相互補完」が必要、と指摘。「家族、団体、協同組合、中小企業、仲介機関などの貢献、社会参加なしに真の連帯はありません」と語られた。

*危機に対処する人々を讃えるーだが「拍手」で終わりにしてはならない

 また、新型コロナウイルスの大感染で都市封鎖がされる中で、医師、看護師の努力に拍手喝采する人々の自発的な動きが、勇気と希望のしるしとして始まったことに言及され、「この拍手喝采を社会を構成する団体のすべてのメンバーに広げましょう。たとえそれが小さなものであっても、貴重な貢献に感謝しましょう」と呼び掛け、教皇自身も、危機の中で、自分たちのすべてを捧げてくれた何百万人ものボランティアに特別な感謝の言葉を、あらためて述べられた。さらに、「高齢者、子供、障害者を、働く人、奉仕に身を捧げる全ての人を讃えましょう。でも、拍手するだけで終わりにしないでください」と注文を付けられた。

 

*希望を持って、危機の先にある将来に備えよう

 最後に教皇は、希望を持って、危機の先にある将来に備えるように、と次のように講話を締めくくられた。

 「希望は危機を顧みません。大きな夢を描き、希望から​​生まれる正義と社会の愛の理想を追求するのに努めましょう。不正で不健全な過去を作り直そうとせず、​​互いの豊かさが小さな集団の持つ素晴らしさと豊かさ花開き、多く持っている人々が、少ししか持っていない人々に奉仕し、提供する世界となるように」

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年9月23日