Sr阿部のバンコク通信 ⑨危機が好機にーカトリックの学校教育

    カトリック学校が幼小中高大学とも、各地で頼もしく活躍していることも、仏教国タイで特筆したいことです。今から100余年も前に、フランスからガブリエル会、シャルトルパウロ会、ヴェテラン会、パリ外国宣教会などが来泰し、教育に貢献する修道者を育て、着実に福音の苗床を拡げていきました。

   先日、バンコク市内にあるカトリックの総合病院のパウロ書院で、カトリック信徒で日本語の堪能なタイの方に出会いました。彼は、名門、チュラロンコン大学の日本語教授。 都心部にあるチュラロンコン大学はラマ六世国王陛下が設立した大学です。ラマ六世はタイに教育制度を敷き、大学を父君のラマ五世に捧げ、チュラロンコン大学と命名しました。タイが海外に学校設立の協力を求めたその頃、フランスは革命後の大変な状況にあり、教育に貢献する各修道会は新天地に進出、タイの要請にも応じました。「フランスの教育修道会にとって、危機が好機になった」というのが、教授の説明でした。

    私が24年前、タイに派遣されたのは、タイ政府の宣教師数制限令があった頃です。宣教師は、宣教師ビザを社会福祉や教育ビザに切り替え、宣教師のいない県に分散を余儀なくされましたが、それによって、福音の種は国全体に撒かれるようになりました。これも、教会にとって、危機が好機に転じる出来事だったわけです。

  ところで、私はくだんの教授から「カトリック用語説明の講義をしてくれませんか」と頼まれ、「願ってもない宣教の機会」と引き受けました。大学での 私の講義は、学生たちの興味と好奇の目の輝きと集中力から察して、うまくいったようです。講義そのものは、別々のクラスに二回だけで、多くの学生たちのほんの一部に接しただけだったのですが、学生たちの学ぶ気力に未来を感じ、嬉しく思いました。

 (阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2017年5月1日 | カテゴリー :